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47 ニルカルアの右腕


 いやはや、参った。

 虎に偽物呼ばわりされるわ、虎パンチくらうわで、カルミナ王国の王都に着いて早々に起きた出来事は最悪だった。

 確かに、本物の虎から言わせれば「なんでトラ柄って呼ぶんだよ」となるだろう。

 それは否定できないのはむ無しだが、まさか、虎から面と向かって偽物だと言われる日が来るとは思いもしなかった。


『パパニャ~~~』


『あそぶニャ~~』


『ふにゃ~~~~』


 少し落ち込み気味の俺の上に、シロ、クロ、ミケの三匹が乗っかっている。

 とても可愛い奴等だし、今回はこいつ等のお蔭で助かったので、散々遊んでやったのだが、まだまだ物足りないらしい。


『今度はワンワンと遊んでも貰うニャ』


 俺が向けた視線と言葉でレストがギクリとする。

 しかし、もう遅い。三子猫達がワンワンの方へすたこらと向かった。

 どうやら三匹の子猫達は、レストがワンワンである事を理解しているようだ。


 というか、まだワンワンに変身してないけどな。

 ほれ、さっさと、豆柴になれ!

 俺は忙しいのだ。少し子猫達の相手をして遣ってくれ。


 そんな想いでレストを見詰めると、観念したレストは溜息混じりに変身する。


『ワンワンニャ~~』


『あそぶニャ~~~』


『ちち吸うニャ~~』


 三子猫は、渋々豆柴となったレストに群がり、思い思いに遊び始める。

 その光景を心安らぐ気持ちで見詰めながら、途中となっていた話に戻る事にした。


「あの虎って、一体何者だと思うニャ?」


「そんなのエルカ達の仲間としか思えないですよ」


「その通りなの」


「そうですね。マルラとミララの言う通りでしょう」


 俺も三人の言う通りだと思うが、エルカに比べて戦闘力が異常に高い気がする。

 ただ、おつむの方はかなり低いようだが。


「ここはアーニャさんに聞かれてみては如何ですか?」


 ルーラルの考えは解るのだが、あの魔女とはあまり話したくないんだよな。

 これまでも奴に関わって良かった事など、これっぽっちも無かったし......


 しかしながら、気の進まない俺の心情を知った上で、ルーラルは言っているのだろう。

 その事を理解している俺は、まるで子猫の相手をするレストのように、渋々と通話の手鏡を取り出す。


 ここで、手を滑らせた振りして、この手鏡を割ったら連絡しなくても済むかな?


 そんな悪魔の囁きが俺の中で響き渡るが、それを見透かしたような発言が突き刺さる。


「主様、良からぬことは考えない方が良いですよ。確か、アーニャさんがその手鏡に不滅ふめつの魔法を掛けてましたから」


 ちっ、あのロリババア、伊達に歳を食っている訳じゃなさそうだ。

 てか、俺の遣りそうな事などお見通しという訳なんだな......


「いえ、師匠、僕でも分りましたよ」


「ミーシャ、その顔は丸分りなの」


 ぬぐぐ、どうやら俺の行為は、アーニャどころか、ルーラル、マルラ、ミララでも即わかりらしい。


「オン! オン! (あたしも解るのです)」


 三人処か、子猫とじゃれ合っているレストまでが声を上げた。


 うぐっ、どうやら、レストにまで解るのか......


 くそっ! おかしい。そんなに顔に出るタイプじゃないと思うんだが......って、俺は猫顔だぞ? 本当に分かるのか?


 みんなの意見をいぶかしく思いながらも、嫌々ながらアーニャと連絡を取るのだった。







 俺としては嫌々だったのだが、アーニャは急な連絡にもかかわらず、直ぐに応答した。


 くそっ! 気付かなきゃいいのに......


 それも、彼女の顔はまた何か遣らかしたのか? と、言いたげな表情だった。しかし、行き成り何もやってないと弁解するのも変なので、見なかった事にして話を進めた。


『ほ~、トラ耳の娘とな。ふむ、妾は其奴そやつを知っておるぞ』


 斯々然々《かくかくしかじか》と、事の起こりから結末までをアーニャに話すと、どうも彼女はその虎娘を知っているようだった。

 更に、俺が根掘り葉掘り聞かずとも、彼女の方から色々と教えてくれた。


『其奴はグルアダというて、ニルカルアの右腕じゃ。頭は悪いが戦闘能力はピカイチじゃからのう。今回は運が良かったようじゃな』


 まあ、アーニャは俺の変身を知らないから、奴に近寄らない方が良いと思っているようだ。


 というか、俺も出来れば近寄りたくない。


「そのグルアダという虎娘に弱点はないのかニャ?」


 その言葉に、アーニャが黙考し始めると、彼女の膝に上がり込んだミリアが旦那節を唄い始めた。


『ダンニャ~~~! 戻ってくるニャ~~~! 私と子供を作るニャ~~~!』


 ふむ。とっても鬱陶うっとうしい唄だ。

 てか、子供なら間に合ってるんだよ。

 ここに三匹も居るし、他にもごまんと居るからな。


『パパニャ~~~』


『ワンワンねたニャ~~~』


『ワンワンつかれたニャ~~~』


 どうやら、子猫達の相手をしていたレストがお昼寝モードに突入したらしい。

 だったら、三匹とも一緒に寝ればいいのに、なんでこんなに元気なんだ?


『ウニャ~~! パパニャ~~~って! その子猫はなに? まさか、他のメスと作ったの?』


 鏡を覗いた子猫達を見たミリアが発狂し始めた。


「パパニャ~~! オバサンがおこってるニャ~~」


「こわいおばさんニャ~~」


「あんなオバサンになりたくないニャ~~」


『は~~~~ぁ?誰がオバサンだニャ! のこジャリ共、お仕置きするわよ!』


 どうやら、子供達の発した『オバサン』というワードが逆鱗げきりんに触れたようだ。ミリアが発狂し始めた。


『ダンニャ~~~! なんであたしに造ってくれないのニャ!』


 間違いなく誤解なのだが、彼女に弁解する理由も無いし、可哀想だと思いつつも放置する事にした。


「師匠って鬼ですね」


「ミーシャは女誑おんなたらしなの」


「ミリアが少し可哀想になってきました」


 鏡の向こうで、発狂して騒ぎ捲った挙句あげく、最終的に放心状態へと遷移せんいしたミリアを見たマルラ、ミララ、ルーラルが、あたかも俺が悪いかのような視線と共に冷たい言葉を投掛けてくる。


 いや、俺が悪いのか? 何もしてないぞ? なんだなんだ、その視線は!


 何故か、どんどん俺が悪いような気がしてきたのだが、そんな処にアーニャが復帰してきたことで難を逃れたようだ。


『これ、ミリア、大事な話があるんじゃ、少し降りておれ』


 そう言って、アーニャは放心状態のミリアを膝の上から降ろし、彼女が導き出した結論を話し始めた。


『色々と考えたのじゃが、弱点は頭が弱いくらいで、他にこれといった弱点らしきものは無いと思うのじゃ』


 あれだけ考えて出てきた結果がそれか! なんて使えないロリババアだ。


『お主、今、不遜な事を考えておらなんだか?』


 ヤバイ、アーニャの目が吊り上がった。


「何も考えてないニャ。気のせいニャ」


『なら良いが、もしあの言葉を吐いたら、その皮を剥いで玄関マットにするからのう』


 てか、玄関マットにするには少し小さすぎるので止めましょう。

 いやいや、サイズの問題では無いのだ。

 この女、必ず動物愛護協会へ突き出してやる。


『そこでじゃ』


 ん? 話の続きがあるのか?


「そこで、なんニャ?」


 彼女の真剣な表情に押されて、ついついオウム返しで聞いてしまった。

 すると、彼女のは一つ頷いて続きを放し始めた。


『戦えば良いのじゃ。奴は頭が弱いが、根が真面目だったように思う。じゃから、正々堂々と戦って負ければ大人しく引き下がる筈じゃ』


 真剣に聞いた俺が馬鹿だった......


 近寄るなと言ってみたり、戦えと言ってみたり、全く一貫性のない事を言う奴だ。

 それに、戦うという結論は、全く変わっていない。


 俺はがっくりと項垂れ、溜息を吐きながらアーニャに問い掛けた。


「弱点がおつむなのは分かったニャ。奴の攻撃の特徴と得意技とか知ってたら教えてくれニャ」


 戦いが避けられないなら戦うまでだが、せめて相手の情報を知りたかった。

 だから、無駄だと知りつつ聞いてみたのだが、アーニャは思いの外、虎娘グルアダの情報を持っていた。

 もしかしたら、過去に戦った事があるのかも知れない。

 まあ、それを聞くと、また自慢話が延々と続くので、絶対に口にしてはいけない台詞だ。

 ところが空気が読めない者も居たようだ......


「あの~~」


 話が粗方あらかた終わった処で、マルラが鏡を覗き込みながら声を発した。


『如何したのじゃ?』


 その声に、アーニャは嫌な顔一つせずに応じる。


「もしかして、アーニャさんって、そのグルアダという虎娘と戦った事があるのですか?」


 あ、あ、あ、バ、バカ! マルラのバカちん、何を聞いてるんだ!


 俺は念話で口止めしなかった事を後悔しながら、テーブルの上に立て掛けるように置かれた手鏡を覗いてみた。

 すると、案の定、アーニャは良くぞ聞いてくれたと言わんばかりの表情で胸を張っていたのだった。







 あの後、延々と続くアーニャの自慢話にウンザリしながら、俺は子猫達を寝かしつける振りをしながら逃亡した。

 そんな俺の行動に対して、最後まで聞いていたマルラが、話を聞き終わった後に苦言を投掛けてきたが、逆に自業自得だとたしなめた。


 延々と続く長講に付き合わされた疲れに、俺からの無碍むげな扱いが合わさって、マルラはグッタリと沈み込んでいるのだが、そんな彼女にミララは容赦ようしゃなくむちを打つ。


「マルラは愚かなの」


「うぐっ」


 ミララのツッコミに、マルラはただただうなるしかない状態だが、救いの手が差し伸べられる。


「それではマルラが可哀想ですよ。主様もミララも程々にしてくださいね」


 そんな救世主の登場に、マルラは速攻で助け船を出したルーラルへと抱き着く。


「ありがとう。そう言ってくれるのはルーラルだけよ」


 しかし、そんなルーラルも注意は怠らない。


「次からは気を付けましょうね」


「ぁぃ」


 マルラの蚊の鳴くような返事により、ひと段落した処で、ルーラルは俺の方に視線を向けてくる。


「それで如何なさるんですか?」


 如何なさるとは、勿論、あの虎娘の事だろうが、そんな事を尋ねられても答えは、戦うか逃げるかの二者択一だ。


「逃げるのはダメだよニャ?」


 悪手だとは知りつつも、一応は言ってみる。


「弱気なミーシャは詰まらないの」


「師匠なんて虎娘に遣られちゃえばいいのよ」


「逃げきれないと思います」


「ズズズッ」


 ミララからダメ出しを喰らってしまった。

 挙句にマルラはイジケているし、ルーラルは首を横に振りながら愚問だと溢す。

 まあ、涎を垂らして寝ているレストは放置で良いだろう。


「というか、私達が転送したら直ぐに現れると思いますよ」


 恐らく、ルーラルが発したその指摘が正鵠せいこくを得ているだろう。


「ま~、逃げる方法だけ練って、正面から戦うしかないようだニャ」


「正面からですか?」


 俺の言葉にルーラルが首を傾げる。


 そう、アーニャから聞いた話を纏めると、その方が良さそうだと感じたのだ。


「恐らく、策をろうして勝っても、始末しない限りはしつこく追い回される事になるニャ」


「えっ、始末しないの?」


 今度はミララが尋ねてくる。


「始末しても死なないだろうニャ。俺達がそうであるように、奴等も復活すると思うニャ」


 これについては、アーニャから貰った情報では無く、俺が奴から感じ取った印象だ。

 唯の感だが、恐らくは間違っていないだろう。


 それよりも、俺が気になっているのは、戦って得るものが何も無いということだ。

 確かに、ニルカルアは敵かも知れないが、奴やその手下を討てば良いのだろうか?

 もしかして、神器を集めなくても、ニルカルアを倒せばトアラルアはよみがえるのだろうか?

 いや、それならトアラもそう言う筈だ。

 仮に、そうだとしても、ニルカルアを俺達で倒すことが出来るのだろうか?

 そう考えると、使徒同士の戦いも相手を倒すのではなく、何らかの方法で封印するしか無いのではなかろうか。

 しかし、アーニャはそういう話を全くしていなかった。

 そう、彼女は負ければ引き下がると言ったのだ。

 やはり、使徒同士の戦闘は相手を討つ事では無いような気がしてきた。

 といっても、ここで逃げてもしつこく追われるだけだろう。

 仕方ない、今回は戦うしかないようだ。


 俺は葛藤かっとうに心をさぶられながらも、戦闘準備を済ませた仲間とカルミナ王国の王都へと転移するのだった。







 完全装備でカルミナ王国王都の近くへと転移すると、そこには虎娘グルアダが待ち構えて居た。いや、座って良く焼けた肉をボリボリと食っていた。


 どうやら、奴がここに居るという事は、ポイントをセーブする処を見られていたようだな。


 奴は俺達の姿を見ると、綺麗に食べ終わった後の骨を放って立ち上がる。


「やっと来たか。待ちくたびれたぞ」


 いや、誰も待ってろなんて言って無いんだが......


 そんな俺の思いなんて知らない虎娘は、どこからか大剣を取り出して肩の上に置いた。


「じゃ、さっさとやろうぜ」


 なんとも気の早い女だ。早速、戦う気でいるようだ。


「いや、ちょっと待つニャ」


「ん? なんだよ。偽物」


 出来る事なら戦闘を回避したいと思って待ったをかけると、虎娘が訝し気な表情で応じてくる。


 てか、偽物って、何度も何度も言うなよ。バカちん。

 まあいい。それよりも聞きたい事があるんだ。


「どうして俺達を狙うニャ?」


 虎娘は鼻を鳴らし、頭をきながら時間の無駄だと言うような仕草だ。


 どうも、彼女に取っては如何でも良い事であり、愚問なのかもしれない。

 それでも面倒くさそうに口を開く。


「それがニルカルア様の意向だからだよ。じゃ、行くぞ!」


 彼女はそう言うと、一気に踏み出してきた。


 くそっ! どうやら、取り付く島もなさそうだな。


 そんな虎娘に向かって、ルーラルが前に出る。


『シールドニャ!』


 左手に縦を構え、右手にランスを持って虎娘を止めに掛かるルーラルに魔法を掛け、すぐさま他の仲間に魔法を掛けていく。


 ところが、その戦いは一方的なものとなった。

 ルーラルが必死に虎娘の突進を抑え込もうとするが、防戦一方となっている。

 側面からミララがメイスを必死に振っているが、全く以て相手にされていない状態だ。


「風刃!」


 そんな状況で、味方に当たらないような角度からマルラがレイピアの能力を発動させるが、虎娘はその攻撃を避けようともせず、ルーラルとミララに大剣を叩きつけている。

 そのお蔭で、マルラの攻撃が虎娘に直撃するが、その風の刃が奴に当たって霧散する。


「えっ、全く効いてないの?」


 完全に無力化されたマルラが驚いているが、恐らく次元の違う相手だと思って間違いないだろう。


 レストも仲間二人と虎娘が接近戦を遣ってる所為で、全く魔法を放てる状況にない。

 このまま戦っても、被害が大きくなるだけだろう。

 そう感じた俺は大きな声を張り上げる。


「やめるニャ~~~~~~~~!」


 その叫びにマルラとレストがビクリとしているが、虎娘と戦闘を行っているルーラルとミララは全く聞こえている風では無い。


 すると、透かさず後ろに一旦引いた虎娘が、大剣を大きく横に振るう。

 その攻撃は、瞬時に防御態勢を取ったルーラルやミララだけでは無く、少し距離を置いたマルラまで吹き飛ばし、最後方に居た俺やレストまで吹き飛ばした。

 それを受けた印象からして、シールド魔法が無ければ、身体を真っ二つにされてもおかしくない攻撃だと感じた。


 そんな奴の攻撃を受けた俺は、即座に戦闘態勢を取るが、奴はその場から動いていなかった。


「ちっ、全く歯ごたえが無いぜ。こんな奴等に手をこまねいていたのかよ。エルカレア達も糞ゴミだな」


 奴は吹き飛ばされた俺達へと直ぐに襲い掛かる事無く、俺達の弱さに不満をぶちまける。

 挙句は、仲間である筈のエルカ達に対しての暴言まで口にしている始末だ。

 そんな虎娘の不遜ふそんな態度に怒りを覚えることも無いが、このままでは仲間が痛い目に遭うだけで、奴を倒す事など到底不可能だと思える。


 だから、俺は虎娘に声を掛ける。


「なあ、俺とタイマンで戦うニャ。他の者に手を出すのは止めるニャ」


「あははははははは、お前とか? そんな貧弱な身体でオレと戦おうって言うのか?」


 奴は、ゆっくりと近付く俺を嘲笑あざわらう。

 別に笑う程の事でもないと思うのだが、奴にとってはチャンチャラ可笑しいのだろう。


「ああ、構わないぜ。オレが命じられているのは、お前を倒すことだからな」


 奴はバカにしながらも、俺の進言を受け入れた。

 あの発言からすると、どうやら、俺以外は標的ではないようだな。


「じゃ~やるか! 偽......」


「偽物、偽物、煩いんだよ!」


 罵声を浴びせながら、奴に一歩ずつ近づく俺の身体が人間体となっていく。

 それを見た奴の声が止まる。

 しかし、仲間達は、一瞬だけ安堵したような表情をしたが、直ぐに悔しそうな表情となり、奴に向かっていく俺の姿を見ている。


「あ、主様......すみません。私達の力が......」


 地面からやっと起き上がったルーラルが謝ってくる。


「ごめんなさい。ミーシャ」


 甲冑の所為で、ミララの表情は解らないが、その声で悔しがっている気持ちが分かる。


「師匠、僕は......」


 マルラも膝を突いたまま、己の無力さに打ち拉がれている。


 いや、彼女達は良く遣っている。

 今回は相手が悪かったのだ。

 何と言っても、ニルカルアの右腕と呼ばれる程の相手だ。

 初めから、こうするべきだったのだ。


「お前達は気にするな。みんな良く遣った。今回は不慮の事故みたいなもんさ。さあ、みんな下がってるんだ」


 仲間達に労いの言葉と退避を告げると、俺は両手に炎帝と闇帝を呼び出す。


『う~~む、久々の登場だわい』


『やはり、外の空気は良いものですね』


 炎帝と闇帝が登場した途端に外の世界を満喫している。

 しかし、それに構う事無く、俺を値踏ねぶみするかのように睨み付けている虎娘から視線を外さない。


「偽物、それがお前の本当の姿か」


 嘲笑ちょうしょうを止めた猫娘が問い掛けてくるが、それには答えずに違う返事を口にする。


「尻尾や耳を仕舞えないような半端者のお前とは違うんだよ!」


 その返事を合図に、怒りに満ちた形相を顔に張り付けた虎娘との熾烈しれつな戦闘が始まるのだった。

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