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異世界転生、おっさんニートの成功物語  作者: 佐藤コウキ
第1章、異世界転送
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第6話、ゴールデンおじさん


 俺は近くの百円ストアーに行き、オモチャとか生活雑貨を買いまくった。

 異世界に行って川で砂金を採ることがメインなのだが、それ以外にも日本の商品を売ることができるかどうかを確認したい。

「マーケティングというやつだね」

 ルービックキューブや電車などのオモチャ、それにタオルやブラシ、コップ、スプーンなど生活用品などを買い物かごに入れる。

しかし、何でもそろっているな、百円ストアーは。

 ダイソーで買った物を大きなリュックに入れて背負う。次はハードオフだ。

 ハードオフという店は、中古の家電などを扱っている。あの根暗の旅商人にあげたスマホは、その店で買った。たぶん、使えなくなったというクレームが根暗野郎から来ると思うので、ソーラー発電式の充電器を用意しておくのだ。


 必要と思われるようなものを全て買いそろえてから、アパートに戻ったのは日が沈んだ頃。

 背中にリュック。両手には大きなトートバッグを持って部屋の中央に立つ。商品は満杯だ。後はこれを異世界で売りまくるだけ。

 俺は異世界のことを頭に浮かべる。あのレンガ造りのトルティアの家の前。行きたい、行きたい、俺はトルティアの大きな胸……、じゃなかった、異世界に移動して荒稼ぎしたいのだあ!

 強い意志に連動して目の前が白くなる。

 やった、成功だ。でも、行く場所は一度行ったことがある場所だけなのかな……?

 考えているうちに視界が真っ暗になった。


   *


 気がつくとレンガ作りの家の前。無事に異世界に着いた。

 向こうの山から差しているのは朝日なんだろうな。日本とは半日くらい時差があるのか。

「あなたは誰です?」

 家のそばにはアニメ系アイドル顔のトルティアが立っていた。少女は不審な者を見るような視線を俺に突きつけていた。

「あっ、俺ですよ。前にポーションをプレゼントした男です」

 トルティアは目を丸くする。手に持った桶を地面に置いた。

「そういえば似ているような。でも、以前はもっと……」

 そうか、彼女は若返った俺しか知らないんだよな。

「あのときはポーションを飲んだせいで……、効き目が切れて、すぐに戻っちゃいましたけどね」

 へへへと笑うと、つられて彼女も愛想笑いを浮かべる。どこか残念そうだ。


 とにかく、ということで家の中に招いてくれた。

 客間のテーブルに陶器の茶碗が差し出された。中には紅茶のような色の液体が湯気を立てている。飲んでみると味も紅茶だ。どうやって作っているのだろう。

「この間は、どうもありがとうございました。いきなり消えてしまったので、どうなったかと心配していたんですよ」

 対面に座っているトルティアが深々と頭を下げる。

「いえいえ、どういたしまして。ちょっと訳ありでして……」

 俺も頭を下げた。ついでに彼女の胸の谷間を盗み見る。浴衣のように着物の前を合わせて帯で止めていた。

「おかげさまで長老も命拾いしました」

「長老?」

「私のおじいちゃんです。このヤオジの村を統括していたんです」

 村を統率する長老かあ、ゲーム設定みたいだな。

「体調が回復して良かったですね」

 トルティアは満面の笑みで答える。その笑顔を見てオヤジのピュアハートはキュンと鳴った。

 こんな美少女が俺の彼女だったらいいなあ。ついボンヤリと妄想に入り込みそうになる。

 いやいや、ダメだ。まずはマネーだ。お金さえあれば、いくらでも女は寄ってくる。しっかりしろ、34歳のニート小太りオヤジ。

 自分に厳しい言葉を浴びせて妄想頭を現実に引き戻す。

「弟さんはいますか」

 まずは砂金を手に入れないと。

「トルタですか。外で薪割りでもしていると思いますが……」

 俺が外に出ようとすると、トルティアはここに呼んでくると言って出て行った。

 しばらくすると、

「誰? このオジサン」

 タオルで額の汗を拭きながら少年がやってきた。

「トルタ、あいさつしなさい。この人は回復薬をくれた……ええと……」

 そういえば名乗っていなかった。

「佐藤です、よろしく。前はポーションで若くなっていたけど、これが本当の俺なんだよ」

 軽く頭を下げると少年も頭を下げた。

「サトウさんですか。よろしく」

 愛想のない子供だなあ。この前、砂金を取り上げたことで怒っているのか。

「また、あの砂金が欲しいんだけどな」

 トルタがため息をつく。

「もう無いよ。サトウさんにあげた物で最後。欲しいのなら川に取りに行けば」

 本当に愛想がない。

「砂金の取り方を教えてくれないかなあ。代わりに欲しい物を持っていっていいからさあ」

 トートバッグをトルタの前に差し出した。

 中に入っているゴムボールなどのオモチャを見てトルタの目が光り出す。

「わあー、何これ?」

 けん玉やルービックキューブは少年の心をガッツリと握ったよう。宝箱を発見したように、バッグの中から次々とオモチャを取り出した。

「これで教えてくれるかな?」

 トルタは思い切り何度もうなずく。

「僕が取ってきてあげるよ。それに友達にも頼んでみるけど、みんなにも中の物を渡しちゃっていいかな?」

 了承すると、トルタは外に飛び出していった。彼を追いかけて俺も外に出る。

「どこに行ったかな」

 しばらく探し回ったがトルタの姿はない。村人が俺の姿を見て、いぶかしげな視線を送ってきた。ジーンズにワークシャツ姿など見たことがないのだろう。

「そうだ。川に行ったのか」

 耳を澄まして、水の流れる音を探す。せせらぎの音がする方に向かった。

 それは村の外れにある、けっこう大きな川だった。子供達が10人ほど流れの中に入り、皿のような物で川底の砂をすくっていた。


「トルタくーん!」

 手を振って呼ぶとトルタは作業を止めて腰を伸ばす。

「サトウさん、ちょっと待って。すぐに光る粒をたくさん集めるからさあ」

 そう言うと腰を曲げ、また川底をすくい出す。

 俺は川辺に置いてある布袋を見つけた。近寄って中を覗くと、取ったばかりでぬれている砂金が入っていた。

「この前よりも多いじゃん」

 俺の脳裏に札束が浮かぶ。持ち上げるとズッシリとした重さが感じられる。これだと400万円くらいかなあ。


 砂利の上に座ってしばらく待っていると、子供達が集まってきて、皿の中の砂金を布袋に入れ始めた。

 やがて袋はいっぱいになり、両手で持っても運動不足の俺は筋肉痛になりそう。

「ありがとう。みんな」

 トルティアの家に行き、子供達に百均で買ったオモチャを差し出した。

 この世界では遊具などは見たことがないのだろう。少年達は目を輝かせて争うようにオモチャを持って行った。


 よし、これで砂金の入手経路は確立した。あとは日本に帰ってウハウハだぜえ。

 グヘヘヘヘと歪な笑いを浮かべている俺を見て、何がそんなに楽しいのだろうと首をかしげるトルティア姉弟だった。


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