第118話:ゼロストVS『紅蓮と白銀の騎士』【2】
「あなたは……?」
「あー気にすんな気にすんな。オレ様は人間たちの味方だからさ」
マントを揺らしながら背中を向けて男が立つ。
「……まさかこんな所にトールがいるとはな」
「それはこっちのセリフだよ。ラウドレーストで楽しくお仕事していたっつーのに、神を名乗る何処の誰かも知らんやつがロマリアで暴れ出したと聞いて、ここまで駆けつけて来たのさ。あとお前、一つ覚えておけ」
「はいはい離れてねお嬢さんたちー。ここから先は危ないからねー」
ロキが引くように命じたのでそれに応じてじりじりと後ろに下がると、
「オレ様はトール様だクソ野郎!!誰も知らねえようなマイナー宗教如きが、北欧神話の軍神トール様を馴れ馴れしく呼ぶんじゃねえっ!!」
ッッッンンンンンドンンンンンンンンンッッッッ!!!!!!
電光石火の勢いで突っ込んだトールがゼロストに拳を捻じ込む。
「ぐうっ!!」
空気を焼くバチバチとした雷に、そこから遅れて聞こえてくる轟音。
大きな雷を落としたような一撃を防御体勢で受け止めて、ゼロストの顔が初めて焦燥の色に歪む。
「彼は何者なんだ?」
「軍神トール。北欧神話に登場する神々の中で、最も強くて最も気性が荒いって言われている神様さ。ま、実際には仲間思いで、すぐ突っ込んで行っちゃうだけなんだけど。そして俺はロキ。君たちを助けに来たんだよ」
神であるトールを一緒に行動しているのであれば、気さくに話し掛けてくる道化のような男も恐らく神なのだろう。
神対神。
様々なモンスターや神獣・魔王軍の軍勢と戦ってきた『紅蓮と白銀の騎士』だったが、遂には人間には上がることも許されないような戦いにまで踏み込んでしまったということか。
「どうして私たちのことを助けてくれたんだ……?」
自分たちの実力ではどうにもならなかったため、強力な味方が加わるのは渡りに舟なのだが、ゼロストと互角以上の実力を持ったモノが無条件に力を貸してくれるというのはどうしても違和感がある。その意味を込めて問うてみると、
「んー?君たちがエリカくんの仲間だから、とか、いろいろな理由があるけどさ、やっぱり一番はあれかな?」
少し考えるような仕草をしてから主戦場の激戦を指す。
「今は仲良しだけど俺たちにも互いを恨み合って殺し合っていた過去があってね。そんな死闘を止めてくれたのがエリカくんだったのさ。だから俺たちもエリカくんがやったように、あそこで傍若無人に暴れているやつを止めようと思ったんだ。エリカくんにしてもらった事を、今度は俺たちが誰かに返す番だね」
少しキザっぽく言った後に視線をトールへと移したため、テリーナもそちらへと目線を向ける。
「おらどうした?!雑魚ども相手に振り撒いていた威勢は何処に消えちまったんだ?それともただの虚勢だったかあ?!!」
あんなに苦戦していたのに。
あんなに劣勢だったのに。
拳を突き刺すたびに雷鳴の音が轟き、半透明のバリアを展開するゼロストを防戦一方の試合運びへと強引に持ち込んでいく。
「ぐううっ!!」
ゼロストが神力を使って張っているバリアは、あくまで地上に住まうモノたちの攻撃を防げる程度の強度。VS神用の耐久力は用意されておらず、攻撃を防げば防ぐだけ無駄に力を浪費していく。
ゼロスト教と北欧神話。
ゼロスト教は2,000年以上前に一種族の間でのみ信仰された宗教なのに対し、北欧神話は1,200年以上前に誕生し、様々な種族に信仰され、多くの文献・遺物を遺す宗教だ。
信仰の強さや神格をベースとして強弱が決まるカミサマパワーの威力がどちらが上かなど、議論をする前から決まっている。
「やらねばならんのだ……」
神のみが持つ特別な力により、全ての魔法を魔法よりも高い火力で詠唱せずに使えるのだから、追い込まれたのであれば『ワープ』すればいい。
数十m離れた場所まで瞬間移動すると、
「自分勝手にワシらを生み出して自分勝手に捨てた人間どもに、復讐をせねばならんのだ!邪魔をするなあああぁぁぁあああああぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああぁぁああああああっっっっっっっっっ!!!!!!!!」
背後に二つの太陽と光り輝く剣が出現する。
「『エレクトロキュート=ジュエル』・『スタブドサンシャイン』、それに『コンビクションソード』じゃ!人間たちにとって最強クラスと言われるような魔法二つと、アラキラを一撃で屠った『コンビクションソード』を同時に相手にして、お主は耐えられるかのう?」
「……そいつは愚問だな。爺さん」
力が強化される鉄製の手袋・ヤールングレイプルの調子を確かめると、腰に佩いた柄の短い槌を握る。
「てめえが撃つ神力にオレ様が耐えるんじゃなくて、オレ様の力にてめえの神力が耐えられるかだろうが!!」
「ほざけガキが!!」
始めに動いたのは『スタブドサンシャイン』。禍々しい闇が太陽フレアのように弾けたかと思うと、その余波は殺戮の棘となって飛来し、その隙間を縫って進むかのように光の剣が殺到する。光と闇を均等に混ぜた『モノクローム=アンドゥレーション』とは似て非なる光と闇の共演だ。
が、
「ふんっ!!」
トールはミョルニルを一撃広場に叩きつけただけだった。
「おっと危ない」
ロキの力で一瞬で別の場所まで移動したかと思うと、直後に空から落ちた一本の雷により、先ほどまでテリーナたちがいた高台の広場が瓦解して跡形もなく消え去る。
「恐ろしい力ですね……」
「あれがトールくんの切り札・ミョルニルの真の力だよ。……君たちに言っても何が凄いのかは分かんないと思うけどね」
瓦礫が崩れて砂埃が舞う広場を見ながらサラが呟く。旅芸人として各地を転々としていたために広い知見を持っている自身があったが、ここまで規格外の力を見せられたのは初めてだった。
「馬鹿なっ!!一撃で全て破壊しただと?!!」
「あん?オレ様に破壊できねぇのなんてヨルムンガルドの頭くらいしかねえっつーの。さあ、この雷の化身であるトール様に、その電気の力をぶつけてみろよっ!!」
地球をぐるりと巻いてしまうほどの巨体を持った蛇でさえ三回殴るだけで倒してしまうのだ。これくらいの攻撃など微風に等しい。柄の短い槌を持ったまま肩を軽く回して挑発する。
「言われなくてもやってやるわい!!雷の化身が電気で死ぬとなると、実に滑稽ではないか!!」
頭上に構えた緑色の太陽を一瞥する。
風属性の魔法でも最強クラスの『エレクトロキュート=ジュエル』よりも高い火力を込めた必殺の一撃だ。空から着弾すれば大陸最大の都市であるロマリアさえも地上から消え、セトレイ王国の中心には更地が出現するだろう。
「自惚れたことを地獄で後悔するがいいわ!!」
バチバチと表面を走る電撃が空気を焼き、隕石かと見紛うほどに成長した光の弾の周囲には暴風が吹き荒れる。周囲を巻き込む力だけでも農村部の小さな村であれば滅亡させてしまえるほどの影響力だ。
「さあ死ねい!!」
天空に掲げた杖をゼロストがトールへと向けると、数多の生命を刈り取るべく死の光がカウントダウンを始める。
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最近、日中眠いのに夜は全く眠くない状態になりました。
毎日24時に寝て6時30分に太陽の光を浴びて目覚め、一日30~1時間お散歩して太陽光を浴びているのに昼夜逆転しているだと?!
原因をあれこれ考えてみたのですが、その時辿り付いたのが、大学生の頃くらいからやっているモーニングルーティーン・「カーテンを浴びて朝日を浴びる」でした。
元々藤井が夜行性人間なのか、人間そのものがそういう構造になっているのかは分かりませんが、何故か藤井は朝にカーテンを開けて太陽光を浴びると眠くなってしまい、そのままぐっすり寝てしまうのです。
つまり、藤井の脳は太陽光を「寝ている時に突然射し込む眩しい光」と感知しており、「太陽光が射す=眠い時間=夜」だと思っているのでは?
そう仮説を立てて朝にカーテンを開けるのを止めて三日~四日経つのですが、最近は日中も眠いし夜も眠いです。日中はさておき夜に眠いと感じるのであれば、これは昼夜逆転を戻すのに成功したと言ってもいいでしょう!!
インターネットなどを調べてみると、「朝に太陽光を浴びたり、日中にお散歩したりすると、太陽光を浴びて体内時計がリセットできるから、夜にぐっすり眠れるようになるよ」的なことを書いていたりしますが、藤井の場合は「朝に太陽光を浴びて目覚めない」が正解でした。人には人のやり方があるんですね!!
ではまた!これからもよろしくお願いします!!