東方物天秤 第5章 2話 剣と手袋、それと翼
最近、いよいよどこに行けば良いか分からなくなってしまい手詰まりかと思ったが、テント内で違和感があったところを力強く踏んづけたらなんと隠し宝物庫があった。前に少し見ただけでもとても広かったが、あのテント自体にそんな広さは勿論存在しない。何か特別な術が施されているのだろうか?ただ、中は明かりが全くと言っていい程無いから、必要であればランタンを持ってこようと思う。
テント下、隠し宝物庫
商益「繋来氏、そちら側はどうだ」
風渡「いまいちや」
商益「こちら側も同じく」
風渡「てか空飛べれる様になるモンはあるんか?」
商益「きっとある」
風渡「いくらここが隠された宝物庫でもそんなモンがあるとは思えんけどなぁ」
商益「まあ、根気よくやっていくしか無いな。幸いにも保存状態は限りなく良好だ」
風渡「せやな。それにしても、タダでさえ明かりがあらへんから暗いのに奥へ行けそうなドアがポンポンあるんよな」
商益「ランタンもって来ようか?」
風渡「頼むわ」
・・・
商益「あったぞ、繋来氏」
商益(…?)
商益(繋来氏は暗闇に気が向いていてこちらに気づいていない様だな。…少しいたずらしてみるか)
ソーッ
商益「…わっ!」
風渡「キャア!」
風渡「何すんのや商益はん!」
商益「はは、すまない繋来氏、ちょっと驚かせようと思っただけだ」
風渡「驚かせようとってあんさん…」
商益「ははは、済まない済まない」
ビシッ
風渡「次やったらタダじゃ済まさんからな!」
商益「…本当にそれは徒では済まないからその握っている短剣をしまって…って短剣じゃなくて何だそれ」
風渡「適当にめっけた木製のハコや」
商益「何故にその箱を?これ位の箱ならどこを見てもありそうなものだが」
風渡「見とったらこのハコだけ反応があるんや」
商益「開けてみてくれ」
風渡「ほいな」
カパッ ガサガサ
商益「これは…剣の部品一式か?」
風渡「そうみたいやな。っと反応を示しとるんはこれやな」
商益「ガードか。それにしては差込口が大きいが。…ふと思ったんだが、何故これは部品がバラバラに保管されているんだ?」
風渡「確かに、パーツが全部あるなら全部装着されているハズ。パーツが足りへんのかな」
商益「…… !」
風渡「何か分かったんか!?」
商益「もしかしたらな。繋来氏、前に自分が渡した短剣を直したことがあっただろう」
風渡「あったなぁ」
商益「今も繋来氏が持っているだろう?で、その短剣は部品ごとに外すことが簡単な仕様だが…短剣どころかどんな剣でも絶対見なそうな部品が一つ混じっていたのを覚えているか?」
風渡「!もしや…」
商益「短剣を貸してくれ」
風渡「ちょっと待ってな」
風渡「ほい」
商益「そしてこの短剣の部品を」
カチャッ
商益「外して…」
カチッ!
商益「ガードにはめ込む!」
風渡「おお!大きさピッタリや!」
商益「予想通りだ。こうなってしまえば後は残りの部品を組み込むだけだな」
カチャカチャカチャカチャ
・・・(5分後)
商益「よし、出来たぞ」
風渡「立派な片手剣やな」
商益「ああ、グリップも良い。ところで、繋来氏はガードが反応していると言っていたが、試しにエネルギーを送ってみるか?」
風渡「頼むわ。思うたんやけど、あんさんのエネルギーを送るヤツ、アレどうやってんのや」
商益「何も大それた事はしていない。ただエネルギーを擬似的に持てるようにして物に送っているだけの事だ」
商益「エネルギーを送ってみるぞ」
商益「…」
バチバチバチバチ!
商益「おお、帯電した」
風渡「凄いな!」
商益「この電気をどこかに使いたいが、残念にも電気を空中に飛ばせない様だな」
風渡「とりま持っときない。アレコレは俺がやるから」
商益「済まないな」
・・・
商益「扉を何個も進んだが…」
風渡「…ココにある網状のでっかい鉄カゴは何や?」
商益「記憶が正しければとても昔のエレベーターだな」
風渡「ほんならコノ上にある絵は何や?」
商益「流石に知らない。‥が、これは翼と手袋の絵だろう?」
風渡「ほーん。…ところで、エレベーターどう起動させるんやろか」
商益「どこか電気を流せそうな所は無いか?」
風渡「…あ、ココ何か壊れとるわ」
商益「少し賭けだが、ほっ!」
バチバチバチッ …キィィィィィ
ジージジッジジィィィィィ
商益「よし、起動できたぞ」(ついでにライトも点いたから良かった)
風渡「帯電しとる剣を使ったんやな」
商益「当たり前だがこれだけでは動かないな。繋来氏、一緒にエレベーターに入ってくれ。いつ動き出しても良いようにな」
風渡「ほいな」
商益「エレベーターなら当然降りるためのボタンがあるはずだが…お、端っこにあった」
風渡「真反対のこちらにもあったで」
商益「え、そうなのか?なら、このエレベーターは二人乗りが前提なのか…?」
風渡「ほら、こっち押したからそっちも押しない」
商益「…分かった」
カチッ ガコン!
商益「あ、扉が閉まった」
ガラガラガラガラ!!
商益「うおっ、エレベーターが急激に下がっているのか?」
風渡「これヤバいんやない…?」
商益「掴まっていろ」
風渡「分こうた。って、うわああああぁぁぁぁぁ……
ガーーーーーーーーキッキィィィィィィ… ガコン
・・
地下100M地点
商益「ふう、止まったな」
風渡「し、心臓も止まるかと思うた」
商益「大丈夫だ。しっかり生きている」
ガコン
商益「よし、扉が開いたな」
商益「…?奥に何かが光っているな」
スタスタスタ
商益「これは…」
風渡「手袋と…」
商益「翼の絵のメモリーだな」
風渡「ちょっと手袋付けてみてもエエか?」
商益「勿論だ」
風渡「…おお、着け心地エエわ」
商益「それは良かったな。さて、このメモリー、存在する以上は調べておかないとな」
……
商益「!?」
風渡「何や何や?」
商益「何かが分かりそうな気がする…
ぬぅぅぅぅ…
!」
風渡「何か分かったんか!?」
商益「まだ不透明だが、何か新しいことが出来そうだ。今、やってみるから少し待て
…ぬうっ!」
商益「…ん?シャツがきつくなった様な…繋来氏、自分は上の服を脱いでみるから後ろがどうなっているかちょっと確認してくれないか?」
風渡「勿論やとも」
ガサッ
風渡「!」
商益「どうなっている?」
風渡「あんさんにはとても言いづらいんやけども…
…単刀直入に言うわ。あんさん、背中に翼が生えてもてるで、それも天使とか神さんとかに付いとる様な白いヤツ」
商益「…ゑ?それは冗談じゃないんだよな?」
風渡「勿論ホンマよホンマホンマ」
商益「まあ、悪い事では無いな。翼を生やせるようになったという事は空も練習次第で出来るという事だよな?」
風渡「まあ、そう言う事になるんやない?」
商益「この先にも通路はあるが、このまま帰る事は…無理そうだな、もうエレベーターは上へ行ってしまっている」
風渡「ほんなら、進むしかあらへんな」
商益「そうだな」
・・・・
翼とリングの練習塔
商益「おおっ、何か井戸と言うか塔の内部みたいになっているな」
風渡「一番上まで100メートル位ありそうやのに、足場は高さ2メートル地点で終わっとるがな」
商益「待て、繋来氏、少し遠いがあそこに摑めそうなリングがあると思うのだが、それを使えば先に進めるんじゃないか?」
風渡「いや、あんなん掴んでも二秒で手ぇ離してしまいそうなんやけど」
商益「なら、ついさっき手に入ったその手袋は何のためにある?」
風渡「確かに、これを使えばリングも結構掴んでおられるかもしれへんな、あ、商益はんの翼、現地点でどんなことが出来るんや?」
商益「少し試してみるぞ
…今のところは擬似二段ジャンプが出来るくらいだ」
風渡「ほんなら今から言う手順を聞いてくれや。まず、商益はんが二段ジャンプで少し上に上がって俺をリングへぶん投げてくれ、俺はそのリングに摑む。んで、商益はんが二段ジャンプも併用して俺に摑まったら俺は商益はんを向こうの足場側へ投げる。と言っても商益はんは俺を摑んだまんまにしといてくれや、そして俺がリングを摑んでおる手を離して商益はんが二段ジャンプをもう一回すれば向こう岸に行ける。どうや?」
商益「おお、とても良い案だな」
風渡「ほんならぶっつけ本番や」
・・
商益「準備できたぞ」
風渡「こちらも出来たで」
商益「やるぞ」
風渡「オッケーやで」
商益「ほっ、てやっ」
風渡「ほいなっと、摑んだで!来てくれてもエエで」
商益「分かった。はっ・・っと摑んで直ぐ飛ぶっ・・と、よし」
風渡「無事成功したな!」
商益「ああ、そうだな。ただ、こうやって進んだ以上、もう後戻りはしないからな」
・・・・(かれこれ昇って2時間後)
風渡「商益はん…」
商益「ああ、見事に向こう側の足場が壊れているな。おまけに摑めそうな輪っかも無い」
風渡「どうするんや?このままじゃ行けへんで!?」
商益「そうだな」
風渡「ココを何とか出来れば外に出れそうやのに…」
商益「そこで一つ言いたいことがある。上がっている途中で出来たのだが、結構慣れてきたのだろうか少量ながら滞空・滑空が、ついでにもう一段追加でジャンプが出来るようになっていた」
風渡「ほんなら、ココを抜けれるって事やの?」
商益「まあ、そう言う事になるな。善は急げだ、手に摑まれ繋来氏」
風渡「ほ、ほいな!」
シャーーッ
商益「ふぬうっ‥」
スタッ
商益「ふう、成功したぞ」
風渡「やった!コレで帰れるわ!」
商益「この少し小さい扉を開けたら出れそうだな」
・・・・
さっきのエレベータ地点
商益「うおっ」
ドサッ
商益「おお、エレベーターの後ろにあった絵が扉だったのか」
風渡「他にも同じ様なフロアはあるんちゃう?」
商益「あるだろうな」
風渡「ほんなら行こや」
商益「もう一つ行くと夜になってしまうからだめだ。後、ここへはテントから来たことを忘れているな?」
風渡「あ」
商益「取り合えずテントの外へ行くぞ」
・・・
テントの外
風渡「スゥゥーハァァー 外の空気が気持ちいい」
商益「よくよく考えたら5時前後ならまだ一時間程は明るいのを忘れていた。
どうせだし、博麗氏の所へ報告に行くか?」
風渡「せやな」
・・・
博麗神社
商益「…と言う事があって今に至る訳だ」
霊夢「ふうん、まあ、良いんじゃないの?」
商益「…反応薄いな」
霊夢「そりゃそうじゃない。別に、良い反応してもお賽銭が多く入る事も無いんでしょ?」
商益「…そう言う所だぞ、博麗氏」
霊夢「何の事?」
商益「いや、何でもない。そろそろ自分は帰るが、帰る前に一つ聞きたい。自分の持つこの翼、どうすれば自由に使える様になるか知っているか?」
霊夢「知らないわよ、確かに私は飛べるけど翼は持っていないじゃない。でも、レミリアなら何か知っているかもしれないわよ」
商益「スカーレット氏か…情報提供感謝する。では、また他の日に会おう」
2020/9/13 22:25
何と今日、翼を生やせるようになった。ただ、これだけ書くと全くの意味不明だと思う。まあ、翼が生えたことは悪いことではないどころか良い事ではあるから別に問題は無さそうだが。明日は取り合えず、スカーレット氏の所へ行ってみようかと思う。