第1話、おっさんニート
軽く読めるような異世界転生ものを書いてみました
あまり深く考えずに、軽く読んでください。かるーく
多少、残虐なシーンもありますが、そんなに大したことはないです。
R15になっていますが、保険的なもので、中学生が読んで、ドン引くような内容ではありません。
俺は今日も部屋に引きこもってネットゲームをやっていた。
昨夜は2時までゲームをやり、今日は昼前に起きた。顔も洗わずに、母さんが作ってくれた飯を食べて、またゲームをやっている。
敵と戦っているときに、ドアを激しく叩く音がした。
こちらの返事も待たずにドアが開いて兄が怒鳴り込んでくる。
「おいこら! 浩一! いつまで引きこもっているんだよ」
兄の孝が仁王立ちしていた。
「いやあ、そのう……」
ゲームパッドを両手で持ちながら返事をしようとするが、ずっと話していなかったので言葉が出てこない。
「どんだけ甘えていれば気が済むんだよ。34歳にもなって引きこもっていてどうすんだよ。働けよ、そうじゃなかったらこの家を出て行け!」
小柄で小太りの俺と比べて背が高くてスポーツマンの兄だった。
「まあ、そんなにきつく言わなくても……」
兄の後ろにしょんぼりと立っている母さん。
「そうやって甘やかしているから浩一がつけあがるんだよ」
心がざわついて何も考えられない。ダンジョンの奥、HPが少なくなっているときに強敵のモンスターに出くわしたような気分。
「なあ、浩一。おじさんの工場でアルバイトを探しているから、そっちで働いてみないか。いつまでも部屋でゲームばかりやっていられないだろう」
俺はうつむく。あんまり働きたくない、働くのが怖い。
「うーん、でも、もう少しこのまま考えようかなと……」
兄は鬼のような形相になり、俺の首根っこを引っつかむと、階段を降りて玄関に向かい、俺を外に放り出した。唖然として玄関前に尻もちをついている俺。
しばらくして俺の前にカバンが放り出された。中を見ると免許証とか着替えとか俺の私物が入っている。
「浩一、真面目に働けよ。働いてお金を稼げるようになったら帰ってこい」
そう言って兄は家の中に入っていった。
俺はため息をつく。玄関が開いて母さんがこそっと出てきた。
「これを持って行って」
母さんは1万円札を数枚、折りたたんでカバンのポケットに入れてくれた。
「母さん! 余計なことすんなよ」
家の中から兄の声がして、母さんは済まなそうに中に戻っていく。
もう一度大きなため息。ゆっくりと立ち上がって俺はカバンを持ち上げた。
俺は高校を卒業して就職した。
しかし、その会社はブラックで体調を悪くして退職してしまう。それから派遣などをやったが、長続きせずに家に引きこもるようになった。
「どこで道を間違えたんだろう」
俺は昔から怠惰というわけではない。いや逆に真面目で働き者だったはずだ。それなのに誰も俺のことを認めてくれない。誰も分かってくれないのだ。そのうちに気力を失ってしまっていた。
*
家を追い出されてからはネットカフェでの生活。
仕事を探すこともなく将来のことを考えるでもなく、ただゲームをやっていた。
そのうちにお金がなくなる。ネットカフェに行くこともできず夜の公園に行き、ベンチに座ってボンヤリと街灯に照らされた砂場を眺めていた。
「腹が減ったなあ」
しかし、お金がない。
「やあ、兄ちゃん。暇そうやなあ」
見ると浮浪者のオヤジだった。50歳くらいだろうか、灰色で薄汚れた服。
「これ食うか」
差し出されたのはコンビニの弁当。割り箸も付いている。俺は無意識に受け取った。
「廃棄品で消費期限が切れているが、構うことはねえよ」
軽く頭を下げて弁当を食べ始める。
冷たかったが空きっ腹に唐揚げ弁当は旨かった。
食べ終わって気分がホーッとする。
「ありがとう、おじさん。旨かったよ」
「礼には及ばないぜ、その分はちゃんと返してもらうからよお」
「えっ」
オヤジの瞳が妖しく光り、俺に飛びかかってきた。
「何するんだ!」
オヤジが俺のズボンを脱がしにかかる。
「いいじゃねえかよ。親切にされたら礼をするのが社会人のマナーだろうが」
「弁当をもらったらケツを貸すとか、そんなマナーがあるかよ!」
必死に逃げ出そうとするが、オヤジの力は強くて振りほどくことができない。背後に回られてズボンとパンツをズリ下げられてしまう。
「頼む、やめてくれ」
泣きそうな声で哀願するが、オヤジの両手は万力のようにガッシリと俺のケツを固定した。
「誰か助けてくれー!」
叫んでも夜の公園に人影は見当たらない。
ああ、このままヤラれてしまうのか。さようなら今までの俺。明日から俺は別の世界の人間になってしまうのだ……。
不意に母さんの顔が脳裏に浮かぶ。
「ごめんよ、母さん」
急に悲しくなって涙が砂の上に落ちた。
激痛を覚悟して尻の筋肉をギューッと引き締めていた。しかし、侵入してくる気配がない。腰を押さえつけていた手がいつの間にか離れている。
「キャハハハハ、嘘だよー」
ビー玉を転がすような可愛い声。
俺はケツ丸出しのワンワンスタイルで後ろを向く。
オヤジの姿は消えていて、そこには小学生低学年と思われる幼女がフリフリのピンクの服を着て宙に浮かんでいた。