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ブルガリアから来た男

亜美が祖父の屋敷に掃除しに来たのは、1週間振りだったのだが、ダイニングキッチンが、一番大きく様変わりしていた。

2,3日の間にこれ程、買い込むことは、亜美の家では、無理だと思う程、食材に溢れていた。


「ブルガリアから、武水に頼んで、買い揃えてもらったり、昨日は自分で買い物も行ったよ。駅前がだいぶ様変わりしていて驚いた。この服も自分で買ったんだ。」


得意げに真っ赤なTシャツの裾を持って、行書体で書かれた「真田魂」の文字を亜美に見せるので、思わず吹き出してしまう。


「とりあえず、何か飲む?冷たいのが、いいかな?僕は、温かい紅茶と飲むヨーグルトを飲むけど、亜美ちゃんは何にする?」


意外とてきぱきとした動きで男性用エプロンを身につけて、IHヒーターに薬缶をかけている。


「ええと、じゃあ 私も温かい紅茶で!」


祖父の誠一郎は紅茶が好きで、いつも自分で淹れていた。

若くして亡くなったという祖母が縫ったティーポットカバーを大事に使って、紅茶の葉を時間を計って蒸らしていた。


矢車菊の花びらの入った紅茶を亜美が小学生の頃から ちょっぴり砂糖を入れて牛乳たっぷりめのミルクティーを祖父はよく作ってくれたのを、懐かしく思い出しながら、ケヒトに勧められた新品のスツールに腰かける。


亜美の母親は、学校給食の栄養教諭をしている。

市内にある、給食センターで働いているので、早朝から出勤する。

仕事がら、亜美の食事についても、厳しく躾られた。

「朝ごはんは、がっつり 食べるもの!」という信念の基に育てられ、今朝も玄米ご飯になすと厚揚げの味噌汁、アジの開きを焼いたのに山口大根おろし、トマトサラダ、胡瓜のおかか和え、オクラと納豆、学校給食にはつきものである、牛乳も大きなマグカップで…。亜美は6:30に玄米ご飯をおかわりして、完食して来た。


それでも、朝ごはんのお誘いを受けて、このブルガリア人の青年が作る朝ごはんに、興味しんしんで、また10時のおやつ代わりに相伴にあずかってもいいかな?と思っている。


ケヒトは、予め下ごしらえはしてあったのか、焼くだけに二次発酵まで済んだデニッシュの様なパイ生地をオーブンにセットしたり、冷蔵庫からサラダボールを出して、白っぽいポテトサラダの様なものを器に盛り付けている。


亜美の視線に、ふっ、と笑いながら、


「スネジャンカっていう、ブルガリア料理だよ。水を切った固いヨーグルトで作るんだよ、スネジャンカは白雪姫って意味。」


ケヒトの手際の良さは、魔法使いの様だった。IHだと作り難いな~、と呟きながらオムレツを作っている。そして、オムレツの中身に小さな缶詰めを取りだして、入れようとしていた。


「ケヒトさん! ストップ!それは、猫の餌だよ!」


ケヒトが開けようとしている缶詰めには、白い猫の絵がついていた…。




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