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穴開ける次期王妃の婚姻譚  作者: 甲光一念
第三章 ロデウロ編
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74、私は無視される

「アンナ様は王子の客人としてロデウロに行くわけですから、必然的にお城に泊まることになると思うんですよ」

「まあ、そうなる可能性は高いでしょうね。というよりもシユウ様が私を城の外に宿泊させる未来が見えないし」

「随分信頼してますねえ。私としては嬉しい限りですよ。まさかアンナ様がとっくに王子のことを好きになっていたとは。それにもっと早く気付けていたら、恥ずかしいにもほどがある説得をすることもなかったのに……」

「あれがあったから気付けたんだって何度言えば理解してくれるの? そう何度も赤面されると私が申し訳ない気分になるからやめてくれる?」


 顔を押さえて布団をゴロゴロと転がるリーデア。当たり前みたいに言ってるけど使用人としてあり得ない暴挙よこれ。これから私が寝る布団に私よりも先に横になってゴロゴロするって。私だから見逃してるだけで他の所だったら問答無用で即日解雇よ。なんで私が椅子に座ってるのよ。せめて逆でしょ。


 でもまあ、リーデアの気持ちも理解できないわけじゃない。好きになる努力をすると説得されて納得した数日後に自分の好意にようやく気付いたなんて報告は普通しない。そういう意味では私には負い目があるのであまり強く出られないのが本音だ。別にどちらが悪いわけでもないというのが解決の糸口を消し去っているというか。


 お互いに、謝るのは何か違うなと思っているのだ。リーデアは私に謝らせたいわけじゃないし、私もリーデアに謝るのは筋違いだと思うし。あの優しい説得が無ければ私が自分の本心に気付かなかっただろうというのは間違いがない話で、リーデアにはしっかり感謝を伝えている。ただリーデアが今になって顔を熱くしているというだけで。


「……話を元に戻しますけど、お城に止まるということは一つ屋根の下ってわけじゃないですか」

「随分広い屋根ね」

「多分それなりに近い位置の部屋に通される……、いえ、もし向こうの王族や使用人が私と同じように考えているなら、いっそのこともう同じ部屋に押し込むはずなんですよ」

「貴女と同じ思考の人間は滅多にいないと思うけど」

「これはチャンスですよ。千載一遇のチャンスです」

「……向こうの使用人に顔を売るってこと?」

「そんな話じゃないです。売らなくたって向こうに行けば自然と売れます。どうせどこに行ったってアンナ様は優しいんですから。チャンスなのは既成事実って話ですよ。もう早いとこ子供作って、第一王子との婚約なんて破断にしちゃえばいいじゃないですか」

「とんでもないこと言うわね。……ていうかそれ冗談でしょ? だってそれが目的なら私に避妊具なんて渡す必要ないもの」

「おやおや、推理が冴えていますねえ。まあその通り、普通に冗談です。実際にそんなことしたらロデウロにどれだけの額の請求が行くか……、ああ、考えただけで恐ろしいですね」

「それも確かに恐ろしくはあるけど」

「アンナ様をこれだけ大事にしてる王子がこんな早々に子作りなんて言い出すわけもないですしね。むしろ、こっちから迫っても断られる可能性すらありますよ」

「……胸の話してる?」

「してないですよね!?」


 大事にしてるから現状では断るも間違ってはいないのでしょうけど、それ以上にシユウ様がそういう行為に不慣れというのが大き過ぎると思うのよね。正面から服を褒めることもできない人がどうしてそんな大それた行為に突然及べると思うのか。多分迫ったら逃げると思う。


 それはそれで女としては傷付く話だけど、まあ、高等部卒業くらいの年齢になればもう少し慣れてるはず。その頃になれば私の魅力も上がり、積極的に迫ったら理性を崩壊させてしまうかも。この妄想はやめよう。死にたくなる。現実味のない妄想は人のテンションを下げる。


「シユウ様は多分、私を一人にするとまた危険に見舞われるんじゃないかと思ってるのよ。この間の懇親会で襲われた実績もあるしね。それでも今回の帰省に私を誘わなかったのは、ロデウロに行く方が危険だと思ったからだと思う」

「ってことは、アンナ様から付いていくって言ったんですか? なんという成長! 少し前までのアンナ様だったら絶対に言わなかった言葉! 私はとても感動しています!」

「馬鹿にされてる気しかしない……。でも、そうね。貴女の言う通り、一月前の私だったら言えなかったことだと思う。一人で行かせたくないって、そう思ったのよ」

「……出来れば、彼から誘ってほしかったのでは?」

「厭らしい笑いを浮かべながら言わないでくれる? ……そうなのかもね。私は誘ってほしかったのかも。困ったときに、私を頼ってほしいって、そう思ってるのかもしれない。だからって言うのもあれだけど、少しむかついたもの」

「……アンナ様って、そんな短気でしたっけ?」

「恋は人を変えるのよ」


 私のその言葉に対して口笛を吹いてきたので、目の前にあったティッシュの箱を口目掛けて投げる。顔に投げてるのと変わらないわね。大したことないなと言わんばかりに後ろに倒れることで回避するリーデア。そしてドヤ顔。なにも言われていないけど、どうだ凄いだろという感情が伝わってくるようだ。椅子でも投げつけてやろうかしら。


「で、明日は何時に出ていけばいいの? というかどうやってロデウロまで戻るの?」

「なぜそんなに何も聞いてないんですか。迂闊すぎるでしょ。後で電話して聞けばいいやとでも思っていたのか何なのか知りませんけど、約束にもなってないですよ」

「……シユウ様をからかって満足して聞かずに帰ってきちゃった」

「何やってんですか。言わない方も言わない方で大概ですけど。明日は午前六時に国家間直通移動列車、セブンスヘブンの三号車に来てほしいとのことです」

「三号車って……、王族御用達の豪華車両じゃない。え、私もあれに乗るの? 冗談でしょ?」

「冗談もなにも、王族の客人として行くんですから当たり前でしょうに。問題はそこじゃないんですよ! 明日です明日! 明日こそアンナ様が自分の魅力をシユウ様にアピールする絶好のチャンスなんですよ!」

「どういうこと?」

「学校で会うときは制服! 正式な場ではドレス! つまり! 王子に私服を見せるチャンスは二年間で初だということ! この二年間で私がコツコツ集めてきたアンナ様用の服が、ようやく太陽の光を浴びるときが来たのです!」

「ええそうね、二年間馬鹿みたいに持ってくるからクローゼットがもう限界よ。ある程度持って帰ってくれない?」

「さあ! ファッションショーです!」


 無視するとは。いや、明日六時でしょ。そうなると四時くらいに起きたいんだけど、寝かせてくれる気無さそうなんだけど。

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