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穴開ける次期王妃の婚姻譚  作者: 甲光一念
第二章 懇親会編
57/156

57、私は話を進めます

 ウェイン様、メロデア様、フラット様、ハクア様、アディア様、シユウ様。六か国の王族が揃っている中に、半没落国の三流貴族程度でしかない私が混じっているというのは、緊張とか萎縮などを通り越してしまっています。むしろ、これは事態の深刻さを示す指標として考えるべきなのでしょうか。

 七か国の面々を集めなくてはならないほど、早急に対策すべき事態が発生していることの。アディア様はどこから話したものかと悩んでいるらしく、右手でモノクルを触りながら顔を顰めさせています。十五歳らしからぬ渋い表情ですが、見慣れているのか何なのか、誰もそれを特別視している様子はありません。


「……会場の端っこで円陣組まされて、集合掛けた本人が黙るってなんだよ。俺らは今から会場の肉料理を端から全部食っていこうってすげえ盛り上がる話してたところだったんだけど」

「うん。やっぱり暴飲暴食が出来る機会は逃すべきじゃないと思うわけなんだよ。別にロデウロは肉作ってるからって毎日毎日肉ばっか馬鹿みたいに食ってるわけじゃないんだぜ?」

「シユウ様、一旦お黙りくださいませ。暴飲暴食でしたら後で私が倒れるまで付き合いますので、今はアディア様の話を」

「え、まじ? 悪いフラット。お前より優先すべき約束が出来た」

「あー、やっぱ友情は色恋に勝てねえのか。まあ、しょうがねえな。胃袋破れろ」

「捨て台詞怖っ」

「おい馬鹿コンビ。そろそろ黙らないと能力使って気絶させるぞ」

「ウェインがアディアの肩持ってる! これは歴史に残るよ!」

「なぜハクア様まで騒いでしまうのですか。これでは馬鹿トリオになってしまいます」


 収拾がつかないといいますか、静かにすることができない方々といいますか、あるいは、仲がいいと言うべきなのか。年齢にそこまで幅があるわけではないとはいえ、ここまで気を使わない関係性を築けているのもなかなか凄いことだと思うわけです。幼い頃から度々会っているからこそなのでしょう。

 だからこそ、シーツァリアの七か国内での省かれように多少の悲しさを感じないわけでもないわけで。初対面の私と普通に接してくれるような度量の広い方々と一切の関わりを持たずに生きていている第一王子にもうなんと言うか、何も言えないと言いますか。そういえば、なんだか姿が見えませんわね。というか、この会場に来てから声の一つでも聞いたでしょうか。


「……よし、話す内容が纏まった。黙っていて悪かったな」

「別に構わないけれど、アディアがそこまで考えてから話すのは珍しいな。いつも感情に任せて話をしているような印象があるけど」

「なんだ、私の講演会にでも参加していたのか?」

「三回ほど。幸い、潜り込んでも騒ぎにならない体質だから」

「『防衛的忘却』か。相手方が会ったと認識しなければ、過去に関わりがあっても記憶が思い出されることはないんだったな。私もたった今思い出したよ。今回も連絡できなくてすまなかった」

「仕方ないさ。もう慣れたことだ」

「慣れられるのも困る話だがな。……考えて話しているのには理由がある。まず、我がなぜそう考えたのかをどう説明すべきか悩んだからだ」

「……宗教が発足しかけている、という判断を下した経緯ですか」


 アディア様からの目配せを受けて私が発言すると、場の空気が一瞬で張り詰めます。私とウェイン様は少し早く聞いていたので元から緊張気味でしたが、他四人は今までの緩い雰囲気を引っ込め、各々困惑した表情を見せています。歴史を遡っても、宗教が発足したという例は二百年前が最後であり、それだって大した資料が残っていないのです。

 七か国の取り決めによって定められている罪には上から七つの重罪があります。殺人、背反、宗教、漏洩、脅迫、窃盗、詐欺。重さ、という観点から宗教は三番目に位置してこそいますが、実際一番面倒なのは宗教だというのは全員が理解するところでしょう。他の六つが付随してくる可能性が十二分にあるのですから。


「……プレントとハージセッテの揉め事から、どうしたらそんな結論になるわけ? 確かにうちに送られてきた申立書は腹立たしい書き方してあったけど、別に宗教的ってわけじゃなかった」

「具体的な目的は不明だ。だがあの申立書は、輸入に関係している立場の男が、個人の判断で勝手に送ったものだと判明した」

「……は?」

「本来、他国に対し何かしらの申請や苦情を送る場合、王族二人以上の同意を経た上で、正式な使いを送り出すという手順が不可欠だ。だが今回の件において、そういった同意をした者は王族内に一人もいなかった。我がその違和感を具体的に調査し始めたのは全てが終わった後だった。……もっと早く、気付けたはずだった」

「……その男は、いつの間にか潜り込んでいた、ということですか?」

「いや、四世代前から城に仕えていてくれた家系の男だ。唯一の幸いは、男には妻も子もいなかったという点だな。もしいたなら、面倒なことになっていただろう」

「……では、突如心変わりしたということになるのでしょうか。忠誠も恩義も、歴史も過去も忘れ、ぽっと出の宗教に心を奪われたと」

「そこも詳細は不明だ。ただ、ろくでもない事を考えていたのは事実だろう。我とウェインの不仲は奴も知っていた。そこを利用しようとしたのか、あるいはなんの問題も無い所に、新しく罅を入れようとしたのか。実際、話し合いの場に来たプレントの人間は、かなり不機嫌そうだった。そんな人間を話し合いの場に寄越すなと言いたいところだが」

「うっさいわね。それに関してはパパが後でお説教してたわよ。もう二度とそういう舞台にあいつらが出ていくことはないわ」

「そうか、安心した。お前が話し合いの場に出てくることももう無いというわけだ」

「私の話はしてないわよ! そういう態度になるだろうと思ったから話し合いの場に私は行かなかったでしょうが!」

「冗談だ。むしろ、次期王妃がそういう場に出なくてどうするとは思うがな」

「今回の件は……、特別よ。……それで? 何で宗教だと思ったわけ? 現状だと個人の乱心で終わる話になるけど」

「問題の規模からして、当然尋問を行った。具体的に何をしたかは言わないが、その結果としていくつかの情報を得ることが出来た」

「それは……、どのような?」


「『少女のため』。奴はそれしか吐かなかった」

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