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穴開ける次期王妃の婚姻譚  作者: 甲光一念
第二章 懇親会編
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49、私は雑談をします

「しかし不思議ねぇ。どうしてアンナみたいに可愛くていい子が、シユウみたいなろくでなしの事信用してるんだか。確かにこいつは良い奴ではあるけど、昔から執務とか勉強とかから逃げ続けてきた不良なんだから。ちょっと親切にされたからって信用しちゃダメダメ」

「確かに気になってはいたな。シユウからアンナ嬢の話聞くたびにさ、どうしてこの二人が良い感じの関係築けてるのか謎だったんだよな。シユウはほら、何て言うのかな。別に悪い奴じゃないんだけど特に目立つところがない地味な奴だろ?」

「急になんだよ。普通に悪口じゃねえか。お前らのキャラが濃すぎるだけだって」

「黙ってろって。そんなシユウの唯一目立つ点……、っていうか、悪目立ちする点って、アンナ嬢のことに関してやたらとうるさいってくらいだろ?」

「そうそう、昔っから本当にこの世にいるのかも分からない女の子の話されてさぁ。ふふふ、一番困ってたのはジエイだったけど、あいつが受け入れてたからこいつも止まらなかったのよね」


「ジエイ様……、どんな方なのですか? シユウ様はお兄様の話は一切聞かせてくれないので」

「ああ、話したくないって気持ちもなんとなくわかるわ。だってあいつ、完璧超人だもん。文武両道で、誠実って言葉がこの世で一番似合う奴。あいつが国王になれば、ロデウロも向こう五十年は安泰だろうね」

「しかも馬鹿みたいに優しいんだよな、あの人。俺も何度お世話になったことか。勉強で分かんない所があるたびに電話とかしてたんだけど、そのうち兄貴に止められた。俺に頼れって。無理だろ」

「俺に頼れって言ったの? フレインが? ふっ、ふふふ。何それ、最高に似合わないんだけど。今度会った時絶対にそのネタで弄るわ」

「やめろ! 俺が言ったってバレるだろうが!」

「私に話したあんたが悪い。そんな面白いネタ本人に言うなって方が無理でしょ」


「分かった。じゃあ他のネタを提供するからやめろ。それでどうだ?」

「……その他のネタとやらのクオリティによるかな」

「うーん……、どれにするか……。どれならいける……? あ、いいものがあった。本当は俺がこれを使う予定だったんだけど仕方ないからお前にやるよ」

「なに、動画? ……あー、これか。なーるほどなるほど。いいじゃん?」

「ん? は!? フラットお前! これ! なんてもん持ってきやがんだお前!」

「これは……、シユウ様と、誰ですか?」

「プレント第一王女のウェイン。名前くらいは知ってるだろ? こいつは小さい頃から今まで変わることなく王族で一番の我儘娘だ。そんなあいつが唯一泣くほど喧嘩したことがある。六年前、あいつがまだ七歳だった頃だな。シユウとマジ喧嘩したんだ」

「またですか……、ハクア様とも喧嘩したと仰っていませんでしたか?」

「いや、うん。諸々の事情と言うか……、面倒なあいつを振り払うにはそれくらいするしかなかったというか……」

「隠さなくてもいいじゃんか。どうせウェインが来たら全員から弄られることになるんだし。俺もそのつもりでこの動画持ってきたわけだしな」

「アディアと揉めてるところにそんな動画出したらまじで殺されるぞお前……」

「だからハクアに譲るんだよ。こいつなら殺される前に逃げられる。アンナ嬢、この動画はな、ウェインがシユウに結婚してくれって駄々捏ねたときの恥ずかしい映像なんだ」


「すみません、情報量が多すぎて上手く頭の中で処理できないのですが、えっと。六年前にシユウ様がウェイン様に求婚されて、それを断ったと?」

「そうそう。ぶっちゃけ今でもそれを狙ってる雰囲気はあるんだけどな。ただ知っての通り? シユウはどっかのご令嬢に夢中で他の女なんて眼中にないし? いやー、あんときはなだめんの大変だったなー」

「はあ……、まったくシユウ様は……」


「どういう反応すんだろ。やっぱここは嫉妬か?」

「いやぁ、呆れるんじゃない? シユウのそういうところは理解してるっぽいし」


「なぜ断ったのですか? ロデウロとプレントが接近するいい機会だったでしょうに。大体、第一王女からの求婚を断って国と国の関係に亀裂が入るかもとは思わなかったのですか?」


「おっとぉ? これはまさかの説教?」

「いや、まさかすぎねえか?」


「いやいや、そこで受けてたら俺達今頃赤の他人だよ? そもそも、あいつが俺にそんなこと言って来てんのは俺が扱いやすいからとかそんな理由だぜ? 俺はあいつが好きじゃないし、あいつも別に俺のことが好きなわけじゃないの。俺はそんな結婚は御免だし、アンナだってそんな世界想像したら少し悲しくなったりしない?」

「いえ、まったく」

「そこは嘘でもいいから肯定してくんねえかなあ!? 泣くぞ俺は!」


「うん、仲が良いのだけは伝わってきたな」

「確かに。で、そんなフラットはどうなの? 真剣に結婚したいって思えるような相手は見つかった? 手当たり次第口説きまわってるなんて、あんま良い噂じゃないんだからさ。見つけようと思って見つかるもんじゃないのは分かってるけど、そろそろ落ち着いた方がいいんじゃないかなって思うわけよ」

「見つかんないなあ。いや、別に今まで話してきた女の子達が駄目ってわけじゃないんだけど、多分俺の顔とか立場とかしか見てないんだろうなって思っちゃうんだよ。それは、嫌だなって……、我儘かね?」

「我儘じゃないんじゃない? できることならシユウみたいな恋をしたいって気持ちは分かる」

「いや、あいつは分からん。あいつのあれはマジで昔から謎過ぎる」

「見つかるといいね。王族のフラットじゃなくて、ただのフラットを好きになってくれる女の子が」

「……見つかる気がしねえな」


「ああもう! いいんだよそんなことは! ウェインがどんな面倒臭いことをしてくるかは今はどうでもいいんだ! 問題は、これからここに来るウェインとアディアが絶対に喧嘩するだろうから、それをどう止めるかなんだよ!」

「ああ、こないだのクレームの件か? 確かにこのままウェインが黙ってるってことはないだろうな。アディアに土下座くらいなら要求してもおかしくない」

「ここぞとばかりに責めるでしょうね。いつも言いくるめられてばっかりだから、正当性の主張がきっと鬱陶しいわよ」

「……でも、俺らじゃ無理じゃね? あの二人止めてんのっていつも誰の役割だったっけ……?」


 フラット様のその言葉に、私の頭のどこかが刺激されました。なんでしょうか、この気持ち悪さは。漠然としているというか、何も忘れていないのに何かを忘れている気がするという感じは。この三人が知らないことを私が知っているわけがないはずなのに。

 その気持ち悪さはどうやら私だけが感じているものではないようで、お三方もなにやら不可解な顔でお互いを見ていました。そう、そういえば、まだ話題に出ていない国が一つありましたわね。ユリーシクから参加する王族は、確か。


「ふむ、やはり覚えていないか。残念で仕方ない。今回くらいは誰か一人でも覚えていてくれると思っていたのだが。自己責任といえば自己責任なのだけれど、この寂しさは、何度経験しても慣れないな」


 背後から響いた凛とした声に、目の前の三名が目を見開きました。

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