表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
穴開ける次期王妃の婚姻譚  作者: 甲光一念
第一章 出会い編
30/156

30、私は察します

「……はあ。誰から聞きましたの? とは言っても、それを知っている者はかなり限られているので、私だけでも何となく予想は出来ますが」

「じゃあ私が情報源を漏らすわけがないのも予想できてるよね。でもまあ、余計な疑心暗鬼でストレス抱えさせるのも悪いからちょっとだけ教えると、貴女の屋敷の使用人ではないよ。別にアンナ嬢の部屋にカメラ仕掛けてるってわけでもない」

「さて、どこまで信用できるのやら。その言葉が本当だと、情報を貴女に漏らした人物に見当がつかなくなりますわ。見も知らぬ誰かを警戒するより、私としては使用人を警戒した方が気が楽なのですが」

「そう言われてもねえ。私は本当の事しか言ってないよ。この場で必要以上に警戒されても私に何の得もないし、これから先の関係を考えても隠し事は極力無しで行きたいところだし?」

「やはり脅しですわね。これから先の関係など考慮する必要はありません。今日この場で永遠に絶縁ですわ」

「落ち着いてって。この情報は脅すためでも撒くために握ったわけでもないんだから。むしろ逆。私は貴方達に協力するためにこの話をした。最初に言ったでしょ?」


 確かに言ってはいましたが、この件に関する協力だとはとても信じられませんわね。そもそも機関の一員である以上、彼女はどちらかと言えば私の不貞を取り締まる側のはずです。今まで機関が時間と人員を割いて保とうとしてきたものを、私は崩そうとしているのですから、協力などありえない話のはず。

 ですが、私を謀ろうとしているのなら先ほどまでの話は今の私に警戒心を抱かせるだけで、メリットなど何一つ見込めないものであることも事実。しかし立場と発言の食い違いを無視することもできませんし、かといってここで立ち去っても私の立場では不利にしかなりません。追い詰められていますわね。


「……協力して、貴女にどのような見返りがあるのですか? 見返りなどいらない、などと寝ぼけたことを口にするようならば、この話はここで終わりです。貴女がリスクとメリットの天秤を常に抱えているのは知っています」

「綺麗事は時として信用を得られないって感じだね。そして私はアンナ嬢に結構理解されてるらしい。嬉しいような悔しいようなだけど、今回は良いこととして捉えておこうかな」

「御託は結構。簡潔に述べてください」

「見返りは望んでる。しかもこれは機関としてのものじゃなくて私個人の欲望だ。アンナ嬢には一刻も早くシユウ様と結婚してこの国を終わらせてほしい。それだけだよ」


 この国を終わらせてほしいとは、なんとも壮大な話になってきましたわね。しかも今までの会話と完全に矛盾していますわ。それを阻止するために彼女だってこの学園に通っているはずですのに。機関が時間と人員を割いてきたことを終わらせたがっているのは、機関への背任なのでは。


「貴女の目的と機関の目的が完全に相反していますわね。長期に渡って取り組んできたことを何故終わらせようと?」

「無駄だから」

「無駄?」

「三十年掛けてこれじゃあ、何年掛けても望む結果は得られないよ。ここから先、あの王子が急に改心して国民から愛される王になる可能性がどれだけあると思う? 根本的にそこが望み薄なのに、先伸ばししたって誰も得しない。だったらさっさと終わらせて早めに解決に取りかかった方がいいに決まってる」

「それは貴女だけの思想ですか? それともシーツァリアに潜入している機関の方々の総意ですか?」

「総意じゃない。そんな確認するだけで裏切りだよ。でも内心じゃ絶対に皆そう思ってる。いや、思ってなくてもいい。これまでシーツァリアを長持ちさせるためにどれだけの人員が導入されて、どれだけの資金が浪費されたか分かる? 私には分からない。それがどれだけ異常なことかなんて、十歳でも分かるよ」

「……なるほど。つまり、時間稼ぎなんて無駄だから機関にそれを止めさせたい、だから私達に協力すると。正気ですの? もしそれを察知されたらどんな目に合うか分かったものではありませんわよ」

「構わない。もし私が処分されても、多かれ少なかれ現状がどれだけ無為なのかに気付く人は出てくる。そうなれば上層部も対処せざるを得ない。再考せざるを得ない。どっちに転んでも私の目的は達成される」


 なんて悲痛な決意でしょうか。十歳の少女が自分の命を懸けてでも訴えなくてはならない問題がこの世にあるのですか。まあそれに関しては私も似たようなものですが、それでもここまで大胆な博打は躊躇ってしまいます。私が自殺を七年後に引き伸ばしていたのも、言ってしまえば命が惜しいからです。

 七か国に対して平等に接しなくてはならない機関が国を潰す企みをしているなど、死罪でだって許されるかどうか。年齢がどれだけ考慮されるのかは知りませんが、彼女が死を覚悟した上で発言しているのは誰が見ても明らかです。私とは比較にすらならないほどの重い覚悟。


「……はあ、ようやく分かりました。貴女に情報を流したのは、シユウ様ですか。今日の夜にでも怒りの電話をしましょうかね」

「え、何で分かったの?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ