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穴開ける次期王妃の婚姻譚  作者: 甲光一念
第三章 ロデウロ編
113/156

113、私は拘束する

「さて、それではヘキレキさんを拘束し終えたので早速行動に移りましょう。先程からクイラさんに完全に頼る空気になっていますが、実際クイラさんの能力はどんなものなのですか?」

「あんまり口外するようなことでもないんだけど、アンナちゃんなら外部に漏らすようなことはないだろうしまあいいかしらね。私はとっても珍しい例外の能力者なのよ」

「……例外。実在することは知っていましたが、まさか同い年に存在するとは思いませんでした」

「まあ突然変異みたいなものだし、存在自体が国ぐるみで隠されてるような異端者ばっかりだからね。私も私以外だと三人くらいしか知らないし」

「三人も知ってるんですか……」


 例外。まあ便宜的には例外系統と呼ばれることもあるけれど、正確な定義としては系統外の能力を指す言葉だ。空間系統、時間系統、移動系統、自己系統、創造系統、破壊系統、固定系統、遠隔系統、精神系統、知覚系統、制限系統、伝達系統、洗脳系統。と、能力の分類は多岐に渡るけれど、それらのいずれにも該当しないと判断される能力を持つ者が極稀に存在する。


 私の『ポケット』は空間系統、シユウ様の『六盾』は創造系統、グースさんの『自意識過剰』は自己系統。基本的には大体の能力が既存の枠組みに割り振られる。この世界の長い歴史の中で増えた分類ゆえに、そこに収まらない能力というのは滅多に現れるものではないが、例外というのはいつだって確かに存在する。


 存在自体が希少なので、今クイラさん本人が言ったように大体は国がその存在を隠すことになる。隠すとは言っても秘匿するわけではなく、能力の研究を行っている所とだけ情報を共有し、新たな分類を作るべきか否かという判断待ちの状態になるということがほとんどらしい。本当に存在が噂というか、眉唾、らしいとかそういう不確定な言葉でしか表現できないのが辛いところだ。


 目で見て例外的だと判断されても、厳密に検査してみたら前例のある能力だった、といった事例はは割と報告されることも多い。それにそもそも、能力なんて全部本来人間には実行不可能な現象の具現化なので、例外的な能力でも本人がそれを自覚するのは難しい。だからこそ、この年齢で自分の能力が例外だと認識しているのは結構なレアケースだろうと思う。


「私の能力はそのものずばり『追跡』。少しでも痕跡が残っている物ならば、私はその大本までたどり着くことが可能なのよ。だからこそ、私はヘキくんの居場所なんて聞かなくたって分かるし、そこの子に洗脳系統の能力を掛けたっていう人物を特定することも可能よ」

「……それは、こういっては何ですが恐ろしい能力ですね。国から制限などはかかっていないのですか?」

「まあむやみやたらに使うなとは言われてるけどね。私個人で何か大それたことが出来るわけじゃないから、特に制限も監視もついてない。悪用なんてする気も無いしね」

「……まあ、ヘキレキの居場所探ってる段階で悪用と言えなくもないけどな」

「いやいや、私がヘキくんの居場所がわかるのは愛の力よ。愛以外には無いわ。私とヘキくんは心で繋がってるから能力なんて使わなくても何処にいるか分かっちゃうのよ。ねえわかる? シユウくんわかる? 能力なんて無粋なものは私達の間に必要無いのよ」

「さっきと言ってること違うじゃねえか。さっきはだからこそって――分かった。悪かったよ。目をぐるぐるさせながら詰め寄るな。怖いから」

「ええそう、納得してくれたならいいのよ。それで? もう探っちゃっていいのかしら? 本当に元凶まで一発で辿りついちゃうけど」

「ああ頼む。正直本当なら朝飯食ってる時間も無いくらいには切羽詰まってるんだ。腹はまじで減ってるけど……、そういえば今日食ったのってセブンスヘブンで食ったよく分からないあのチョコ擬きくらいか……?」

「あれが最後ですか……、胃の中まで虚無なのでは?」

「多分あれ栄養まで個別の要素にしてるような気もするし、まじでそろそろ空腹で気持ち悪くなってくる頃なんだよな」

「えっと、能力使っていいのよね?」

「ああ、すまん。頼む」


「それじゃ、えっと、イブキちゃんだっけ? ごめんね、ちょっとだけ頭触るわね」

「……あの、さっきから私結構聞いちゃいけないことを聞いちゃってる気がするんですけど、無事家に帰れますよね……?」

「他言しなきゃ別に大丈夫よ。特にロデウロの王家は懐が深いもの。私みたいなのを野放しにしてるくらいなんだから心配いらないわ」

「……はい」


 自分が危険人物だという自覚は若干あるらしい。それにしても、誰が使ったかもわからない能力まで逆探知可能とは、味方で良かったと考えるべきか、存在自体が恐ろしいと思うべきか。監視はついていないと言っていたけれど、それが本当なら今すぐ監視を付けるべきだと思う。彼女が洗脳されて組織に取り込まれたら本気で洒落にならない。


「……なあ、アンナ」

「はい、なんでしょうか?」

「あいつって本当に俺様のこと好きだと思うか? もし本当に好きだったらこの状態の俺様を放置するのはおかしいと思うんだよ」

「あらあら、自分のことを好きだと言ってくれていた子が急に構ってくれなくなったらその存在のありがたみを急に自覚した男子みたいなこと言ってますね」

「例えがなげえ」

「というか、そこまで邪険にするのが私からするとよく分かりませんがね。自尊心を満たしてくれるのにぴったりの子でしょうに」

「……本当に、そう見えるか?」

「……さあ」


「……ふむ、なるほどね」

「お、分かったか?」

「うーん……、途中で切れちゃったけど、そこまでは辿れた。……あー、やっぱり」

「ん、地図か? どこ見て――あ?」

「隠れるには、確かにうってつけなんだろうけどね。幽霊屋敷か……、四年生の時に肝試しに行って以来だなあ」


 幽霊屋敷という単語に私は全く聞き覚えは無かったけれど、どうやらヘキレキさんにはあったらしい。右足を私の『ポケット』にしっかり確保されているその顔が明確に歪んだ。

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