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穴開ける次期王妃の婚姻譚  作者: 甲光一念
第二章 懇親会編
42/156

42、私は誘います

「参加する王族に関してはこんなもんかな。あんまり気は進まないだろうけど、顔くらいは合わせといて損ないと思う。性格に若干の難はあれど、基本的にどいつもこいつも優秀だからな」

「では、優秀ではないのは私の目の前にいる方だけですか……」

「俺だって世間的に見れば優秀だし、俺以上に有能じゃないのがこの国にはいるだろ」

「分かっていますよ。無能な王族が他国に留学するわけありませんもの。ああ、留学といえば以前から気になっていたのですが、シユウ様はいつまでこの国にいるおつもりですの?」

「なんか、すごいいつ出ていくんだよみたいな聞き方だな。もうちょい柔らかい言葉あったろ。そんなに俺に出ていってほしいか」

「そんなことは。私、遠距離恋愛は嫌いですの。もしそんなことになったらここの縁はそれまでですわ」

「なんかさらに怖いこと言ってないか? ……いつまでか、うーん。一応、日数的に言えば一年の十分の一はロデウロにいるし、俺がいなくても問題ないからいつまでもいれるっちゃあいれる。ま、最低でも十七歳まではいるつもりではあるな」


 関係の無い話をしてお茶を濁してはいますが、このままでは解散になってもおかしくない流れですわね。私は個人的には、どれだけ気安い相手でもお互い無言は気まずいと感じる性格なのです。これ以上話すことが無いなら帰りましょうよと思ってしまいます。

 ビジネスライクな付き合いという考えが根底にあるせいか、あるいは、私にとって一番気楽な場所が自室だからなのか。前者の場合、責任は教育係の方々にありますが、後者の場合はただ私がインドアな人間というだけで終わってしまうのでなるべく前者であってほしい所です。


 シユウ様が指を折って何かを数えていますが、それがなんなのかを考えられるほど頭に余裕がないのが現状です。そもそも談話室の直前まで内心余裕だと考えていたので、どういう言葉で誘うなどは完全にノープランでした。どういう言葉で誘うとはいったいどういう意味でしょうか。

 なんだか考えが支離滅裂になってきたような気がしますが、良い考えが思い浮かぶならば脳みそをいくらでも引っ掻き回してください。シユウ様の指が帰るまでのカウントダウンをしているように感じられてストレスここに極まれりといった感じです。


 具体的な行き先も一切決まっていません。リーデアとグースが連絡を取ってどうにかするということしか聞かされていませんし、そもそもそれだって本当に成功するかどうか。城の方々ってどうにも粘着質なのですよね。城に隕石でも落ちないでしょうか。そうすれば全部平和なのですけれど。


「……なんか悩み事か?」

「え? 何故ですの?」

「いや、見たことないくらい真顔だったから。大体いつも笑ってるのに変だなって」

「……私、いつもそんなに笑ってます?」

「……そう聞き返されると自信なくなってきたな。いやまあ、ニコニコとは言えないまでも口元だけ笑ってることは多かったはず」

「私の口元をそんなに注視しないでいただけますか? 変態の汚名を着せて公衆の面前で引きずり回しますわよ」

「ああ、今の感じはいつものアンナっぽいな。今日の罵倒はなんか棘が少ないなって思ってたんだよ」


 普段そんなに刺々しい罵倒をしていたという自覚はありませんが、概ねシユウ様の言動が原因なので謝りはしません。というかまあ、本人に言わなければ意味はありませんが私の罵倒は質の悪い照れ隠しなのです。褒められたり見られたりすることに慣れていない私の、方向性を間違った照れ隠し。

 言葉の端々に大して恥ずかしがる様子もないまま誉め言葉を混ぜてきたり、私のことをよく観察していることが分かる言葉を挟んできたりするので、つい恥ずかしくなって罵倒で返してしまう。完全に間違っているのは理解しているのですが、じゃあ何か気の利いた返しができるかと言えば無理なのです。


 こういうのを何て言うのでしたか。ツンデレでしたっけ。素直になれないからつい照れ隠しで自分の意思と反した行動を取ってしまう、みたいな。それを名乗るには、私のこれは余りにもデレが少ないのですよね。基本的に隠すことが前提の関係なので、好意に好意を返す方法が極端に少ない。

 腕に抱きついてのデートみたいなものだって、夢のまた夢という感じです。いや、別に私がそういうことをしたいというわけではありませんよ。よく話に聞いたりするシチュエーションがそんな感じだったりするじゃないですか。だから例にそれを挙げてみたというだけの話です。


 とはいえ、私のこの胸部では抱きついても喜んではもらえないような気がします。理不尽ですわよね。毎日豆乳を飲んだりしているのですが、なぜ実らないのでしょう。いや、今の実るは努力がの話であって、胸がという話ではありません。そんなくだらないことを私は言いません。

 デート、デートですか。言い方が良くないのです。デートなどと性的な呼び方をするからそれに緊張が混じるわけで、単純に友人と遊びに行くのだと考えれば何も緊張することなどありません。そう、これには邪な考えなど一切ないのです。友達と遊びに行くだけ。友達と遊びに行くだけ。


「……あの、シユウ様」

「ん? 怖い顔してどうした? 俺なんかした?」

「いえ……、あの、懇親会が終わったら、どこかに遊びに行きませんか? そういえば近頃学園の外で会っていないなと思ったというか、ただそれだけなのですが」

「お、いいじゃん。そういえば最近は談話室で話してばっかりだったもんな。どこ行きたいとかあるの?」

「……いえ、特には。えっと、一緒に決めようかと思いまして」

「なるほど。うーん、なんか食べたいとかあるか? どっか行きたいとか、買い物したいとか」

「……はあ」

「え、何で溜め息? 俺なんかした?」


 なんというか、ここまであっさり受け入れられて、こうも乗り気でテンションを上げてこられると、緊張していた自分が悲しくなってきますわね。シユウ様の認識的に、これはデートなのか、あるいは視察の一貫なのかは分かりませんが、私の誘いを迷惑だと思っていないことだけは事実なのでしょう。

 ああ、まったく。それだけのことに嬉しいと思ってしまうとは、私もなかなかに愚かですわね。

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