第111話:創造神テルルVS三つの神話の神々【1】
「どうする嬢ちゃん?あんたが一番ヤバいみたいだぜ?」
テルルが覚醒したのは『アルミラージの集会所』だ。近くには動物園が併設されており、そこにはアジ=ダハーカを筆頭としてベヒモス・レヴィアタン・ジズと言った神話級のモンスターたちが名を連ねる。
騒ぎを聞きつけた途端、それらのモンスターがぞろぞろぞろぞろと潰れた宿の周辺へと集合し、敵と定められた一人の女神を見据える。
「……おかしいですね。【テイム】が解除されている以上、あなたたちは山城さんとその仲間を防衛するような動きはしないはずなのですが?」
「無論。テュールが毎日餌を与えているからですぞ。彼らは純粋な使い魔ではなく、エリカ殿の仲間ですからな」
「的を射るようで射れてないよ?テュール君?」
白装束をキザっぽく整えながらヘイムダルが代わりを務める。
「僕たちは憎んだ相手を殺し合うことしか考えていなかったけど、エリカさんが教えてくれたのさ。争いというものは実に無益で、憎しみしか生み出さないとね」
「ならば試してみましょうか」
粉々に砕けた木の板を一本掴んで地面に突き立てて、その表面をそっと触ると、木屑が鉄の塊へと変化した。
「あなたたちも同じ目に合わせてあげます」
見せびらかすように鉄塊に触れると、今度は形のない水へと変化して地面に染みを作る。
創造神テルル。
その『創造神』の名の通り、触れた物体からあらゆる物体を生成できる力を持つ。
植物が馬車に。
石が針に。
人間が炎に。
全く関係を持たないものを全く関係のない姿へと変化させ、無から全てを作り上げる女神だ。
『ふんっ!よく分からんが触れなければいいだけの話だろうが!!』
相手は正真正銘の女神だ。これくらいのことをやっても死なないだろう。
手始めに灼熱のブレスを噴射し、少女の身体全体を包み込むが、直撃したはずの炎は少女が軽く手を添えられただけで風へと変換され、強風がアジ=ダハーカたちがいる方向へと吹き荒れる。
「こんなのは序の口。次はもっと殺意を形にしてあげましょう」
触れたら火力に変換される。
触れなくても空気に触れて新たな武器を生成する。
進むことも退くこともできないまま女神と対峙する。
「……おや?誰も来ないのですか?ならばわたしの方から行きましょうか?」
空中から果実を捥ぎ取るかのように手を動かすと、その白くて小さな手の中に緑色の木の実のような形状の小さな球体が出現する。
「皆さんはこれが何か知ってますか?この世界に住んでいる住民だったら、正体が微塵も分からないまま死ぬでしょうね」
それが木の実だったら何と優しいことか。
上端部分を口で咥えてピンを抜き取る。
この世界での生活が永いガルシャとアジ=ダハーカには分からなかったが、日が浅いヘイムダルには分かった。
「手榴弾……?」
暗殺・殺傷・目潰し・反乱・政治家の自殺。
その手軽さから様々な用途に使われ、多くの命を摘み取ってきた小さな投擲武器・手榴弾だ。
手榴弾の原型そのものは16世紀になって誕生したが、テルルが持っているものはそれよりも遥かに高度なもので、500年以上の改良の末に辿り着いた最高傑作・最高性能の代物である。
「っ!距離を取れ!!爆発するぞ!!」
手榴弾単体の威力はそれほど高くはないのだが、爆発と共に中に入っている鉄片や小石を撒き散らす破片手榴弾だったら厄介だ。『手榴弾』そのものを知らないモノたちに言い聞かせている暇はないので一旦引かせる。
直後に爆発音。
幸いにも破片手榴弾タイプではなかったようで、落下地点が黒く焦げる。
「安心している暇はありませんよ?こちらは無尽蔵に武器を生成できるんですからね」
声の主を確認すると、抜いたピンから機関銃を生成。空気から弾丸を生成して充填する。
「剣とか弓みたいな、もっとファンタジーな方法で攻撃するかと思いました?そんな面倒なことするわけないじゃないですか?いくらでも好きな物が作れるんだから機銃掃射で一掃ですよ」
純白のトーガにゴツい機関銃。
古代と現代の入り混じった不釣り合いな姿のまま少女は構える。
「どうです?人間が人間を殺すために最も最適化させた形ですよ?素晴らしいとは思いませんか?」
直後に弾雨が殺到する。
「おいおいどうすりゃいいんだよこれ?!全く近づけねぇぞ?!!」
こんな時、北欧神話のエース・トールがいれば戦況が大きく変わるかもしれないが、生憎ラウドレーストの店で働いているためいない。この場は神々と神獣で乗り切るしかないのだが、
『我の出番のようだな』
他のメンバーを弾雨から遮るように屹立する。
「っ!おいトカゲ野郎!!そんなことをしたらテメェが死んじまうぞ?!」
『死ぬ?誰に向かって言っているのだ?』
こうして矢面で会話をしている最中も弾丸が連続でヒットし、血液の代わりに黒い爬虫類が飛び散って霧散する。
『絶対的な『悪』の化身である我が死ぬわけがないだろう?』
が、風穴が開いた場所は即座に元に戻り、痛々しく爬虫類が飛び散っているだけだった。
「……何故死なないんですか?あなたは生き物ではないということですか?」
『我は悪。宗教上、善と切っても切り外せない存在でな。この世界に善が存在する限り、悪である我は消えぬ!!』
「なるほど。普通の人間にしか効かないようなものはダメということですか。ならばこうしましょう」
手に持っていた機関銃が砂粒へと形を変えてテルルの手中から崩れ落ちると、その左手に禍々しく輝く剣が顕現する。
コンビクションソード。
【ウロボロス】を持つアラキラさえも一撃で屠った神の剣だ。
「アジ=ダハーカさん。あなたは悪い精霊に唆されて父親を暗殺して王座を獲得し、毎日二人の若者の脳味噌を食べながら1,000年間生きていたそうですねえ?あなたは今までにどれくらいの生き物を殺しましたか?」
生き物としてこの世界に生を受けた以上、他の生き物を殺さずに生活することなど絶対にできない。
そんな誰しもが抱えるカルマに対して威力を発揮し、奪った命の数が多ければ多いほどその威力は増す。
『ぐうっ……』
単純計算して封印されるまでの1,000年程度の間だけでも、人間だけで73万人の命を奪っているのだ。その剣の威力が低いわけがなく、焦燥とも言える唸り声を上げる龍を前にして光の剣は煌々と輝く。
「……やっと出番か」
「茶番も見飽きた所ですぞ?」
悪龍の脇を二人の男が通り過ぎる。
「……あの『きかんじゅう』とやらが何かは分からぬが、飛び道具が消えたのであればこちらのもの。……オーディン様の後継者として相応しい戦いを見せてやろう」
「テュールは軍神ですからな。その名に恥じない戦いをしなければなりませんな」
その名はヴィーザルとテュール。
古代ローマの世界から持ってきたかのような古めかしい槍を握った鎧の男と、無骨なロングソードを持った隻腕の男がドラゴンの前に躍り出る。
「……あの剣がどのような効果があるか分からない。……だけど、神である吾輩たちに対して効果が薄いのは間違いないだろう。……ここは吾輩たちに任せろ」
「得意な相手に得意な武器で戦う。これこそが戦闘の基本ですからな!」
「……厄介ですね」
さすがに女神様と言えども腕が複数本あるわけではないため、剣と機関銃を同時に扱うことはできないようだ。
化学兵器とドラゴン。
剣と古代の武器。
忘れ去られた宗教の女神と三つの異なる神話の神々。
様々な要素が入り乱れたラグナロクの第二戦は、全員で築き上げてきた大切な場所を主戦場に開幕した。
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最近アニメ「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」を観始めたのですが、あれ?「あの花」のOPと言えば「サークルゲーム」じゃなかったけ?と思って調べてみたら、2011年春クール(4~6月)の本放送期間中のOPが「青い栞」、そこから約二年間の映画宣伝用の再放送期間に流された時のOPが「サークルゲーム」だったんですね!数年前の再放送を観ていたらOPが「青い栞」だったので疑問に思っていましたが合点がいきました!!
さて「あの花」について少し。(重要部分のネタバレはないのでご安心を!!)
話の内容としては、幼少期の夏に六人の少年少女が体験した『ある事件』をきっかけとして、高校生に成長した少年少女が再結集し、ストーリーが進んでいくにつれて『ある事件』の真相や謎が明らかになっていったり、各キャラクターの心境や思いが複雑に交差していくお話です。
藤井が初めてこの作品に触れたのは恐らく2013年頃で、その時は高校生だったのですが、「感動作とか謳っている割には全然感動しないじゃないか?何これ?」みたいな感じで、ぶっちゃけ微塵もハマりませんでした。
しかし10年が経過した2023年。
大人になった藤井が改めてこの作品に触れてみましたが、もの凄く感動してもの凄く泣けました!!
大人になって価値観が変わったというか、涙もろくなったというか。どう表現していいかは分かりませんが、子供の時に観た「つまらない」と思った作品を大人になってから観てみると、こんなにも作品の見方や感じ方が変わるものかと、いたく感動しました。
皆さんにもありませんか?青春時代にリアルタイムで触れた名作がっ!!
サブスクで観てもいいですし、レンタルDVDを借りてもいいですし、久しぶりに触れてみるといいかもしれませんね!!
……何処かでやらないかな?「イカ娘(2期)」、「ミルキィホームズ」、「キルラキル」、「戦国コレクション」、「ガールフレンド(仮)」、「リトルバスターズ!」、「ズヴィズダー」の再放送。
ではまた!これからもよろしくお願いします!!