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穴開ける次期王妃の婚姻譚  作者: 甲光一念
第二章 懇親会編
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52、私は国を説明します

 シーツァリア、ロデウロ、ユリーシク、ディレッタ、セルム、プレント、ハージセッテの七か国は、それぞれ別の役割を担っています。以前、七か国は巨大な一つの国だと形容しましたが、それは決して比喩ではありません。文字通り、巨大な一つの国として七か国は存在しているのです。


 私達が今いるここ、シーツァリアの役割は『軍事』です。愚か者が王を継ぐ前までは食品の加工と軍事が半々程度だったそうですが、今となっては前者は見る影もなく。自国他国で生産された食品を加工して輸出するという役割は、それらの職人が国を移った段階で各国に散り散りになりました。

 結果、役割が軍事に集中してしまうというあまり穏やかではない話になってしまったわけですが、それが一概に悪いことだったかと言われると簡単に首を縦に振れないのが辛いところでして。それによって科学産業が結構な勢いで進歩してしまったのです。増長することになった一因ですわね。


 まあ、無くても困らないレベルの話ではあるのですが、あれば便利みたいな技術はこの世に溢れています。それを積極的に産み出しているのがシーツァリアというだけの話で。だからこそ、七か国の中で唯一、無くなっても困らない国なのです。あれば便利だけど無ければ無いで別に構わないのがシーツァリア。

 言ってて悲しくなってきましたが、実際、他の国は一つでも欠けると機能不全に陥る可能性があるのです。順に並べていきましょうか。そうですわね、近いところから紹介すべきなのでしょうが、無くなると困るという点から、まずはセルムとプレントについてからにしましょうか。


 セルムはフラット様からは連想しにくいかもしれませんが、『教育』を担っています。教科書や辞書、様々な一般的学問の研究を行っているので、七か国の教育水準は実質セルム頼りになっています。というのも、元々セルムくらいだったらしいのです。教育というものの重要性を理解していた国が。

 七か国の取り決めが完成した当初、学ぶことによって何かを起こすということを理解している国は、まあハージセッテくらいだったらしく、それならば教育に関しては任せろというやり取りがあったらしいのです。数百年前の話なので実際のやり取りは分かりませんが、そういう記述が残っているのです。


 今となっては七か国それぞれで教育の重要性は浸透していますが、それにしてもセルムは今もなお、その分野において他の追随を許さない独走状態。学問について深く学びたいならばセルムに留学しろというのは常識となっているほどに。だからこそフラット様の奇行は噂になっているのでしょうね。


 プレントに関しては今さらという感じがしますが、『野菜』です。ええ、本当に野菜だけです。というのもまあ、プレントの土地は本当に野菜がよく育つのです。他国の野菜など比べ物にならないほどに健康に、そして美味に。一応どの国でも野菜を少なからず生産してはいますが、食べるまでもなくその差は歴然。

 だからこそ、七か国の野菜の生産は九割がプレントに頼りきりなのです。国土の実に五割が畑という恐るべき国家。それが関係あるのか、七か国の中で一番犯罪率の低い国でもあります。穏やかな気持ちになりたければプレントに旅行に行けと言われています。一度行ってみたいですわね。


 しかしその反面、それ以外の食品が驚くほどに育たないのです。土地が良くないのでしょうかね、家畜は食用にならないほど硬い肉に、海に面しているわけでもないので魚は獲れず。国内の湖、コト湖には魚は生息していますが、吐き出すほど生臭いそうです。

 ある意味、プレントの王女であるウェイン様が野菜好きになるのも仕方ないことだったのかもしれません。不味い動物と美味い野菜だったら誰だって後者を選びますもの。ちなみに私はお肉大好きですわね。鶏肉が最高です。その鶏もまた輸入物ではあります。プレントと真逆の国。


 そう、シユウ様の故国であるロデウロは、『肉と魚』を担っているのです。国境の実に四割が海に面していて、七割の人間が漁師、あるいは家畜産業の関係者という国。まあ、七か国に行き渡らせようと思ったらそのくらいになりますわよね。ええ、野菜と同じく、他の国とは比べ物にならない味です。

 具体的な理由は分かっていませんが、ロデウロは七か国で一番思いやりに溢れた国なのだそうです。肉や魚を扱っていることから、盗みなどの犯罪率はそこまで低くありませんが、罪を犯した者の更生の確率が異様に高く、人情に触れたければロデウロに行けと言われています。


 動物性のものを主食としているからか、身体ががっしりとしている傾向が強く、建築の分野で働いている者が多いそうです。漁師、農家、建築。まあ、なんとなく察しはつくと思いますが、気も声も大きいらしいです。旅行者の感想としてよく見るのは、突然喧嘩が始まったと思ったら、少し経って大声で笑い合いながら居酒屋に入っていったとか。

 厄介ですわあ。物凄く面倒なテンションの代表みたいなやつじゃありませんか。シユウ様が言うには、漁師と建築に携わってる奴等には観光客はあまり関わらない方がいいと思うとのことです。内輪ノリの究極系みたいなものだから、そういうイベントだと思ってスルーしてくれ、と。その時の会話。


「そんな国の第二王子と結婚しなければならないのですか? シーツァリアの現状と比べればましかもしれませんが、そんな不可解な厄介事に付き合えるほど私って元気ではありませんわよ」

「そんなに頻繁にあることだと思われても困るんだよな。港の相当盛んなところに行かないとそんな光景見れないし。街中で喧嘩始まったら普通に警官が仲裁に入るよ」

「観光した側としてはさぞ印象に残ったのでしょうね。まあ、検索してそんな目撃例が何十件も出てくる段階で、既に嫌気は差していますが」

「心が狭いなあ。大体仲直りしてるんだからいいじゃんか別に。国の雰囲気自体は平和なんだからそんなに拒否すんなよ」

「……楽しそうと思えないのですよね」

「……うちに来れば新鮮な鶏肉が食べ放題だぞ」

「ああ、十七歳になるのが楽しみですわ!」

「……もしかして俺今、鶏肉に負けた?」


 唐揚げって美味しいですわよね。白米と合わせたら無限に食べれる気がしますわ。あ、ちなみに白米はプレントが作っています。

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