6話目
「……」
「……」
静かな時間が続く。
(レンが居るときはレンが話しかけてきてたから…)
ようするに…気まずいということである。
「えっと…」
コウは口ごもっていた。
(ここに、あまり人来なかったから…)
ようするに…
とても気まずいということである。
「アイちゃんは、どこから来たの?」
コウが尋ねると、アイはチラリとコウを見て、それから「水の中」と短く返した。
「水の中…?」
コウが疑問の声を出すと、アイは続けた。
「…暗い暗い、水の中から来た。
大きな魚の怪物も居るような場所。」
コウは驚いたような反応をすると
「だ、大丈夫?怪我とか…」と心配しだした。
「…大丈夫。レンが守ってくれたから。」
「守る…?」
コウは不思議そうに繰り返した。
「うん、守ってくれた」アイは平然と返す。
コウは「そっか…」と不思議そうにしたまま、会話が終わった。
「…コウは、1人でここに居たの?」
アイが尋ねると、コウは寂しそうに笑って言った。
「…そうだよ、ここに1人で居たの」
「…寂しかった?」
「……寂しくなんて、ないよ」
コウは寂しそうに微笑み、言うと「アイちゃんは、ここに居たいとは思わないの?」と尋ねた。
「…思わないよ。だって、レンと一緒に居たいから。」
アイが答えると、コウはキョトンとしてから
「じゃあ、レンって人もここに居たら、ここに居たいの?」
アイは少し黙ってから「居たいよ、ここみたいな、明るくて暖かい場所に」と答えた。
すると、コウはとても嬉しそうに微笑んだ。
「そっか!じゃあ、ここに居てくれるね!」
「…話聞いてた?レンが居ないと意味な…」
アイの言葉を遮るように「あ!居た!」と声が聞こえた。
聞き覚えのある声。
「アイちゃん!!」
「レン…?」
レンは駆け寄ると、アイに「その子は?」と尋ねた。
「えっと…コウっていう子、ここで会った…」
アイは困惑しながらも答えた。
レンは「そっか…」と言うと
「ボクはレン!よろしくね!コウくん!」と笑った。
コウはぎこちなく微笑み「コウです、よろしく…」と言った。
(こんなにタイミングいいことってある…?)
アイは戸惑いながらも、コウの方を見た。
コウは、レンに絡まれて困ったように笑っていた。
(…何か、おかしい…)
「…せっかくだしここも探索してみよう」
アイが言うと、レンは「お!いいね!」と笑い、コウは「わかった」と微笑んだ。
(…探らなくちゃ、ここの異変を)
『ねぇ
ここがなんだかわかる?
ここは綺麗なお花畑。
明るくて優しい陽だまりの世界。
冷たくて暗い水の世界の次は
帰りたくなくなっちゃうような
優しい優しいお花の世界。』