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第114話:絵理華VS『ライザーズ』【2】

「ほ、本気でやるのでありますか!?メイア殿!??」

「援護が来るまで待つか、ここでエリカを討つか。どちらか一つしか選べないのならエリカを討つしかないわ。それに、」


 LS(レジェンドエス)ランクの【マジックマスター】を持つモノとなると、メイアが知る限りではエリカと『紅蓮の魔女』しかいないが、LSランクの冒険者であればさほど少なくはない。

 要は、LSランクの冒険者一人対LSランクの冒険者三人のパーティの戦いだと思えばいいのだ。考え方を逆転させるだけで随分と楽になる。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()(わたくし)に任せてくれないかしら?」

「……分かったであります。くれぐれも無理は禁物でありますよ?」


 ハロイラに引くように手で示して踏み込むと、珍しいスキルを持った二人の冒険者が睨み合う。


「【アブゾープション】で何処まで戦えるかな?数多もの生命を終わらせた死の風よ。この者に終焉を与えよ!スノウストーム!」

「遅いっ!!」


 詠唱が終わって吹雪が正面に吹き荒れるのと同時にメイアは足捌きでこれを躱す。

 そして、


「はあっ!!」


 生身の人間にこの力を使うのは心苦しいが、鋭い突きを一発捻じ込む。


「ぐっ!!馬鹿なっ!!?」


 絵理華(えりか)の敏捷ステータスはLSランクだが、メイアの敏捷ステータスもLSランク。さらにそこから【アブゾープション】の身体能力強化が乗れば、そのパワーと速度は互角以上となる。焦りに歪んだ絵理華の顔すれすれを刃が通り、顔には裂傷とともに赤い花が咲く。


「どうかしら?今の一撃?貴女こそ本気で来ないと危ないわよ?」

「そっちこそ忘れてない?」


 恐れも知らずにカウンターで拳を突き出してきたので、これを刺突剣(レイピア)の腹で受け止める。


「魔法で戦えないなら体術で戦えばいいんだよ!」


 絵理華のステータスは全てがLSランクだ。

 その敏捷力はメイアに匹敵し、その魔力は『紅蓮の魔女』の異名を持つクリムに匹敵し、その物理攻撃力は一線級で戦うLSランクの武闘家に匹敵し、そのHPと防御力はLSランクのタンクに匹敵する。


 そのため、肉弾戦で戦えばLSランクの武闘家と同レベルの力を持ち、その耐久は前線に立つタンク並みという、恐ろしいDD(ダメージディーラー)へと化けるのだ。


「ふんっ。ローゼンガウラの邸宅で幼少期から叩き込まれた武術を舐めないでくださる?むしろ得意でしてよ!!お相手して差し上げますわ!!」


 相手は素人。

 一方でこちらは貴族の間で代々受け継がれてきた拳法を心得ている上級者。


 出鱈目(でたらめ)に放たれた拳や足捌きをダンスでもするように躱し、あるいは去なし、あるいは剣を軌道に挟み込んで受け止める。


「くそっ!」


 ヤケクソ気味に放たれた右手の拳を左手で受け止める。


「……ねえエリカ。もう止めましょう?(わたくし)が知っている貴女はこんなことをするような人ではなくってよ?」

「何を言っているの?私は『救世主』!この世界の全てを破壊することで全ての生命に『救い』を与えるんだよっ!!」


 突き出された右手が開かれ、掌には光と闇の二つの力が宿る。


「メイア殿っ!離れるであります!!このままでは危険でありますよっ!!」

「いいえ!待っていたのよこの時をっ!!」


 メイアは右手に持っていた刺突剣(レイピア)の切っ先を絵理華の右腕に突き立てると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 冒険者たちの間で禁忌とされている行為がある。

 それは、装飾品の一部である魔証石を重点的に狙うことだ。


 魔証石はスキルを持った冒険者本人と石の一部が振れている、もしくは一定の狭い範囲にないと機能せず、()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()


 洗脳を解く方法が分からないのであれば、魔証石を引き剝がして無力化し、こちらが抑え込める状態にするしかない。


「なっ!何をするっ!!?」


【アブゾープション】で底上げされた力は凄まじく、なかなかに抜け出すことができない。

 ならば、端正な顔立ちをした目の前の女性を消し去るのが早いか。


「相反する二つの力を以ってゼロの安寧を与えよ!モノクローム=アンドゥレーション!」

「っ!!」


 空気すらも飲み込んでゼロにしてしまう不気味な波動が絵理華の左手で渦を巻き、超至近距離で放たれる。

 さすがにこれほどの距離で撃たれてしまっては避けるのも間に合わないし、相殺するための準備にも入れない。


 待つのは死。


 波動に巻き込まれて断末魔も許されないまま消えてしまう。

 絵理華の右手から射出された必殺の魔法は一直線に伸びてメイアの顔を貫き、着弾時に発生した正負の渦に巻き込まれて身体が引き裂かれる。


 ――ことはなく、触れる目の前で急カーブをして何かに吸い寄せられるかのように後方へと捻じれて飛んでいく。


 その『何か』とは――。


「……早、く、する、で、あり、ま、す、メイ、ア殿っ!!身体、が、引、き、裂か、れ、る、で、ありますう!!!」


 ピンクの鎧に身を包んだ小柄な騎士。

【妖魔の目配せ】によって技を引き寄せ、【朽ち()せない騎士道】によってペンデュラムが約120回往復するまでの時間(約5分)、例え肉体を微粒子レベルで分解して消滅させる機械に投げ込まれても死ななくなる。


「おわえ!っと!!どうすればいいのこれ?!ロイランの周りがぐにゃぐにゃ歪んでいるんですけど?!!」

「触、れ、たら、巻き、込、ま、れる、の、で、離れる、で、あります!後、は、闇属性、の、魔法、で、相殺して、くれ、れ、ばっ!!」


 制限時間は約5分。

 それまでの間に、何としてでも絵理華の右腕から魔証石の嵌まったブレスレットを引き剥がさなければならない。


「ぐ、う、ううっ!」


 激しい戦いの最中でも壊れたり外れたりしないようにするため、魔証石の嵌まったブレスレットなどはLSランクの【鍛冶屋】が錬成した装備に相当するような堅牢さを持つため、そう簡単に引き千切ることはできない。


 そう、普通ならば。


「でやあぁあっ!!!」


 この場にいるのはSSランクの物理攻撃力を【アブゾープション】で強化したメイアだ。刺突剣で引っ掛けたブレスレットを力任せに思いっきり引っ張ると、千切れたブレスレットが空中を舞い飛ぶ。


「やった!!」


 見守るタイガが拳を握り締めると、


「は、はあ……っ!!死ぬかと思ったでありますっ!!リッチでもないのに『モノクローム=アンドゥレーション』を受けられるのなんて、大陸では私くらいなもんでありますよっ!!」


 肩で重い息を吐きながらハロイラが膝から崩れ落ちる。魔証石が身体から離れたことで【マジックマスター】が使えなくなり、魔法が解除されたようだ。


「んっ!でも、もう一度嵌めればっ!!」

「させると思う?」


 地面に転がったブレスレットを脚で抑えながらメイアが不気味に笑む。


「これで貴女は能力を持たないただの女の子。私に勝つ手はなくってよ?」

「無事かお前たち!!」


 聞き慣れた声が聞こえたかと思うと、


「絵理華さんっ!!」


 カザチャッケ王国での戦いは無事に終わったらしい。『煌々(こうこう)たる裁きの剣』と正気に戻ったセレンがこちらに駆けてくる。

「なろう」にて藤井の見間違いでなければ、いいねが21件、ブックマークが1件増えました!いいね&ブックマークしてくださった方ありがとうございます!!怒涛のいいねラッシュに目を疑っております!!



 先日お散歩をしていた時の話なのですが、石畳の隙間から雑草が生えた路にて、少しだけ青い雑草を発見しました。


「お、周りの雑草は枯れてすっかり茶色くなったのに、こいつだけ元気だな」と思って、よーく見てみたら、胴体が千切れて上半身だけになったカマキリの死体でした。ひええっ!!



 ではまた!これからもよろしくお願いします!!

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