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新卒くん、死す

僕は仕事を覚えるのが遅いほうだと思う。

それでもこの会社に入って半年、腐らずにやってこられたと思う。

毎日何かしらで頭を下げてばかりではあるけど、頑張れる。

間違いなく先輩のおかげだろうと思う。

僕を叱り、励まし、根気強く面倒を見てくれる先輩のおかげで、こんな僕でも先輩の役にたてるようになれたらと思って毎日仕事に臨んでいける。

それなのに僕ときたら。


「おい、しっかりしろ!あんたも呆けてないで早く119番を!」


「あ…は、はい……」


憔悴している女性は僕をはねた運転手だろうか。

もたもたとした様子で携帯をいじっている。

もう一人、僕を介抱してくれているのはその場に居合わせたおじさんらしい。

なんの音も聞こえないが、なにか怒鳴っているようだ。


多分、僕はもうだめなんだろうなあ。


不注意の車に、不注意の僕が轢かれてしまった。

言葉にすればそれだけのことなのに、その結果は決定的なものらしい。

注意一秒ケガ一生。

思えば仕事中にも不注意で散々怒られたというのに。

両親にも先輩にもなにも返せていないというのに。

それなのに僕ときたら。


なさけない。

せっかくいろいろがんばったのになあ。


もっと いろいろ―――…


暗くなっていく意識には、未練のようなものが浮かんでは消え、また浮かんでは消え。

でも、それも長くは続けられなかった。

重いなにかに引かれるようにして、どんどん意識が薄れていく。

沈んでゆく。


やがて。

何もない静かな闇だけが広がっていた。











――――――…。



これが僕の最後の記憶だ。

次に目を覚ました時、僕は違う誰かだった。



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