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異世界転生、おっさんニートの成功物語  作者: 佐藤コウキ
第2章、商売繁盛
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第27話、日本見物


 トルティアを連れて、夕食に行くことにした。

 移動手段は新車で買ったホンダフィット。その上位グレードのフルオプション装備だ。今まで使っていた軽自動車は探偵事務所に無償提供している。

 本当はレクサスなどの高級車を買いたかったが、ペーパードライバーの期間が長いので大柄な車体は苦手だ。


 それで重要なのは、どこに行くべきか。

 俺が生きてきた今まで、高級レストランなどは入ったこともない。お金があるからと見栄を張って、セレブ御用達の施設に入ってもマナーが分からずに大恥をかくだろう。

 結局、近くのマクドナルドに行くことにした。

 トルティアは町に人が多いことに驚いていた。建物は高く、夜でも町は明るい。カルチャーショックを感じているのだろう。

 ビッグマックセットを二つオーダー。俺はフィレオフィッシュが好きなのだが、それはなぜか異様に長く待たされるのでやめておく。

 スイカで決済しているのを、トルティアは興味深そうに見ていた。

 2階に行って隅のテーブルに着く。

 男達がチラチラとこちらをうかがっていた。やはり、トルティアは美人なんだな。

 何であんな可愛い娘が、ダサダサのオヤジと一緒にいるのか納得できないと思っているのだろう。


 トルティアはハンバーガーをおいしそうに食べている。

 ビッグマックは少し食べにくいが俺は気に入っていた。

 そういえば、女の子と一緒に食事をするのは初めてのことではないか。母親とは食卓を共にしているが、若い女性とテーブルを挟み、向かい合わせで食べているのは不思議な気分だった。


 そこを出て夜の横浜をドライブする。

 麻美さんがトイレなどの生活様式を教えてくれていたので、特に不便はなかった。

 高速に乗って横浜ベイブリッジに行く。

 橋の途中には、車を止めて横浜の夜景を見ているカップルがたくさんいる。俺も車を道路の端に止めてトルティアと一緒に横浜港を眺めた。

 初夏の夜、そよ風が暖かい。港の方から小さく聞こえてきたのは船の汽笛かな。

「日本は、とても進んだ世界なんですね」

 横顔を見ると遠くに視線がいっているよう。目を輝かせて、光る繁華街を見ている。

「まあ、そうだね」

 ありきたりの返事しかできない俺は、でくの坊かよ。

「でも、なぜか皆がよそよそしいですね。他の人に関わりたくないような感じで」

「そうかな……」

 そうかもしれない。異世界と比べると、他人に対して無関心のような……。他人に干渉しないということが都会のルールでありマナーなのかなあ……。確かに、他人から執着されても迷惑だけど。

 風が吹いてきた。トルティアの水色のスカートが揺れる。

 チクショウ。絵になる女の子だよな。スマホで撮影したいが、ドン引きされても困るし。……でも、言ってみるか。

「あ、あの、記念に写真を撮っておこうよ」

 おずおずと言うと彼女は元気に首を縦に振った。

 俺は少し離れてスマホをタップ、トルティアの姿をデータに収めた。風に揺れる髪をかき上げるように押さえる笑顔の彼女。家に帰ったら、きちんとパソコンに保存しておかなければ。


「ここは駐停車禁止です。ただちに離れてください」

 スピーカーの声に振り向くと巡回車だった。停車中の車に注意しているのだ。

 橋の欄干でイチャついていたカップル達が慌てて車内に戻っていく。

「じゃあ、行こうか」

 俺達も車に乗りこんで大黒ふ頭に向かった。


 午後11時だが、まだ眠くない。

 異世界を出たのは午前8時頃だったから、体の感覚としては、まだ午前中だ。

 海の上を飛んでいくような高速道路。インターを右折して羽田空港の方に向かう。照明灯の光が次々と車内に差し込んでは、トルティアの起伏を断続的に浮き上がらせた。

 料金所を過ぎ、しばらく走ってから高速を降りた。

 昭和島を通って京浜島に入る。そこは工場や倉庫が多い。

 平日なので道路は空いていた。俺は車を路肩に止める。

 すぐ近くに空港が見え、そこから旅客機が大きな音を立てて離陸していった。

「すごい! あんな大きな物が空を飛んでいくんですね」

 トルティアの横顔は感嘆の表情。飛行機を初めて見れば驚くよな。

「どんな仕組みなんですか」

 そんなきらめく瞳で見られても航空力学はよく知らない。

「うーんと……、鳥が飛ぶのと同じ原理だよ。風に乗って飛ぶのさ」

 そうなんですか、と言って感心したように飛行場を見つめるトルティア。次回まで、よく勉強しておこう。


 京浜島は深夜になると交通規制をするので早めに出なければならない。

 次はお台場にでも行こうと思っていたが、トルティアは少し疲れているようで事務所に帰ることに決めた。


 コンビニで買い物をして、事務所に到着したのは午前2時過ぎ。

 まだ麻美さんが残っていた。

「あら、お帰りなさい。早かったのね、ホテルにでも泊まってくるかと思っていたわ」

 体がカーッと熱くなる。

「そんなわけ無いでしょ」

 熱くなった顔で否定する。チラリとトルティアの方を見たが、彼女は平静だ。そうか、日本語は分からなかったんだ。


 では、後はよろしくと言って麻美さんは車で帰っていった。

 事務所には二人きり。何か話でもしようと思ったが、トルティアは疲れたので寝ますというので俺も自分の部屋に戻ることにした。


 翌日、起きたのは午前10時過ぎ。

 2階の事務所に行くと、麻美さんがいてトルティアが朝食を食べていた。

「お早うございます」

 俺があいさつするとトルティアは笑顔で頭をちょこんと下げる。

「佐藤さんの分も作っておいたわよ」

 麻美さんが指さすテーブルの上を見ると、缶詰の豆ご飯が湯気を立てていた。

「また、軍用食料ですか」

 この事務所では、ミリタリー飯が定番。気分は自衛隊と言うべきか。

「けっこう、おいしいですよ」

 トルティアは気に入っているようだ。異世界でも藤堂さん達と食べていたんだよな。

「まあ、そうですね」

 俺は、いただきますと言ってミリメシを食べ始めた。


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