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第120話:Zelost

 中国の思想家・列子(れっし)の教えを纏めた書物・『列子』には「杞憂(きゆう)」という話がある。


 ()の国に住むある人物が、天が落ちて来るのではないか、星が落ちて来るのではないか、地面が崩れ去るのではないかと憂えていたところ、その友人が「確かに空や地面は崩れるかもしれないし、崩れないかもしれない。しかし、そんなことを一々気にしていても仕方がないだろう」と宥めることで解決する話だ。


『「杞憂」を現実のものにするとはな。面白い』


 こんな時でも不敵に笑ってしまうのは、かつて世界の三分の一を滅ぼそうとした身であるからか。三つの頭を持つ黒い龍の姿で空を飛びながらアジ=ダハーカは評した。


 一つの亀裂から始まった(ひび)は無限に枝分かれを繰り返し、タイルが剥がれるかのように割れた空が破片となって落ちる。


「ワシの名前はゼロスト」


 さすがにダメージが大きかったらしい。震える脚で立ちながら白い老神は語る。


「トールにはゲルマン語で「雷」という意味があうように、テュールには古ノルド語で「神」という意味があるように、ワシらの名前にも意味があるのじゃよ。セレンにはギリシアの月の女神・セレナから名前が来ているように、テルルにはラテン語で「地球」という意味があるようにのう。……さて、このワシ・ゼロストにはどのような意味が込められているか分かるかのう?」


 空は崩れ、剥がれ、割れた先には宇宙とも夜とも違う常闇(とこやみ)が広がる。世界が壊れて常闇が剥き出しとなった空を見ながら言葉を続ける。


「ZeroとLost。全てを失うことで無になる。ラグナロクによる激戦が終わった後に炎の巨人スルトが全ての世界を焼き払って新たな世界を創り出すように、セレン・テルル・『救世主』が世界の破滅へと(とき)を進めた後に、人間たちから全てを奪い全てを消し去る神としてホロ族たちから畏怖されたのが、このワシじゃ」


 世界は終わりへと針を進める。

 滅亡までのカウントダウンを刻一刻と。


「さて、セレンとテルルよ。このワシを殺さん限りは世界の滅亡を止めることなどできぬぞ?お前たちを手塩に掛けて育ててきたワシと、壊れ行く穢れた世界。お主らはどちらを取るかの?」


 世界の崩壊と世界の安寧。

 上司の(めい)と仲間の(いのち)


 これらを天秤に架けて自分にとってどちらが大切か。

 その答えはもう決まっている。


「わたしは――」


 セレンはゼロストから差し出された手を握ると一つの答えを出す。


「ダンジョンを冒険したり動物園を経営したり、これからも絵理華(えりか)さんたちと一緒にいろいろなことがしたいです。だから――」


 見知った老人の手を強く握るが、その老人の身体が赤い光に包まれる。


「わたしやその仲間を脅威に(さら)すようなことなど、わたしにはできません!さようならゼロスト()()!!」

「師への恩を仇で返すとは、どういう了見だ貴様ああああぁぁぁあああああぁぁぁあああああぁぁぁああああーーーーーーーーっっっっっっっ!!!!!!!」


 セレン。

 その女神が持つのは破壊の力。


 赤い光に包まれたゼロストは苦悩に顔を歪めながら断末魔を上げると、光の粒へと姿を変えて天高くへと昇っていった。


「……いいのかよ?自分の肉親のようなものだったんだろ?それをこんなにあっさり殺しちまうなんて」


 自分の母親に殺されそうだった所を勇者に助けられた龍人の少女・トルーニが複雑な表情をしながら話し掛ける。


「いいんですよ。今のわたしには【テイム】よりも深い絆で結ばれた仲間がいますからね。こんなにも素敵な仲間がいるんだったら、口うるさい上司も、神様としての(ほま)れも、わたしにはもう必要ありません」

「感慨深く浸っているところに申し訳ありませんお姉さん」


 赤い粒子となって空へと昇っていったゼロストを目で追いながら、隣に立つテルルが崩壊した空を仰ぐ。


「やはり、ゼロスト様は世界の崩壊を止める気などなかったようですね。一行に止まる気配がありません」


 目の前からゼロストが消えたというのに世界の欠片は氷山のように崩れ、形を失っていく。


「……お願いできますか?テルル?」

「任せてくださいお姉さん」


 身体の内から神力を溢れさせながら、短い金髪を持つ少女は告げる。


「わたしは創造神ですよ?世界の(ほころ)びを直すことくらい造作もありません」

『いよいよ行くのか?』


 空で滞空しながら黒い龍は話し掛ける。


『ならば、ここにいるメンバーを全員背中に乗せて連れ出しても構わないだろうか?ここにいるモノたちは全員、世界の行く末を見届ける義務があると思っているのだが?』

「ええ。構いません」


 ふわり、と魔法の力を使わずに身体を宙に浮かばせる。


『皆さんの輪に加わってからわたしだけ見せ場がありませんからね。目の前で観ていてください。わたしの活躍を』



☆★☆★☆



「こんなに上空まで来たのなんて、グリフォンの背中に乗せられた時以来だねっ!そして寒いいっ!!」


 高度が上がれば自ずと寒くなる。各々が炎属性の魔法や魔導具などで暖を取りながらアジ=ダハーカの背中で待機する。


「それでは始めますよ。……まあ、そんなに気張ることでもないですが」


 剥がれ落ちた部分にそっと手を重ねる。


「え゛っ?!触れるのこれえっ?!!ルナティちゃんもこの機に世界の裏側を触ってみたいんですが!!」

「子供じゃないんだからはしたないことは止めなさい駄兎(だうさぎ)!!背中から落ちると面倒だから暴れるんじゃないわよ!!」

「じゃあさ、空の欠片を袋の中に詰め込んでいーい?「これ本物の空なんですよ!!」って言って商店で売れば、絶対高値が付くよね?」

「誰も信じないと思うのでありますが?!!」

「証明する方法がないよね……」

「……始めていいでしょうか?」


 緊張感のない連中を冷ややかな目で一蹴しながら、テルルは抜け落ちた世界へと力を注ぎ込む。


 直後、開いた傷口を塞ぐかのように剥き出しとなった闇が消え、元あった空の色が出現する。


「何か地味……。もっとこう、はーっ!!みたいな感じでできないの?!」

「大人しくしてないと落とすわよ……?」

「ひええっ!!」

『あまり背中の上で暴れないで欲しいものだが』


 左側の首を向けながら溜息を吐くアジ=ダハーカ。


「はーっ!!ってなるから、もう少し見ていてください」


 こちらも溜息を吐きながらカミサマパワーを強くしていくと、空の至る場所にあった黒い箇所に元の景色が浮かび上がり、欠けた景色が元の色合いを取り戻していく。


「凄い……!本当に世界が元通りになっていく…………!!」


 この場にいる誰もが、世界が崩壊した様を見たことがなければ、世界が蘇っていく様も見たことがない。絵理華たちはどう形容していいか分からないまま、ただただ世界の復活を見守るだけだった。

「ノベプラ」にてブックマークが1件、「なろう」にていいねが2件、ブックマークが1件、コメントが1件増えました!いいね&ブックマーク&コメントしてくださった方ありがとうございます!!



「ノベプラ」にてブックマークが1件、「なろう」にていいねが2件、ブックマークが1件、コメントが1件増えました!いいね&ブックマーク&コメントしてくださった方ありがとうございます!!



 藤井はTwitterをやっておりません!


 一番大きな理由としては、SNSなどを使った宣伝をせずに、どれくらいpv数やブックマークを増やせるか、自分の実力を試してみたかったからです。


 SNSなどを使って仲間を増やせば、お互いに作品を読み合ったり評価したりもできるかもしれませんが、それよりも自分で勝ち取ったpv数やブックマーク数の方が、よっぽど価値があると思っています。


 ……まあ本音を言えば、何を呟けばいいか分かんないだけなんですけどねっ!!


 とにもかくにも、本作品をここまで進められたのも、全ては陰ながら支えてくださる読者様のおかげでございます!!


 今回を除いてあと2話!どうかあともう少しだけ藤井にお付き合い願いたいです!!



 ではまた!これからもよろしくお願いします!!

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