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第112話:創造神テルルVS三つの神話の神々【完】

「……テルル、とか言ったか?……そろそろ吾輩たちに降参してはどうだ?」


 息一つ乱すことなく地面に槍の柄を打ち付ける。


 世界の三分の一を滅ぼす力を持つアジアの悪龍アジ=ダハーカ。

 戦棍一本でその悪龍を殺せる実力を持つペルシアの大英雄ガルシャースフ。

 アース神族と人間界を繋ぐ橋の番人に任命された光の神ヘイムダル。

 主神オーディンの実の息子であり、ラグナロクでフェンリルを殺した後に新世界の後継者となるはずだった神ヴィーザル。

 オーディンにその座を追われたもののゲルマン民族の間では戦神として崇められていた過去があるテュール。


 さらには、ある宗教において世界の根幹となる陸・海・空の三つを支えているとされるベヒモス・レヴィアタン・ジズ。


 FF(フレンドリーファイア)の恐れがあるため互いが互いを気遣う展開となったが、それでも正真正銘の神が三人もいる状態での戦いだ。あらゆるものを創り出せる創造神でも捌ける数に限界がある。


「キカンジュウとかいうやつでしたかな?たくさん木の実を吐き出して面白いですな!食えないのが残念ですがな」


 左手で物珍しそうに空薬莢を眺めながら感嘆の意を述べる。


「どうするんだい?さすがにこの数を相手にするのは大変だと思うけど?」


 一向に勝負は動かないのにジリ貧になっていく。

 肩で息をしながら創造神の力で剣を生み出すと地面に突き立てる。


「勝たなければならないんです……」


 はっきり言って勝ち目はない。

 仲間だからという理由で手加減されてはいるが、彼らが本気を出されたら一瞬で殺されるだろう。


 突き立てた剣で身体を支えながら叫ぶ。


「わたしはここで勝たなければならないんです!!ここで功績を上げて、テルルはセレンよりも上であることを証明するんですよ!!」


 元素記号52番・テルル。

「地球」を意味するラテン語に因んで命名された元素で、元素周期表の配列では後から発見されたセレンの真下に位置する元素である。


「そのために負けるわけにはいかないんです!ここで勝ってゼロスト様に認めてもらうんですよ!!!」

「ぶっははははははは!!!」


 目の前に立つテュールが目尻に涙を浮かべながら失笑した。


「そっ!それではヴィーザル殿と同じではないかっ!!こんな所にヴィーザル殿がもう一人いますぞっ!!」

「……笑い過ぎだテュール」


 少し恥ずかしそうにしながら(ヘルム)の被った顔を向ける。


「……お前はゼロストに認められたくて動いているのか?」

「ええそうです。元からゼロスト様と示し合わせて、こうなることは決まっていましたからね。だからこの場で存分に力を発揮して示してやるんです!わたしの方が上だと!!」

「……何でセレンの上でなければならないんだ?」

「へ……?」


 全く予想していなかった質問だったらしい。沈黙が流れる。


「そりゃあ、ゼロスト様に認めてもらうためですよ!あなたたち人間だってそうですよね?!誰かに認めてもらうために努力して、誰かに認めてもらうために頑張るんですよね?!」

「ほら言ってやれですぞ!先輩!!」

「……本当に昔の吾輩を見ているようだ」


 前へと数歩踏み出す。


「……吾輩は父上(オーディン)の後継者として相応しい存在であるため、そして武勲を上げるために邁進してきた」


 ラグナロクが終了した後に生き残るのは、オーディンの息子であるヴィーザル・光の神バルドルと盲目の神ヘズ(一度死ぬが死者の国から復活)、異母兄弟の司法の神ヴァーリ、トールの息子であるモージとマグニ、逸話が少なくて素性が判然としない神ヘーニルの七名だと言われている。


「……パルドルのような誇れる美貌があるわけでなければ、生まれて一夜にして成人となったヴァーリのような神力もない。……巨人の下敷ききになったトールを助けられるほどの怪力を持つマグニのような武勲もない。……武勲も逸話もない吾輩が輝くためには父上を殺したフェンリルを討つ他ないと。……だが違ったのだ。……本当に大切なものはもっと身近にあったのだ」


 トールは言わずと知れた軍神だし、ロキは変身能力を持つモンスター、ヘイムダルは明るさに関係なく100マイル(約160km)までの範囲であれば見通せる視力と草が伸びる音でも拾えるほどの聴力を持つし、テュールはオーディンに比肩する知名度と伝説を持つ軍神だ。


 それに比べてヴィーザルは、「オーディンの息子」・「フェンリルを斃してラグナロクを生き延びた」の二つのエピソードくらいしかなく、フェンリルを殺した方法も「剣で貫いた」と「鉄の靴で踏み締めて顎を押し上げて殺した」などど伝承によって表記のずれが存在し、持っている武器すらも曖昧だ。


 それでも。


「……例え武勲などなくとも吾輩のことを仲間と慕ってくれる、かけがいのない存在こそが本当に大切なのだと。……そのことに気づいたのだ」


 思えばラグナロクの時、アジ=ダハーカに完敗して無理やり運び込まれたのだったか。

 しかしあの時、完膚なきまでに叩きのめされなかったら、今の仲間たちとは出逢えなかっただろう。


 武勲などなくても、これといった伝説や伝承などなくても、一緒に動物園と平和を作り上げる仲間として信じてくれる仲間たちと。


「……汝とて同じだ。……誰かよりも上でなくてもよいのだ。……今度は吾輩がそのことに気づかせてやる番かも知れぬな」

「…………もう頑張らなくてもいいんですか?」


 顔を俯かせて肩を震わせる。


「わたしはゼロスト様に認められたくて今まで頑張ってきました。だから、ゼロスト様からカミサマパワーを戻された時、これが最後のチャンスだと思ったんです。自分の実力を誇示するならば絶好のチャンスだと。だけど、もう頑張らなくってもいいってことですか……?」

「……ああ」


 その震えた肩の上にそっと手を添える。


「……ここにはそんなことで嫌味を言うような度量の狭いやつなどいない。……約一名を除いてな。……だから安心するがいい」

「誰だいその度量の狭いやつっていうのは。そんなやつは僕が追い払ってやるから安心したまえ!」


 ……その度量の狭い嫌味ったらしいやつが自分のことだとヘイムダルは気づいていないようだ。

 氷に亀裂が入ったかのような音が空気中からパキパキと鳴ると、無数の天使の羽根が空を舞う。


「おや?何だか雰囲気が変わったようですな?これでこの場は一安心と言ったところですかな?」


 気前よくテュールが笑う。

「なろう」にていいねが1件増えました!いいねしてくださった方ありがとうございます!!


 そんで、ブックマークが2件ほど減りましたっ!今回を含めてあと10話くらいで終わるので、どうか最後までお付き合いをっ!!



 さて、本稿も遂に3万pvを突破致しましたっ!!(「なろう」のみの合計pv数)これも全て読者の皆様が温かく見守ってくれたおかげでございます。感謝感謝!!


 なんとこの数字、藤井の自信作「ひんにゅーほうにゅー~~性癖が異能力になる世界~~」のpv数の10倍となっております。そう考えると凄まじい数字ですね!!


 最近は「電撃大賞」に向けて、その「ひんにゅーほうにゅー~~性癖が異能力になる世界~~」の手直しも少ししているのですが、一年以上前に手掛けた作品というのもあって、読み直してみると、少しずつではありますが文章が上達していて、少し嬉しい気分になります。


 少し古い作品なので文章は稚拙ですが、世界観から伏線の回収まで結構上手に書けた作品なので、気になるお方は是非読んでみてくださいね!文字通り性癖を使った異能力をテーマとした、異能力バトルのローファンタジー作品ですよ!!



 ではまた!これからもよろしくお願いします!!

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