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穴開ける次期王妃の婚姻譚  作者: 甲光一念
第三章 ロデウロ編
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75、私は注意される

 欠伸をしながら車に揺られること三十分、午前五時半、私は駅の前に立っていた。確かセブンスヘブンは一番ホームから出ていたはず。乗ったことないから詳しいところまではわからないけど。そもそも乗るような機会が人生で訪れると思っていなかったのでまともに調べたことすらなかったので予備知識がまあない。


 というのも、国家間直通移動列車セブンスヘブンは、利用する人間がかなり限定されている。国から国への移動時間が平均三十分という驚異の速度ゆえに、よほど急いでいる人しか乗らない。単に旅行で他国に行くという人はまず利用しないのだ。何も楽しくないし。大体車で行く。


 運賃を支払えば誰でも乗れるが、国を跨いで仕事をしているような人が乗るというのが一般的な認識。というか、急いでもいないのにこれに乗る理由がない。車窓から景色を楽しめるわけでもなく、列車の中で美味しい食事を味わえるわけでもない。頼めば軽食くらいは出してくれるらしいけど、三十分くらい我慢しろと言いたい。


 その三号車、客が乗ることのできる中で最も前方の車両こそ、王族が乗る際にくらいしか使用されないと言われる豪華車両なのだ。ちなみに豪華列車というのはまた別に存在する。そちらは長い時間を掛けて七か国を周ったりする際に使用されるものだから、用途が完全に真逆なのだけど。


 というか眠い。結局昨日リーデアの阿呆が十二時直前くらいまで私を着せ替え人形にし続けたお陰でばっちり寝不足よ。危惧していた通りの結果になったわ。さっきまでの車の中でもウトウトしてたし。運転席からオーラが何か言っていた気がしたけど正直半分も覚えていない。


『知っているとは思いますが、ロデウロは基本的に血の気が多い人間が集まりやすい国です。格闘技や何かの大会などを開くのであればロデウロが適切あると言われる所以はそこにあります』

『まあ、身体を作るのに適してるというのは間違いないからね。タンパク質の摂取、トレーニングの環境という点で、ロデウロは他国に比肩するものがないほど突出してる』

『警察が関与していないので正確な統計というわけではありませんが、ある調査では七か国のうちでもっとも喧嘩の発生件数が多いのはロデウロだということです。そこいらの不良程度ならば、撃退できることは百も承知ですが』

『ちゃんとした大人が襲ってきたら危険だから気をつけろって話?』

『いえ、民衆に混じっている可能性があるということです』

『……なるほどね。でも全員に警戒してたんじゃ、せっかくのロデウロなのに楽しめないじゃない。あまり気を張りすぎるのもどうかと思うわよ』

『ええ、ですから強制はしません。常に必ず周りの人々を見ていろなんてことは言いません。ですが、警戒するに越したことはないでしょう。気が向いたら、ということでしかありません。それ以上でも、それ以下でも』


 本来私に一番近い立場の人間ということで、オーラにも懇親会で起こったあれこれは伝えられた。当然、他の王族の命令で誰にも喋れないようになってるけど。私としては教えることも乗り気にはなれなかったのだけど、教えておかないとまた同じようなことが起きたときに対応できないと言われてしまえば、頷かざるを得ない。


 ただ、今回に関しては教えておいてよかったと思えた。ロデウロの民衆に紛れて私を襲ってくるかもしれないという可能性は頭になかったので、もしそれが現実のものになっていた場合のことを考えるとあまり愉快じゃない。ただ、その後の会話をあまり覚えていないのよね。


 何か話していたような気がするのだけど、半分以上夢の世界にいたような状態だったし、声が聞こえる度に反射的に返事をしていたような気がする。聞いてない人の話に返事をするのって、後々で面倒なことになる可能性のある行動第一位だと思うのよね。


 頭を振って眠気を振り払い、私は駅構内へ入る。そもそもこうして駅を訪れるのも随分と久しぶりだ。基本的に移動は車だし、電車に乗る用事というのも無いし、一体いつぶりだかも思い出せない。ただ初めてじゃないのははっきり覚えてるのよね。いつだかは思い出せないけど、私は電車に乗ったこと自体はある。


 どうせ小さい頃に両親と乗ったとかそんなところだと思うけど。っていうか、人生でも滅多にない乗車経験が、国家間を三十分で移動するセブンスヘブンで上塗りされるというのは、なんだかとても悲しいことのような気がする。まあ、ことがことだけに急がなくてはならないのはわかるのだけれども。


 ちなみに、今の私の格好はかなりシンプルだ。リーデアは全く納得してなかったけど、私が押し切る形で決定した。おそらくある程度走ることになるのは確定していると思うので、スカートとか走りにくい服は除外。動きやすいの最上位として名高い、かどうかは分からないけど、ホットパンツを履いている。


 ヒラヒラした装飾やら、意味のないフリルなんかも除外。というかそういう系がやたらと多かったのは完全にリーデアの趣味でしょ。そうやって取り除いていった結果、ほとんど残らなかったし、九割方私のお気に召さない服だった。


 結局、ピンク系のシャツに白っぽいパーカーを着るというシンプルにもほどがある形で収まった。私がこれで行くといった瞬間のリーデアは、世界が終わったんじゃないかと思うほどの表情を浮かべたけど、そんなに悪くないと思うのよ。多数決でこれが悪いものだった場合、私は単純にセンスがないことになってしまうのであまり多数決は取りたくないのだけど。


 とりあえず分かったのは、私が思いの外服に関するセンスがあるわけじゃないということ。私服であるというだけで喜びそうなので、シユウ様に必要以上に気を遣う必要はないけれど、日頃の制服に私は結構救われていたらしい。どこででも通じる服装ってやっぱり重要よね。


 唯一の誤算としてはパーカーの前を閉めてしまうと、サイズの関係上ホットパンツが隠れてしまい、下に何も履いていないように見えてしまうことかしら。シユウ様に見せたら鼻血くらい出しそうだけど、さて、どんな反応を見せてくれるのかしら。


「おはようアンナ、眠そうだけど大丈夫かわーお。いや、めっちゃいいと思うよ。その服。うん、いいんじゃない? ……それ下履いてる?」


 照れるというよりもなんだか注意されたような感じになりました。想像と違うのだけど。なんでこういうときに限ってそういう普通の対応するのこの王子。

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