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穴開ける次期王妃の婚姻譚  作者: 甲光一念
第三章 ロデウロ編
105/156

105、私は依頼される

「……なるほど、傷一つ無い男が倒れてるのはそういうわけか。取調室で殺人が起きてたらどうしようかと思った。うちの連中血の気多いからとうとうやらかしたのかと。で、……えっと、電話先のあいつは遠隔系統の殺害型って言ってたのか?」

「ええ、当然のことながらデータベースにも記載されていない能力者でしょうね。……どういう原理かは分かりませんが、マレ含めて、ユウ・エゴ・スクリーンオルタは能力者について多くの情報を有していると考えて間違いないでしょう」

「まあその点に関して俺は人のことは言えないけど、確かに不思議ではあるんだよな。行動が効率的すぎる。最低限の手間で最高の結果、みたいな印象があるっていうか。正直非常に鬱陶しい」

「まあ、向こうもシユウ様に似たような感想を抱いているだろうというのは想像に難くありませんが。ちなみにシユウ様は、……えーっと、電話先のあの子と同じ解釈ですか?」

「……いや、少し違うな。あいつの方も意見が割れると思って言い残したのかもしれないけど、制限系統ってことも十分考えられる。むしろ、何かを言おうとして死んだって言うなら、そっちの方が解釈的には自然だ。……ロデウロ内に潜入してた機関のメンバーが組織の連中に襲撃されたかもしれないっていうのは、いつ聞いたんだ?」

「セブンスヘブンで電話のために車両の外に出た時に聞きました。それがあり得るなら、一度狙われている私はロデウロ国内でも狙われる危険性があるかもしれないという注意喚起だったのでしょう」

「……ちなみに、なんでそれを俺に教えてくれなかったの?」

「言うなと言われまして。秘密裏に送りこんでいたわけですし、大事にするのも何かと面倒だっと思ったのでしょう。そもそもその後色々あって、その話をしようとしてもそんなタイミングありませんでしたし」

「それは確かにそうか。んー……、兄貴、この人どういう状況で捕まったんだ? 移動系統の能力持ってたんなら、そんな簡単な話じゃなかっただろ?」

「……捕まえた、というよりは、捕まった、という方が正しいだろうね。例に漏れず店から商品を持ち出してから、逃げもせずにそのまま店外で待機してたらしい。ご丁寧に、うちの部隊が駆けつけてからは自分から手首を差し出す親切っぷりさ。手錠を掛けられてからも大して反応を見せず、ここに連れてくるまで口を開くことすらなかった」

「そうなると、制限系統の能力であるという可能性の方が強くなってきますね。ある程度行動の自由度を奪うことが可能という点においては、そちらの方が都合もいいでしょうし」

「自分から捕まったってことは、それには何かしらの意味があったはずだ。そうしなくちゃいけない理由か、あるいはそうすることによって生じる何かしらの利益か。ただ単純にこっちに情報を渡すための行動なわけないしな」

「こちら側にある程度の情報を流すことで組織に利益が生じるというのは、少々想像がつかない話ですね。むしろ、偽の情報を流すことでこちら側に不利益をもたらすのが狙いだったのでは?」

「その可能性も無いわけじゃないけど、その為だけにわざわざ他国に潜入してた機関の人間使い潰すかってところに微妙に気持ち悪さがある。……そりゃあ、意味ありげなだけで何の意味もないってことも視野に入れなくちゃいけないだろうけど、それだけのために払う労力としては吊り合ってない気がするんだよな」

「……二人共、いくらでも想像の余地があることを話し合っても結論は出ない。今すべきは別のことだ」

「別のこと、というと、本日こちらに来た本題ということですか?」

「ああ。昨日ある程度の現状は伝えたと思うが、今ロデウロ内で好き勝手している窃盗犯は彼だけではない。全員が同じ格好をしていることで、昨日よりも噂はさらに拡大している。シユウが帰ってきたことである程度噂が打ち消しあっている面もあるとはいえ、それだけに終息を期待することは出来ない」

「俺を呼び戻したのにそういう理由もあったのか……、いや、止めろよ」

「さらに、彼、いや、彼らか。リテルとカレッタが組織側に捕らわれているという現状は、すぐに機関にも伝わる。そうなればこの国に機関が来るのも時間の問題だろう。これ以上この事態が大事になるのは避けたいが、電話先の彼女はおそらくすでに機関に報告していると僕は予想する」

「している、でしょうね。機関内に裏切り者がいることが確定しているのが現状とは言え、国家間の問題にまで規模が広がってしまえば話が別です。公になっていない内情にまで配慮して行動を制限することは正しい振る舞いではないというのは、彼女だって理解している」

「ゆえに、機関が介入する前に可能な限り窃盗犯を捕らえたい。全員を捕らえるのは現実的に無理だろうが、アンナ嬢も来てくれたとなれば話は別だ。二人で協力すれば、かなりの人数を捕らえることが出来るだろう」

「はあ!? アンナにまで手伝わす気か!? 俺はそこまで承諾してねえぞ! 却下だ却下!」

「私は別に構いませんよ。むしろ、シユウ様を一人で行動させる方が危険だと感じていたくらいですし」

「……なにその微妙な信用の無さ。俺一人でだって出来るっての」

「私が傍にいた方が頑張ろうと思えるのでは?」

「……それは、まあ、否定は出来ないけど」

「でしたら決まりですね。ジエイ様、ロデウロから私への依頼ということで引き受けても?」

「……ああ、それで構わない」


 正式な依頼という形で引き受けるのならば、私には報酬を要求する正当な権利があるということ。その辺りはジエイ様も承知の上のはず。内心では何を要求されるのかと少し不安かもしれないけど、まあ、ミラの言ったことにも一理はあって、正直言ってこの現状の面倒臭さの一因はジエイ様にあるだろう。そう考えると、これは小さいながらも私達の連休を邪魔したことへの復讐と言える。


 要求は何にしようかしら。まあ大それたものを注文する気は特にないし、そうね。美味しい鶏肉料理のお店でも教えてもらおうかしらね。

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