ケルト神話 (ケヒト視点.ミアハとアミッド2)
ダーナ神族には、女神は14歳まで、男神は17歳まで、子どもを交換して育てる風習がある。
その風習を利用して、アミッドは隠されるように、ミアハの妹として、育てられることになった。
何故なら、アミッドを身籠っていた、乳母の妹は味方の戦士であるブレスに追われていたからだった。
戦士ブレスの母親はダーナ神族のエリだったが、ブレスの秘密の父親は、敵のフォルモール族の王子エラサだった。
フォルモール族は卑怯で野蛮な者が多い。
フォルモール族の血を引く、ブレスもダーナ神族の王ヌァダの次に力があるものの、狡く 手段を選ばないところがある。
ブレスの粗野で野蛮なところを ダーナ神族の母親譲りの美しさが 上手い具合に隠していた。人当たり良く振る舞えば、城下の娘たちが、興奮し嬌声をあげる。
ブレスの尊大な、年配の戦士たちからは眉をしかめられる行いも、若い仲間の戦士たちからは、好意的に受け取られていた。
乱暴者のブレスはアミッドの母親に懸愡していた。
その為に味方のアミッドの父親を戦場で騙し打ちして、アミッドの母親を手中に収めようとしたのだ。
ブレスがディアン-ケヒトの城に来た時は、既にアミッドの母親は手厚く埋葬された後だった。
ブレスはアミッドの父親の親友を名乗って、乳母の家に来た。ちょうど、ミアハがアミッドを背負って、お世話していた。
「ここには、ミオンの姉が住んでいると聞いて来た。俺はミオンの夫セスクの親友ブレスだ。セスクが戦死してミオンはこちらに身を寄せているのではないのか?」
アミッドはもう、7ヶ月だった。ミアハにおぶい紐で背負ってもらい、ご機嫌だ。
少し長めのミアハのプラチナブロンドを生え始めた下の前歯でかじっている。アミッドの小さな手には、手加減無しの赤ちゃんの力で引き抜かれたミアハの髪の毛が握られていた。
「ミオンはいないよ。ここに着いて、すぐに死んじゃった。お墓はディアン-ケヒトが建てた、城のお墓だよ」
ミアハは4歳児にしては、ダーナ神族の特徴である長身だった。しかも、はっきりとした口調なので、10歳位の少年にしかみえなかった。
「お前はミオンの死に際に立ち会ったのか?セスクは戦士としては敵の奇襲に合い、憐れな最期だった。軍医だったミオンと結婚してまだ一年も経ってなかった。俺は親友セスクの代わりにミオンとお腹の子を養う積もりだった。」
涙ながらに語るブレスを見て、ミアハはこの男は
危険だと思った。ミオンの姉であるミアハの乳母を簡単に騙してしまうだろう。