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こうして痴漢冤罪は作られる  作者: 門脇 賴(カドワキ ライ)
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痴漢冤罪ーこぼれ話(仙人の独り言)


 宏さんから電話が入った。7月の中旬だった。驚くべき内容だった。




 Kスポーツジムの受付担当の女から冤罪を着せられているという。既に裁判が第二審まで進んでおり、第一審で有罪、第二審で控訴却下との事だ。告訴したのはフロアー担当の女であるが、宏さんの言うにはこの子には大した意志はなく、すべては受付の女の逆恨みによる冤罪でっちあげという事だった。


 電話では詳しい話は無理なので、後日喫茶店で会うことにした。その後、現場検証して間取り図を描きたいのでメジャーを用意して欲しいと言われた。望むところだ。 




 宏さんとは20年来のランニング友達だが、今やその域を超えている。彼の冤罪が晴らせるなら、何だってやってやろう。間取り図作成は俺に任せろだ。




 翌週、駅近くの喫茶店で宏さんに会った。詳しい説明を聞いた。ランニングに有効なハムストリングのストレッチングを教えているとき、ケツに触ったとフロアー担当の女に訴えられたが、この女の意志ではなく受付担当の女の逆恨みによるものだという。


 ランニングのストレッチングをサポートするなら、ある程度は下半身に触れるのは当然ではあるがランニング仲間ではないところで個人差が出るかも。




 私自身もKスポーツジムの一部の若い女には世代差(ジェネレーション・ギャップと言うのだろうか)を感じたことがあった。久し振りに会った顔見知りの女性が驚くほど痩せて見えたので、思わず『痩せましたね』と心配して声をかけたら、一度無視された後、追っかけられ、『あなた、失礼ですよ!』と睨まれた。


 そんな事を思い出す。


 宏さんは、『かおりちゃんやスーパー母ちゃん、慶ちゃんには、もっとずっと濃厚に接していたのに…』と、たいそう腹立たし気であった。彼の口ぶりからすると、どうもフロアー担当の女の知的面を疑っているようでもあった。




 第一審では、フロアーの女と受付の女の証言はかなり食い違っているとのことだが、にも拘わらず『疑わしきは罰せず』の大原則を破っての有罪判決にはかなり立腹しているように見えた。




 宏さんの話によると、第二審で却下された判決が最高裁で覆ることはまずないらしい。それでも上告するというのだから、よほど腹に据えかねたのであろう。『中学生の模擬裁判みたいだった』と自分の言いたいことが言えてない悔しさに強いストレスを感じているようであった。




 目撃現場から事件現場までの間取り図作成および写真撮影の依頼を引き受けた。喫茶店で別れた後、その足でKスポーツジムに足を運んだ。




 翌月、駅前で宏さんと待ち合わせをし、早速間取り図を見せたら、どうも怪訝そうな顔をする。どうやらフロアーを間違えたようだ。残念、やり直し。




 宏さんはどうしても現場が見たいようで、今から一人で見学に行くと言い出した。それなら勿論、私も一緒に行く事にした。彼は帽子の他にマスクよりでっかい覆面のようなのを巻いてたので知り合いでも分らないだろう。


 宏さんを自分の仕事仲間だと受付に紹介して受付を済ませた。彼は私を現場に立たせて、受付近くから真剣な表情で鏡を見入っていた。『やはり受付からは同時には見えない。これで偽証がはっきりした』。めずらしく、真剣な目だった。




 数日後、再度Kスポーツジムに足を運んだ。今度はしっかり現場を測定した。現場の写真も何枚か撮った。測定値を基に間取り図を作成した。良い出来だと思う。




 それから間もなく、例の喫茶店で宏さんと再会した。今度の間取り図にはたいそう喜んでくれた。以前の話では、『最高裁で判決が覆ることはまずない』と言っていた。しかし、この満足そうな笑顔は何だろう? 最高裁では逆転の自信がついたのだろうか?


 数週間後、彼から電話が入った。開口一番、

「仙人、控訴は却下されたよ。」




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