駱駝色の毛布
亜美は思いっきり 毛布にくるまった人間っぽい何かを 踏みつけた。そのせいで 体勢を崩してしまい、よろめきながら窓に近寄り 遮光カーテンを開けた。
「んん…。なに…?」
艶のある 青年の声が 寝起きで ややかすれて聴こえた。
窓から、居間の中に 日の光が入り 居間の扉の前に 寝転んでいた 薄っぺらい、駱駝色の毛布にくるまった 男性を照らし出す。
淡い色の金髪、これは プラチナブロンドというものなのだろうか…。そして、眩しそうに 窓の前にたって 逆光になった亜美を見ている 深いブルーの瞳。
物凄く容姿の整った 外国人の青年は 駱駝色の薄っぺらい毛布をもぞもぞと揺らしながら、上半身を起こした。
「‼」
にんにくのリースのこと、セキュリティシステムには なにも 異常が無かったはず、いろいろと警戒心を持ち、直ぐに 窓から外へ逃げるべきか 迷いながら 人間離れした 美貌の青年を凝視した。
「アミッドなのか?」
ハリウッド俳優よりも、整い過ぎた容姿の青年は、立ち上がろうとして 駱駝色の毛布がめくれ、赤いTシャツが見えた。
(駅前の土産屋さんに売っている真田魂Tシャツだ!)
背中には六文銭の家紋がプリントされているであろう、ローカルTシャツが美貌の外国人を偽物っぽくさせている。
(ざんねんな、外国人?)
亜美がやや呆けて、気がついた時には 至近距離から、シミ一つない きめ細やかな 肌の美青年が 深いブルーの瞳を潤ませながら、亜美の顔を覗き込んでいた。
「覚えていないと思うから自己紹介するね。僕は誠一郎の親友のケヒトだよ。アミッド、凄く会いたかった!」
ケヒトと名乗った美貌の外国人は、彫刻のように長くて綺麗な 指で 優しく 亜美の頬に触れた。
「ヘイゼル色の髪もブラウンアイの中に緑色があるのも、昔のまんまだね。」
誠一郎は亜美の祖父の名前である。そして、昔から亜美を知っている様な言動を照らし合わせると、亜美が物心つく前にでも会ったことが あるのだろうか?
「私は亜美で、誠一郎の孫です。祖父をご存知なのですか?」
「っ、ああ!ごめんね、亜美ちゃんだったね。誠一郎とは第二次世界大戦の時に…。」
かがんで 亜美の瞳を とろける様な笑顔で見つめながら、言いかけて ケヒトは 急に 身を起こした。昔の日本人にしては、背が高かった祖父は180cmの身長だった。ケヒトはそれよりも 10cm近く高いようだ。
「勉強で第二次世界大戦の話を聞いたんたよ。」と言い直している。
「ねえ、亜美ちゃん。ぎゅっ、てしてもいい?」
190cmに近い長身でも あまり筋肉質には思えない、ケヒトと名乗る美しい青年は 亜美の返答も聞かず。
亜美を抱きしめた。