16話目
見覚えのある白い花が、花瓶に入れられていた。
カーテンは固く閉ざされ、陽の光は一切入ってきていない。
そんな部屋の中で、コウは一人静かに眠っていた。
「コウ…?」
アイは小さく呟き、コウの元へ近づいた。
レンは、何も言わずにその光景を眺めていた。
心電図の音。
規則正しく鳴っている。
今、この場に居るもの以外の気配はない。
ただ、静かな空間だった。
「コウ、寝てるの…?」
アイが呟くと、レンは口を開いた。
「植物状態だよ。」
アイは、レンの言葉を聞き、振り向いた。
「…原因はわからなかったけれど、多分植物状態だと思う。だから、呼びかけても起きないよ」
レンは、言いづらそうに顔をしかめて言った。
アイはコウの方を見た。
「他に、何かわかったことは?」
アイが尋ねると、レンはキョトンとしてから、また言葉を続けた。
「その子、多分アルビノ。
だから、外に出られなかったんだと思うよ」
レンが言うと、アイは「そう…」と小さく言った。
「だから、「お外は怖い」て言ってたんだね」
「さて、どうしよっか?この子を起こす方法もないけれど…」
「魔法で…どうにか、できないの…?」
アイが言うと、レンはキョトンとした。
「魔法、かぁ…」
レンは呟くと
「一時的にしかできないんだよ。いつかはまた眠っちゃう。それを、コウくんは望むのかな?」
レンは心配そうに言った。
すると、アイは少し大きな声で「それでもいいの!」と言った。
「それでも、いいから…話さないと…」
その言葉を聞き、レンは困ったように笑った。
「じゃあ、せめて言葉をまとめてこようか。」
そう言い、アイの頭を撫でた。
アイは「うん…」と小さく言うと、病室を出た。
レンは、コウの方を見ていた。
「君は、本当に人間なのかな…『普通』の」