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穴開ける次期王妃の婚姻譚  作者: 甲光一念
第二章 懇親会編
53/156

53、私は引き続き国を説明します

 で、少し戻りますが、プレントと強く関わっている国としてハージセッテが上げられます。ハージセッテが担っているのは『植物』です。ええ、まあ、よく分かりませんわよね。実際、私にもよくわかっていません。なにせ、担っているとは言っても役割の一部分でしかないというのが正直なところだからです。

 基本的に万能であるという印象が強いのです。悪く言えば、これと言った特徴がないということでもありますが、かと言って無くなれば七か国にとって深刻なダメージとなることは間違いないでしょう。簡単に言えば科学の国なのです。


 学問をセルムが司っているなら、化学を司っているのはハージセッテなのです。七か国の野菜を生産しているのはプレントであるというのは前述した通りですが、当然、通常の理屈で考えれば不可能です。七か国の人口は合わせて大体七千万人程度。それだけの人数が一生で消費する野菜の量は考えるだけでも膨大です。

 肉や魚に関してもそうです。たとえどれだけその年に豊作だろうが大漁だろうが、一つの国で七つの国の食糧事情など支えられるわけもありません。そこで活躍しているのがハージセッテなのです。本来不可能であるはずの無茶を可能にしている。


 農作物の遺伝子組み換え、家畜の迅速な成長。魚の養殖や、より多くの果実を実らせる木。そういったものを製作しているのがハージセッテの研究所なのです。その成果は各々の国に広められ、実地実験と共に確実に進歩していく。

 特に魚の養殖に関してはここ最近の進歩が目覚ましいそうで、シユウ様も、このままだと漁業に関しての優位性が奪われかねないなととぼやいていました。ロデウロでも養殖に携わればいいのではと言ってみたところ、弱々しく首を左右に振りました。当時の会話。


「それが出来たら多分一番良いんだけどな。ただ兄貴がな。あんまりロデウロでそういう事業を始めるのは反対してるんだよ」

「それは……、どういうお考えで?」

「一つの国に一つの分野の全てを任せるのは偶発的な事態が発生した時に迅速な対応が取れないというリスクを許容しているに等しい。役割を奪う所までは行かなくとも、自国の問題を自国で解決可能な状態に保つ程度の備えは絶対に不可欠だ、って」

「正しいですわね。むしろ私から言わせれば、現状の七か国の体制こそおかしいと思いますもの。助け合うという原則があるせいで足を引っ張っている国を切り捨てることも出来ず、他国に産業を頼り切っているから不平不満を具体的に伝えることも出来ない。既に七か国は正常に回っていないとすら言っていいかと」

「じゃあ変更が可能かって言えば、もう不可能だろ?」

「……ですわね。そこが大きな問題点です」

「今更、自国で消費する肉も魚も野菜も自国内で生産してください、教育のために必要な資料も知識も自国内で用意してください、便利な生活に必要な資源は自国から発掘してください、科学の発展は自国で頑張って研究してください、なんて、無理な段階までとっくに来てる。現状の惰性は、もう取り返しがつかない所まで来てる」

「……特に資源なんて、努力でどうにかなる問題じゃありませんものね」


 そう、材木、石油、鉱石などの資源の七割強を担っているのがハクア様の国、ディレッタ。なぜディレッタの国土からそこまで潤沢な資源が湧いているのかの科学的な理屈などは未だ不明ですが、これに関してだけは頼るしかないというのが現実です。

 他同様、他国でも一切発掘されていないというわけではないのですが、やはり偏りはありますわね。シーツァリアは『軍事』担当なだけあって、鉄などの金属類はある程度自国生産できていますが、結局ある程度の域を出ることはありません。


 私としては、やはりディレッタの一部が山岳地帯であるというのが関わっていると思うのですが、なにせ採掘を繰り返している不安定な山場。深い所の調査など叶うはずもなく、セルムの研究者も手を拱いている状態だと聞きます。不本意でしょうね。


 理解していない方が多いようなので改めて促しましょう。理由が不明な事象はいつ消滅しても不思議ではないのです。これから先の未来のどこでその供給が途切れるのか。そもそもその供給は正当な理屈に則って生産されているものなのか。

 極論、生成の理屈さえ判明すれば他国でも同程度の生産が可能になるかもしれないという可能性だってあるわけで、調査が一向に進まないというのはそれだけ時間を無為に捨てているということと同義です。当たり前の今日は、当たり前の明日には何の繋がりも無いということ。

 誰もがその事実から目を逸らし、今日が昨日と同じならばそれでいいと思考を停止させる。明日、ディレッタの資源が枯渇したら、などとは誰も考えていない。だからこそ、七か国の現体制には誰かが異議を申す必要がある。


「それが叶わないのが私の国の所為だというのだから嫌になる話ですわ……」

「七か国で一番、シーツァリアの国民が明日の生活に不安を感じてるだろうにな。七か国の王族の全会一致がなきゃ、まともに行動も起こせないってんだから、いやはやまったく」

「シーツァリアが軍事を一手に引き受けているというのが事態をさらに面倒にしているというのが救えないお話ですわね。いっそのこと、実験に失敗して城がまるごと灰になってしまえば楽なのですが」

「確かにそりゃ楽だな。その後の面倒さえ考えなければ、だけど」


 そして最後、ユリーシクの役割は『機械』です。『軍事』と重なる所があると感じるかもしれませんが実態は全くの別物。無益な研究をしているのがシーツァリアであるならば、対である有益な研究を行っているのがユリーシクなのです。

 私がシユウ様から頂いた携帯も、私の部屋にあるテレビや冷蔵庫も、我が家にある車も、生活において必要とされる機械類のほぼ百パーセントがユリーシクで生産されたものなのです。キッチンで使っているコンロも、どの家にだってあるエアコンだってそうです。一つの例外もありません。


 七か国で唯一、工場内の生産ラインが完全機械化されている国なのです。他の六か国の全てにユリーシク内の会社の支社があり、機械類が故障した際は迅速に修理するという魅力的なサービスまであります。ですからまあ、これもまた頼り切りというわけですわね。


 つまり、ディレッタで発掘された鉄鋼石などを、セルムの知識を以て製鉄した後、ユリーシクで生活必需品へと加工する。と、こういう流れですわね。その為には、ハージセッテで研究された植物を、プレントが野菜へと育て、ロデウロの肉や魚と共に食卓に並べるといった栄養補給も欠かせないわけです。

 七か国のサイクルはこういう形で回っているわけですわね。細かなところなどは各国で補い合ってはいるものの、どう考えても不必要な国が一つあるというのは違和感の塊でしかないわけでして。人口が年々減少している理由もわかっていただけたかと思います。


 以上、番外補足編、終わりです。

シユウ・ヒストル・フルランダムのワンポイント講座


「再び! ややこしくなったのでここで一回纏めてみようのコーナー!


 シーツァリアは『軍事』。


 ロデウロは『肉、魚』。


 ユリーシクは『機械』。


 ディレッタは『資源』。


 セルムは『教育』。


 プレントは『野菜』。


 ハージセッテは『植物』。


 ……うちだけ二つあるのなんか特別感あるよな」

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