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穴開ける次期王妃の婚姻譚  作者: 甲光一念
第二章 懇親会編
60/156

60、私は問い詰められます

「ふむ、では、今の話は我の方から機関に通しておこう。機関が宗教に加担してしまっていたという事実は、極力言いふらさない方がいいだろうし、そういう方面の事案に向いているのは、この中ではどう考えたって我だしな。……はっ」

「おいこら。なんで今私の方見て鼻で笑った? 私の記憶の中のさっきの謝罪から急速に誠意が失われつつあるんだけど」

「知るか言ってろ」

「何だその雑な対応! 今から戦って白黒つけてやろうか!」

「あーもう、落ち着きなって。そんなにいちいち沸騰してたらそのうち脳みそ焼ききれるよ? そもそも、戦いに発展する前に私達が止めるし。ねぇフラット?」

「やだよ。この二人止めるの面倒だし。実際アディアだってウェインと同じくらい沸点低いんだから」

「ほう、そういえば先程からやたらと我に対して喧嘩腰だと思っていたのだ。貴様から先に我と戦うか?」

「なんでだよ! 絶対やだよ!」

「いいじゃんやりなよ。久しぶりに私もフラットが戦うところ見たいなぁ。アンナもそう思わない?」

「え、私ですか? いや、えっと、あまり私が王族の方々の能力を知ってしまうのはまずいような気がするので……」

「何を今更気にしてんの。そもそもシユウと結婚するんならそのうちアンナも王族の仲間入りするわけだし、今知るか後で知るかの違いでしかないじゃん?」

「そういう問題ではない気が……」

「うーん……、シユウ、フラット、そういえばさっき二人は肉料理を食べ尽くすとか言ってなかったかい? 話も一段落付いたことだし、行ってきなよ」

「何その露骨なあっち行けよ感。いや、メロデア。俺はそれはアンナと一緒に行くって決めたから駄目だ。フラットなんかとは一緒に行けない」

「なんかって何だなんかって。胃袋破くぞ」

「破く!? そんな直接的なことあるか!?」

「二人とも? いいから行っておいで?」

「……はーい、行きまーす」


「……やっぱ王族って禄な女いないよな」

「お前王族の女子には声掛けないもんな。貴族の女子にはめっちゃ積極的だけど」

「だってまともな未来見えねえし。全員気が強すぎて夫婦仲が独裁政治になる未来しか見えない」

「分かるー」


「いいんですか、あれ?」

「後で胃袋破くからいいよ。それより、メロデアがわざわざあの二人を遠ざけたってことは、アンナに聞きたいことがあるってことでしょ?」

「まあ、いい機会だしね。それに、私達に囲まれて白状しないこともないだろう」


 白状とはと思うと同時に、この場に残った四人の王族に包囲されます。圧が凄いですわね。というかこれ世界で一番豪華な包囲網なのでは。今しがた追い払ったお二人がいれば先程の宗教関連の話の続きだろうかと思えたのですが、この場にいるのは女性だけ。となれば聞かれることは概ね想像がつくと言いますか。


「なんとなく察していると思うけど、私達が聞きたいのはアンナとシユウの関係だ。シユウからは昔から何度も繰り返しアンナの話を聞かされてきたけど、実際に本人からも話は聞いておきたいからね」

「まぁ、私はここ三人と違ってアンナの人柄みたいなのはなんとなく分かってるけど、それでもどのくらい進展してるのかには興味があるねぇ。あの一途馬鹿のシユウが、果たしてどこまで進めてるのか、ってね」

「あんたのことは気に入ってる。けどそれとこれとは別問題よ。私じゃなくあんたを選んだのには絶対に理由がある。というか理由が無きゃおかしい。納得できる理由が欲しいのよ。あわよくば私が奪う」

「今更略奪愛など不可能だとは思うが、将来的に王族に加わるかもしれない者の調査は必要だろう。もし主が良からぬ組織の手の者だった場合などに備えておく必要もあるだろうしな。というのは建前だが」


 建前って言っちゃいますか。まあ、瞳に浮かんでいるのが興味と好奇心である段階で分かってはいましたが。というかこの状況も当たり前と言えば当たり前ですわね。シユウ様は五歳の頃、つまり私と会ったこともない時から私と結婚するなどと宣っていたというのですから。

 今の私としてはありがたいお話ですが、当時の皆様の心境は察するに余りありますわね。物心ついていない時分からすでに、取り返しがつかない深刻な妄想癖を抱えた者が身近にいたわけですから。むしろよく今まで真っ当な友人関係を保てていたものです。そっちの方が不思議ですわ。


「えーと、何処からお話すればよろしいでしょうか。私としてはシユウ様の恥部がいくら開示されようがなにも感じないので気になるところをお好きなだけお教えできますが」

「それもそれで凄い話だな。シユウからの求婚になぜ頷いたのか不思議になる。我としては、シユウが最初何と言ってアンナと繋がりを持ったのかを聞きたいところだ」

「一番最初ですか?」

「……なにか不都合な点でもあったか?」

「いえ、ただ、最初と言うと、聞いて面白いものではないかと」

「ほう。いや、むしろ丁度いい。シユウの奴はそういう点に関して未来が変な方向に進むと嫌だからと駄々を捏ねて一切教えてくれていないのだ。この場に奴がいない今が好機」

「えー、最初それ? あんたもっといいところの話聞けないの? 初デートとか、告白の言葉とかさ」

「ではウェインは気にならんのか? なぜシユウはこうまで頑なにアンナに固執し続けたのかを。なぜお前よりもアンナの身を慮り、留学までしたのかを」

「……気になるけど」

「よし、ではアンナ。早速、おおまかでいいので頼む」

「はい。そうですわね、最初シユウ様は――」


 今思い出すと第一印象って最悪だったのですよね。蝿がいるところに留学初日に突然押し掛けてきて、七年後に処刑されるから助けに来たとかいう意味不明な発言の数々。あの時私が話を無視して談話室から出ていかなかったのは、ただ家に帰りたくなかったのと、何でもいいから縋るものが欲しかったから。

 希望を完全に捨てきれていなかった、一番みっともない時代の私。


「――という感じでしょうか。受け入れ難い話ではありましたが、人生も行き詰まっていたところだったので、そのお誘いに乗らせていただいたというわけです。ですので、正直言って二年前の段階ではシユウ様に特別な感情があったかと言えば無かったと言わざるを得ないわけですが。……どうかしましたか、黙り込んで」

「……なるほど、色々と合点がいったよ。昔からシユウがアンナを助けなくてはならないと繰り返し言っていた理由。自分しか幸せに出来ないという大言壮語の意図。当時は、王子が姫を助けるような御伽噺に憧れているのかと思っていたけど」

「文字通り命の危機だった、ってことか。その発言もシユウの妄言って可能性は別に零じゃないけど、絵本にのめり込むタイプでも、妄想の世界に引きこもるタイプでもなかったし、やっぱり未来を知ってるのはマジってことなのかなぁ」


「……あのさ、ちょっといい?」

「はい、なんでしょうか。分かりにくい箇所でもありましたか?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど。……さっきからの雑な態度だといまいち分からなかったんだけどさ、アンナってシユウのこと結構好きだよね」

「……………………はい?」

シユウ・ヒストル・フルランダムのワンポイント講座


「女子が五人で話してると誰が誰だか分からなくなってくると思うんで、なんとなくどれが誰なのか見分ける方法……聞き分ける方法? を教えたいと思う。


 敬語だったらアンナだ。まあこれは分かり易いな。


 偉そうな口調だったらアディア。まあ分かり易い。


 小さい母音を使うのがハクア。分かり易いかな? 


 気が強そうな口調だったらウェイン。誰かに対してあんたとか言ってたらまあこいつだ。


 男っぽい喋り方がメロデア。これが字で見て一番分かりにくいな。


 まあ正直、誰がどれ喋ってても別に関係ないって感じの内容だから、そんなに気にする必要もないとは思うけどな。……やべえな、あいつらにこんなん聞かれてたら俺ボコボコにされるんじゃねえか?」

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