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穴開ける次期王妃の婚姻譚  作者: 甲光一念
第一章 出会い編
14/156

14、私は疲れます

アンナ・デルスロ・フォーマットハーフの謝辞


「私の情けない誤字を報告してくださって本当に感謝しております。『時期と次期』の二回目の誤字報告が来たときは自分の頭を疑いました。『危機と聞き』に関してはお父様のミスですので私には関係ありませんわね。なるべく間違わないようにこれからも気を付けていく所存ではございますが、なにせ私はまだ十歳の身ですので平にご容赦を。見付けたら教えてくださいませ。お願いしますわ」

「ただいま、レンカ。貴女こそどうしたの? こんな時間にわざわざ玄関まで出てくるなんて珍しいじゃない。今日は友人を呼んだりしていないの?」

「あら、私だって別に毎日遊び呆けているわけではないのよ。今日は勉強の日。その証拠に、ほら、頭の良さそうな本でしょう?」

「『アンクの精神論に関する分析学』……、ええ、そうね。きっと役に立つ内容だと思うわ。読み終わったら感想を教えてちょうだい」

「勿論! いっぱい聞かせてあげるわ!」


 なるべくなら途中で飽きて、こんな約束忘れてほしいものですわね。そもそもその本、少し前に作者が脱税で捕まって発禁になった本ですし、どこで手に入れてきたのですか。中身は無いに等しいと評判で、私は三ページ目で読むのをやめました。それはもう、読んでるだけで頭の痛くなる文章の羅列で、精神を病みそうでしたわ。

 頭が悪くても人との繋がりを作るのが上手いのですから、そちらだけに注力していてほしいものです。自分に向いていない分野に何故こうも手を出したがるのでしょうね、この子は。いえ、分かってはいるのです、頭が悪いからだと。解決不可能ですわね、これは。


「それで、どうしてわざわざ玄関まで出てきたの? お父様の見送りにでも来たのかしら?」

「お父様の見送り? なぜ? お父様なら今頃執務室でのんびりしているんじゃないの?」

「第二縫製工場で問題が発生したそうよ。その対応に追われて、今しがた慌てて出ていったわ」

「第二縫製工場といえば! あそこの工場長さん凄く優しいのよ! 少し前に友達と遊びに行ったら、美味しいお菓子をたくさん食べさせてくれたの! 今度お姉様も一緒に行きましょう!」


 不正なお金の使い道が少し判明してしまいましたわ。こんな予期せぬ情報はありがた迷惑以外の何者でもないですし、その報告は出来ればお父様にしてください。お父様の頭痛の種が一つ増えると思えば、私の頭も少しは軽くなるというものですわ。まあ、純粋に父親を慕っているこの子にそんなことは言えませんが。

 それにしたって何故、友人を連れて縫製工場などに行くことになるのでしょうか。人付き合いの能力が欠如している私には全く理解ができません。視察に行ったことはありますが、重苦しい雰囲気に負けてしまいました。今思えば、働いている方達に何らかの不満が溜まっていたということだったのでしょうが。


「それで、何でここに? 本を読んでいたのではないの?」

「そういえば今日、アーシャが言ってたのよ。うちのお屋敷が豪華だって。住んでると分からないものね。前に行かせてもらった王子様のお城も、大きかったものね」

「そりゃあ、王族の住む場所だもの。大きくして威厳を示さなくてはならないからね。うちもそうよ、有名な家系は、それに合う家に住まなくてはならないの」

「じゃあ、王子様とお姉様が結婚したらもっと大きなところに住むことになるってことかしら?」


 駄目ですわねこの子。こちらからの質問に答えてくれる気配が微塵もありませんわ。普通同じ質問を三回もされたら答えるものだと思うのですが。自分が質問されているわけではないと思っているのか、なんて白々しいですわね。この子がどういう性格なのかは把握しています。

 レンカはただ単純に、優先順位の一番上が常に自分なのです。自分の気になること、自分の話したいこと、自分のこと、自分のこと、自分のこと。とにかく自分が最優先なのです。それをお父様もお母様も当然のように受け入れるのでレンカもそれが当たり前だと思ってしまっていて、という現状ですわ。


 彼女が友達と言っている子達がどういう思いでこの子を見ているのかは分かりませんが、私が知っている限りでは悪印象は持たれていないはずです。私からすれば鬱陶しいことこの上ないのですが、どうしてか人から異様に好かれるのです。

 別に僻んでいるわけではありません。ひたすらに不思議なのです。身内の贔屓目というのはよく聞きますが、その逆というのはあるのでしょうか。体感的にはあるのですが。しかも話の内容が不快極まりないものですし。感受性が無いのでしょうか。


「これからこの本読むから部屋に戻るね! お姉様も授業から逃げちゃ駄目だよ! また夜ご飯でねー!」

「……オーラ、私はこのやり場の無い感情をどこへ向けたらいいのかしら」

「申し訳ありません。私はその疑問に対しての答えを持ち合わせていないのです。最適解はご自身で見つけてください」

「立場的にそう答えなくてはならないのは分かりますが、少々投げすぎではありませんか?」


 日常的にこんな会話を繰り返していれば鬱にくらいなりますわ。いえ、レンカとのあれは会話ではありませんわね。あの子の長い独り言に付き合わされていると言った方が適切でしょう。なぜあの子が学園で人気者としての地位を確立しているのかが疑問で仕方ありませんわ。

 帰ってきて早々に疲れきってしまいましたわ。できれば、今日はお母様には会いたくないものです。


「ああ、朝出掛ける前に奥様から預かりました伝言をお伝えします。帰ってきたら会いに来るように、とのことです」


 なぜ今言うのです。私を殺そうとしているのですか。

シユウ・ヒストル・フルランダムのワンポイント講座


「アンナの妹、レンカ・デルスロ・フォーマットハーフは微妙な立場だ。その明るい性格ゆえに人気者として扱われてもいるし、人の話を聞かないゆえに異常者としても扱われている。ただ、第一王子の婚約者の妹なので、雑に扱うわけにもいかず、かといって丁寧に扱っても旨みが少ない。簡単に言って、面倒臭い奴なのさ。ヒステリーを起こすことが無いから、今のところは友達がいる普通の奴だ。そう、今のところは、な」

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