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穴開ける次期王妃の婚姻譚  作者: 甲光一念
第三章 ロデウロ編
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71、私は滅亡を願う

「……それで、現国王、シユウ様のお父様は何と?」

「そっちの反応があんまりよろしくないんだよな。シーツァリアとの交易を打ち切るっていうのは兄貴の発案なんだけど、父さんはそうするべきじゃないって言い続けてる。現国王と次期国王の間で意見が対立してるんだよ」

「その対立はよくあることなのですか? ジエイ様とお父様の、意見の不一致というのは」

「ない。あの二人は意見が割れると対立とかじゃなくてもっと合理的に解決するから」

「合理的?」

「お互いに資料とか集めて作って、城の関係者全員にプレゼンするんだよ。で、両者の発表後に多数決とって、優劣を決めてる。だから一つ意見が割れると解決に絶対一週間はかかる」

「……合理的、と言えば合理的ですが、それ以上に民主的と言いますか……。まあ平等な解決方法ではあるのでしょうね。……ちなみに勝率の方は?」

「三七かな」

「どちらが七で?」

「兄貴」


 なるほど。ロデウロ現国王の気持ちを考えるとかなり悲しい気持ちになるけれど、現国王よりも次期国王の方が優秀であるというのは安心材料の一つでもあるとは思う。父親という立場的にはどうか分からないけれど、後継ぎという視点から見れば、まあ、嬉しい話には違いないはず。


 というか、シユウ様がやたらと私をロデウロに連れて行きたがる理由がなんとなく分かった気がする。たとえ父親に認められなくとも、兄が認めているのだから阻止されることはあるまいと高を括っているのだろう。そんな強引に押し通したみたいな結婚は少し嫌なのだけれど、結果が最優先なのでしょうね。


 ただ、もしそうなら少し揉めている期間が長すぎるのではないかしら。二年前の段階で既に交易を打ち切るという話が出ていたのなら、対立した両者がプレゼン対決で国の方針を決めるんじゃないの。具体的な方向性も決まらずに停滞している現状は、ロデウロ的に非常事態として認識されうると思うけれど。


「そこは兄貴が譲ってるんだよ。父さんがシーツァリアとの交易を打ち切るべきじゃないって言ってるのは、万が一、七か国の外側から攻撃を受けた場合に対処が出来なくなるからだ。争いの火種になりかねない兵器だとしても、平和のための抑止力には違いないっていう意見でな」

「それに関しては私も同意しますが、外側への抑止力というなら現存するもので十分なのでは? 現在流通しているものを他の国で量産すること自体は可能なのですから」

「まあ、そうなんだけどな。そこが話をややこしくしてるって言うか……」


 まあ、シーツァリアが不要ではあれど無意味ではないということの厄介さを象徴する一例ね、これは。外側への対策という点では必要だけど、そもそもそれが七か国全てに必要かというとそんなことはないわけで。かといってシーツァリアだけに戦力を集中させるのはリスクが大きすぎる。


 だから他の六か国も兵器を備えるわけだけど、戦争が起こっているわけでもないのにこれ以上研究を進める意味なんて本来無い。けどシーツァリアだけに占有させておくわけにいかない現状、意味がなくとも仕入れざるを得ない。しかも、シーツァリアの研究が実際どのくらい進展しているのかを他国は把握できない。


 かといって未知の技術に対抗できるほどの兵器を他国が開発できるわけでもない。結果としてシーツァリアとの関係性を絶つわけにもいかず、悪循環とすら言える状況が構築されてしまっている。だから私は以前、この国ごと爆発して無くなれば一番楽だと言ったのよ。現実的じゃないけど。


 公開済みのものも未公開のものも全て纏めて消滅してしまえば、その悪循環は解消される。シーツァリアさえ綺麗さっぱり無くなってしまえば、軍事の問題も宗教の問題も全部解決するのよ。私の故国が病巣過ぎて辛い。もう少し人に迷惑をかけない愚かさを心掛けてほしいものだけど、それが出来るならこうなってないわ。


「……せめてクリスがもう少しまともな奴だったらなあ」

「そんな現実味のない妄想をしても意味などありません。あの愚か者に今更正常を求めるなど、それこそ愚か者の思考ですわ。安易な考えに逃げるのは癖になるので、今の内に止めておいたほうがいいとだけは言っておきます」

「分かっちゃいるんだけどさ、あいつがもう少し普通に考えられる奴だったら、あの女とくっつくなんて馬鹿げた未来も来ないわけだよ。……いや、別にアンナとあいつがくっつけば良いとか思ってるわけじゃないからな。それこそ最悪だからな」

「分かっていますわよ。今更、貴方のそこを疑ったりはしません」

「……え、あ、そう?」


 拍子抜けといった顔で見られてもそれ以上の反応は返せないのだから、あまり見ないでほしいわね。この二年間の積み重ねが着実に実っていることの証明なのだから素直に喜べばいいものを。どうも自分に都合のいい展開を疑うような嫌な癖があるのよね。どうしたらそんなことになるのやら。


「それで、現国王は私のことを具体的になんと?」

「『お前のその気持ちを否定することはしないが、実現が可能かどうかとは別の話であるのは言わずとも分かっているだろ。現在の七か国の状況から考えれば、それは絵空事でしかない。止めはしない、勧めもしない。成したいことがあるならば、目的ではなく結果だけを伝えろ。俺にそれを拒絶することこそ不可能なのだからな』っていうのが前言われたことだな。ようは、経過報告はいらねえから結果報告だけしろってことなんだけど」

「……想像していたよりは好意的な反応ですわね。要は、決まったならば止めない、ということでしょう? 私が婚約を破棄され、そこをシユウ様に救われたのであれば、それ以上何も言わないと」

「まあそうなんだけど、もしそうなったらシーツァリアとロデウロの関係って結構歪になるだろ? そうなると、交易を続けるべきっていう父さんの考えとは外れるんだよな。具体的には何も言われてないけど、微妙に釘刺されたような気がして気が重い」

「そこはシユウ様の交渉術の腕の見せ所では?」

「俺が交渉術を披露したことなんて一度でもあった?」


 ふむ、まあ一応話は通っているという解釈でよさそうね。事実上、両者から私との結婚の許可は貰っている。シユウ様もそう思っているから、私を二人と会わせようとしているのだろうし。あとは婚約破棄さえ成立すれば私は晴れてシユウ様と正式に結ばれると。状況は悪くないわね。


「ん、ごめん、電話だ」

「はい、黙りますわ」

「言い方悪いな。……もしもし、どうした? ……は? 窃盗? なんでわざわざそんな報告を……二日で千件超え? 何言ってんだ?」

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