円周率
まぶたを透かし太陽の光が眼球へとつたい脳に直接朝を告げる
「んんーっ」
軽く伸びをして、目を擦りながら重い体を起こすと、愛猫が勢いよく走ってくる。
「にゃ!にゃ!」ダダダダダッ
そのまま私の体へ突進し餌を求める。それもいつもより激しく
「そんなにお腹が空いてたの?それとも少し寝すぎたのかな?」
ふと時計を見ると朝七時土曜の朝にしては早い方だと思う。
「にゃ!!にゃぁぁあああ!!!」
さらに激しく餌をねだる愛猫にたいし疑問をもちながらもそんなに欲しがるんなら、あげないわけにはいかない。
「はいはい、わかりましたよ餌ですね〜ほらっ!どいて!!」
歩くたびに足に噛み付いてこようとする愛猫をひらりとかわし餌をやる。
「水ものじゃったのか?」
昨日たっぷりあげた水も飲んでしまったらしい。
「にゃにゃなにゃなにゃ」ガツガツ
勢いよく餌を頬張る愛猫を見てるとこっちまでお腹が減ってくる。
「わたしもなんか食べよ」
おもむろに台所へ向かい朝食を作る。
両親がいないとかそんな理由もないが、家族で起きる時間が違うためいつも自分で料理をしている。
「まぁこんなもんかな」
作り終えた朝食を居間へと運びテレビをつける。こんな時間ならニュースぐらいしかないが誰も起きてきていない居間はあまりにも無音で寂しすぎるので、テレビでもつけないとあまりに心細い。
〈昨夜、発見された複数の遺体の身元は...〉
テレビから気持ちの良い朝には似合わないニュースが流れる
(最近はこんなのばっかだなぁ)
なんとも愉快にならないニュースを聞き嫌気がさす。
「他の番組に変えるか」
ピッ
〈昨夜発見された一家の遺体は今現在身元が分かっておらず...〉
ピッ
〈日曜も朝からハッスル!!ハッスル大魔王の時間だよー!!!!〉
「日曜アニメか...最近見てないなぁ...?あれ?今日って...」
今日って土曜日じゃないのか?でも、テレビだと日曜って...
「っ!まさか1日丸ごと寝てた!!?」やってしまったやってしまったやってしまったやってしまったやってしまったやってしまったやってしまったやってしまったやってしまったやってしまったやってしまったぁ...
「あぁ大切な休日が...!」
親友を失ったような悲しみが溢れてきた。「ミケ太郎ごめんそんなにお腹をすかしてた理由がわかったよ...」
( あれ?でも、My mother and fatherは?)
ふと、テーブルの上を見るそこには一枚の紙が置かれていた。
〈久美へ
お母さんたちお婆ちゃんが倒れちゃったから実家に帰らないといけないの。だからゴメンねお留守番してて下さいね。絢斗はついてくって言ったけど久美は昨日も忙しかったみたいだし起こすのも悪いからこうゆう形になっちゃったけどシュークリーム買ってきてあげるから許してね
お母さんより〉
お婆ちゃんとは疎遠だけど倒れちゃったからならお見舞い行きたかったなぁ...じゃなくて!
「起こしてくれてもよかったんだよ!!」
電話をかけようとするが繋がらない
「お婆ちゃんそんなに大変なのかなぁ...」
「?」
何件もの留守電が入っているのに気がついた
「なんだろう?」
〈もしもし那珂です。久美?今日学校来なかったけど大丈夫なの?明日はこれるよね待ってるよ〉
〈もしもし那珂です。久美!もう三日たつよどうしたの?家にいってみる?留守電聞いてなくても行くからね〉
〈いえにいない?一応いるならお見舞いいくよ!携帯にも出ないしどうしたの?〉
なんだこれは、電話がかかってきた記憶なんてない
「携帯?そんな電話なんて貰ってたか?」
寝室に戻り携帯を確認するとそこにも何件もの留守電が入っていた
〈久美!今どこにいるの学校にも連絡入れてないみたいだしもう土曜日だよ!!六日だよ!どにいるの?〉
〈久美!久美!!お願いでて!!お願いだから!!!出でよ!!〉
「何これ...」
ふと、留守電の入った日付を見る
(2017.09.16.15時52分)
「えっ」
思わず声が出る。
あたりは静まり返り頭も真っ白になる。日が合わない...それだけはわかる。
居間にテレビの音だけが響く
〈〈遺体の身元が特定されました〉〉
そんなキャスターの声とともに聞き覚えのある苗字と3人の名前が読み上げられた。
どうでしたか?