44 儘ならないものだね
世の中とは全く以て儘ならないものだね。
殊に、この世界に来てからは、思い通りに行かない事ばかりだよ。
というか、この世界に来てからというもの、思い通りにいった事が全く無いような気もするが、それについては気が滅入りそうなので言及を謹もうと思う。
「主様も、偶にはお茶でも如何ですか? とても美味しいですよ」
ソファーで丸くなる俺に向けて、ルーラルが和やかな表情でお茶を進めてくる。
「そういうなら、一杯だけ貰うかニャ」
ルーラルにそう返しながら己の横を眺める。
そこには、コロコロとした可愛い豆柴が、お腹をおっぴろげて昼寝をしている。
その無防備な姿は、ハッキリ言ってとても見っとも無い姿ではあるが、得てして平和の象徴とも言い換えることが出来るだろう。
そんな穏やかな光景は、ある意味で心落ち着く午後の一時だと述べる事ができる。
しかしながら、そんな呑気な時間を過ごしていない者も居る。
「やっ! えいっ!」
「ぬん! まだまだなの」
気合と共にマンゴーシュでメイスの攻撃を上手く受け流しながら、レイピアで鋭い突きを繰り出す。
その鋭い攻撃を強靭な篭手に守られた左腕で受け流しながら、振り切ったメイスを右手で引き上げ、再び力強い一撃を放っている。
そう、庭でマルラとミララが模擬戦を行っているのだ。
オマケにその戦いが、やたらと白熱している。
というのも、攻撃と共に繰り出される罵声が、お互いの闘志を掻き立てているのだろう。
「乳を大きくして出直すの~~!」
「きぃーーーー! くらえ~~~! バカミララ!」
「ぬるいの。乳が小さいと威力もないの」
「ぐあ~~! 絶対に殺す!」
まあ、この二人は放っておこう。
どうせ死ぬ事は無いし......
見た目は可愛い少女と甲冑が戦っているのを眺めていると、テーブルに少し冷ましたお茶を置いたルーラルが窓から見える二人の模擬戦を横目に告げてくる。
「あの二人は、口喧嘩さえしなければ、とても良いコンビなんですけどね」
ああ見えてあの二人は仲がいいから、あの悪口もスキンシップだと思えば可愛いものだと言えるのかも知れない。
珍しく、王都アルルにある屋敷でのんびりとしているのだが、侍女が慌ててやってきて、呼ばれざる客の急な来訪を告げてくる。
「なかなか、気付くのが早いですね」
侍女の言葉を聞いたルーラルが、珍しく嫌味的な発言をしてきたのだが、俺も全く以てその通りだと言いたい。
「恐らく、執事や侍女の中に間者を紛れ込ませてるニャ」
俺が的確とも言える回答を返したのだが、ルーラルはその言葉を補足してきた。
「いえ、紛れ込ませているのではなくて、全員に息が掛かっているのかと」
そうだな。この屋敷で働く者の人選をしたのは、あのロリババアだ。
ルーラルが指摘する通り、全員が奴の手下だってとしても驚きはしない。
「おお、早かったではないか。もう戦を収めてきたのかのう」
呼んでもいないのに、勝手にズカズカと入って来やがった。オマケに、知ってる癖に嫌味まで......
我が家のように振る舞うアーニャに不快感を露わにした視線を向けつつ、直ぐに知らぬ素振りで応対する。
「ん~、少し手違いがあったニャ」
「ほ~、手違いとは何があったのじゃ?」
くそっ、どうせ全てを知っている癖しやがって......
心中で悪態を吐きつつも、この状況をどう遣り過ごそうかと視線を周囲に向けると、俺の横にハシタナイ姿で転がっていた筈の豆柴が、いつの間にかその可愛らしい姿を消していた。
まるで魔術師のようだが、残念ながら彼女は魔法使いであって魔術師では無い。
しかし、一応は豆柴だけあって、その敏感な嗅覚でこれから始まる大戦の臭いを嗅ぎ付け、そそくさと逃げ出したに違いない。
それは一般論で言えば最良の選択であり、俺から見れば裏切り者といえる行為だと言えるだろう。
まあ、裏切り者の裁きは後にするとして、トール王国に向かっていた筈の俺達が、何故アルラワ王国の王都アルルにあるこの屋敷でのんびりしているかというと、話せば長い長い事になるので割愛したいのだ。
ただ、どうもにも、俺の前にいるロリババアことマルリア王国宮廷魔術師アーニャは、それを許してくれそうにない。
観念した俺は、ロリババアに逐一説明することになるのだった。
俺達はあの日、怪しい五人の間者を捕まえて、意気揚々とトール王国の王城へと赴いたのだ。
まずは城門でのチェックだったが、初めのうちは、ウチのメンバが若い女ばかりなので、衛兵を始め騎士達も和やかな表情で対応してくれた。
ところが、この王都に来る途中の山岳地帯で怪しい者を捕まえたと伝え、五人の女達を突き出したところで、彼等の表情は一変した。
更に、彼等が驚愕の表情で発した言葉は、今思い出しても耳を塞ぎたくなる台詞だった。
「姫! リーシャル姫!」
「リーシャル王女! 如何されたのですか」
衛兵や騎士達が口を揃えて一人の女性の名前を呼ぶ。
どうやら、五人の間者は敵ではなく、味方の部隊だったようだ。
そうなると、この後の展開は誰にでも想像がつくだろう。
「貴様らは何者だ。なにゆえ、我が王国の王女にこのような仕打ちを」
「おい! 直ぐに姫様の拘束を解くんだ」
「貴様ら、唯では済まさん」
騎士達は衛兵達に王女の拘束を解くように言いつけると、剣を抜いて俺達へと向かってきた。
『どうしますか主様、どうやら誤解があるようですが』
騎士達を見遣ったまま、ルーラルが俺の指示を仰いでくる。
『味方だし、話せば解って貰えると思うニャ』
しかし、俺の希望は無情にも切って捨てられる。
それを決定づけたのは、拘束を解かれた王女が発した言葉の刃だった。
「その者達を切って捨てるのです。生かして置いてはなりません。その不快な表情を見せる猫も一緒に始末しなさい」
おいおい。行き成りそれは無いだろう。
オマケに、俺達は人道的な対応をした筈だが? それに言うに事欠いて不快な表情だと! くそっ! お前等、動物愛護協会に訴えてやるからな!
この世界に動物愛護協会を設立することを考えつつも、その王女とやらが放つ剣幕の理由を考えていると、仲間から念話が届いた。
『師匠、恐らく、あの失禁事件の所為では無いですか?』
どうやら、彼女達は何か思う処があったのだろう。すぐさまマルラが指摘してきた。
ま、マジか? あれだって、彼女達が早く言えば良かったことじゃないか?
そう、彼女達は俺達の質問に対し、頑として口を開かなかった。
それ処か、与えた食事も口にせず、一言も物を言わず、目すら合わせなかったのだが、そんな彼女は一度だけ言葉を発したのだ。
その言葉とは「トイレ」の一言だった......
しかし、その一言も彼女達にとっては、口にしたくない言葉だったのだろう。
限界まで我慢した挙句、耐えられなくなって口にした時には、時既に遅しといった状況だった。
お蔭で、俺達の馬車は未だに不快な臭いがする。
そう言う意味では、俺達は被害者と言える筈なのだが......
マルラの念話を聞いたミララは、まるで俺の心を見透かしたかのように、念話で告げてきた。
『自業自得なの』
うむ。俺もそう思う。
しかし、残念にも王女はそう思わなかったのだろう。いや、己の醜態を抹消するために、俺達を抹消する事を選択したようだった。
『それはそうと、どうしましょうか』
今にも斬り掛かって来そうな騎士を前に、ルーラルが冷静な声で念話を伝えてきたのだが、ここで更なる問題が勃発した。
「ん? その猫! 噂のサバトラ柄の猫です! 如何しますか」
一人の衛兵が俺を見てそう言ったかと思うと、一人の騎士が即答した。
「縁起でもない。斬り殺せ!」
そう、その一言が拙かった。
「今、師匠を切り殺すと言いましたか?」
それまで、少しオドオドした表情だったマルラの目付きが鋭くなった。
その眼差しは、彼女が右手に持つレイピアよりも鋭い刃となって、暴言を吐いた騎士に突き刺さる。
更に、間者を運ぶ為に甲冑姿で登城しているミララが、メイスを騎士達に向けて宣言する。
「ミーシャを殺すだなんて......唯では済まさないの」
甲冑でその怒りの表情は見えないが、強靭な甲冑がカタカタと音を鳴らしている。
恐らく、かなり切れている様子だ。
オマケに、その隣ではレストが怒りの表情を向けている。
というか、こういうシチュエーションでレストが豆柴じゃないのが珍しい......
「ミユキを殺すなんて言う人は、己が死ぬのです。いや、猫に手を上げる奴はオレが許さん!」
杖を騎士達に向けて、いつでも魔法を放てる体勢をとっていたレストだが、途中でガストに代わっていた。
見た目は全く変わら無い筈なのに、ガストに変わった途端、レストの身体が大きくなったように見えるのが不思議だ。
怒りを露わにするガストを見ていると、今度は何処からか取り出したランスを構え、烈火の如く燃え上がる存在が口を開いた。
「死を以て償いなさい」
困った事に、一番ヤバそうなセリフを吐いたのは、やはりルーラルだった。
こうなったルーラルは歯止めが効かないんだぞ。お前等、如何してくれるんだ!
『み、みんな、待つニャ』
唖然としていた俺が、我に返って仲間達へ念話を飛ばした時には、既に風前の灯といった状況となっていた。
眼前に居た衛兵達が吹き飛ばされ、騎士達の鎧が切り裂かれ、挙句の果ては城門が爆破され、置き土産とばかりに、ガストが焦土の魔法をぶち込みやがった。
お、お前等な~、一応は使徒だろ? 少しは遠慮せ~~~~~い!
衛兵や城を蹂躙する仲間達を見て、無理だとは思いつつも、心の声は木霊している中、俺は慌てて念話を試みるのだが......
『て、撤退するニャ』
最早、俺には撤退の二文字を発することしか出来ない状態だった。
その後も、大勢の兵士や騎士に追いかけられ、暫くは王都を逃げ回っていたのだが、最終的には、登城を諦めて転移のアイテムでマイホームへと帰ってきたのだった。
豪華とは言えないが、それなりに座り心地の良いソファーの上に、白く華奢な腕を組んだアーニャの姿がある。
パッと見は、可愛い幼女にしか見えないのだが、中身は何百年を生きているかも不明な大陸最強の魔女だ。いや、ロリババアだ。
その怪しい性格も魔女と呼ぶに相応しいアーニャは、眉間に皺を寄せた状態で黙考してる。
そんな彼女の無言のプレッシャーに耐えられなくなって、俺はすごすごと隣に座るルーシアの膝の上に乗って丸くなり、予測される嵐の対策を練る。
『あ、主様』
珍しく俺からルーラルの膝の上に乗った所為か、彼女は嬉しそうな声を上げたかと思うと、頭から背中にかけて優しく撫でてくれる。
その手触りに目を細め、そろそろ現実逃避という対策を実行しようとした処で、眉間に皺を寄せたアーニャが視線を向けてきた。
ヤバイ。あれはまた難題を押し付けられるに違いない。
アーニャの瞳からそれを察した俺は、大きな欠伸を一つすると、尻尾を股の間に仕舞って目を瞑る。
「過ぎた事は仕方がないのう。それに話を聞く限りではお主達に非はなさそうじゃ。どうやら、今回は運が悪かったと思うしかないようじゃ」
まずは、優しそうな声で物分かりの良さ気な台詞から始まったが、これは甘い誘いなのだ。
この甘言にホイホイと乗ると、ガブリと遣られる訳さ。
これは奴の常套手段だ。
現段階はその小さな口を目一杯に広げ、その入り口までの通り道に餌をバラ撒き始めたところだ。
「それでじゃ、色々と考えたのじゃが、どうもお主達とトール王国は相性が良くないような気がしてのう。トール王国への助力は見送る事にしようと思うのじゃ」
アーニャは優し気な表情で、トール王国の助力をする必要はないと言ってきた。
いや、おかしい、これは絶対に裏が......罠がある筈だ。
疑心暗鬼になりながらも、思わず彼女の言葉の真偽を確かめてしまう。
「ホントかニャ? もうトール王国へ行かなくてもいいのかニャ?」
だって、俺としても、これからあの国に行って何事も無く済むとは思えない。
それ程に、リーシャル王女の怒りの形相が凄かったのだ。
しかし、だからと言って、戦争になりそうな同盟国を無視するとは思えない。
絶対に何か企んでいる筈なんだ。このロリババアがそう易々と俺達を逃がす筈がない。
ところが、アーニャは俺の疑念を嘲笑うかのように言い切った。
「ああ、本当じゃ。お主達の手でトール王国を炎の海にする訳にはいかぬのでな」
その言葉で、未だに訝しく思いながらも、少し安堵の気持ちが芽生えた。
故に、気を緩めてしまったのだ......
「それなら良かったニャ。今回はウチの奴等が暴れて申し訳なかったニャ」
そう、俺は間違ったのだ。それも大きく間違えたのだ。
ここで安易に非を認めてはいけなかったのだ。
それを証明するかのように、和やかというより、怪しいと表現した方が適切な笑顔を浮かべたアーニャが口火を切った。
「そうかそうか、行き違いがあったとはいえ、かなり燃やしたようだしのう。まあ、お主達もトアラルアの使徒じゃ。燃やした分くらいの責任は取るじゃろう?」
ぬぐっ、やはり、あの甘言は餌だったか。
よもや、この俺が撒き餌に喰い付くとは......
一気にピンチへと陥った俺に、アーニャは手を緩める事無く、追撃の狼煙を上げる。
「そう言えば、トール王国での被害総額を知っておるか? なんと、金貨一億枚では収まらんそうじゃ」
ま、まじか! が、ガストーーーーーーーーーーーーー!
奴は人災指定人物で隔離する他なさそうだ。
「オマケに、トール王国でもサバトラ猫は災いを呼ぶ......いや、災厄の権化と言われ始めたようじゃぞ」
ま、またか、また俺達の所為でサバトラ猫の居場所が無くなるのか。
俺は猫達に何と言って詫びればいいんだ......
この後も、ネチネチと、ネチネチと、ネチネチと、イビられた結果、俺は氷水を浴びるような思いで白旗を上げるのだった。
色々とあったが、俺達は夜になって出発した。
えっ、何処へだって?
はい。カルミナ王国ですニャ。
アーニャからの攻撃で体重が五百グラムは減ったような気がしたが、最終的には彼女の要望を聞き入れることで、悪夢の幕を閉じる事に成功した。
いや、これは成功とは言わないよな。ある意味、完全降伏かもしれない......
それで、アーニャの要望だが、今更トール王国へ行ってもトラブルが増えるだけだから、カルミナ王国へ行って情報収集を行って欲しいとの事だった。しかし、あわよくば戦争回避の対策を執って来いと言われてしまった。
それはそれで、かなり敷居の高い話なのだが、レスト、いや、ガストが叩き出した損害額の方が高いかもしれない。
その気になれば、彼方此方でゲットしたお宝で補えるような気もしたのだが、自分達が与えた被害を盗んだもので賄う事に罪悪感を持ったこともあり、渋々と受け入れる事にしたのだった。
ところで、人災がどうしているかと言うと、豆柴状態となって俺の隣でお休みモードだ。
まあ、ミリアのように下心満載という訳では無いので、好きにさせている。
てか、少しは反省しているのだろうか。
「ところで、カルミナ王国ってどんな国なんですか?」
夜空を魔法の絨毯で飛んでいると、マルラが目的地について尋ねてくる。
そんな事を聞かれても、俺もあまり知らないのだが......
「ロリババアの言う話では、変わった国だといっていたニャ。何でも、よそ者を異常に嫌う国民性で、ニルカルア教が幅を利かせているらしいニャ」
「ニルカルア教......」
アーニャから聞いた内容をそのままマルラに伝えたのだが、それを聞いたマルラの表情が曇る。
その気持ちは痛い程に解るのだが、全ての苦言は俺の隣でスヤスヤと眠っている豆柴に言って欲しいものだ。
マルラはその後も暫く難しい顔をしていたが、おずおずと己の意見を述べてきた。
「それって、トラブルが起きそうな気がするんですけど」
いや、それは間違った表現だな。正確に言うなら、お前等はどこでもトラブってるから、今更どの国だとトラブルかもなんて事は無い。
そんな俺の気持ちを汲んでくれたのは、やはりこの中で一番真面なルーラルだった。
「あなた方は何処でもトラブルを起こしていると思いますが?」
「そ、そ、それは、全部レストですよ」
「そう、レストとマルラなの」
「えええっ! ちょっと、ミララ、裏切る気?」
「本当の事を言っただけなの」
ルーラルの言葉を聞いマルラが言い難そうに破壊神の名前を告げたのだが、ミララはしれっとマルラの名前を追加していた。
しかし、ルーラルはそんな二人にキツク申し渡す。
「三人共です。今度暴れたら屋敷で留守番させますからね」
「そ、そんな~~」
「それは嫌なの」
ルーラルの言うお仕置きがどれ程の効果を持っているかは知らないが、マルラとミララが一気に落ち込む。
ただ、一番の原因であるレストは、「なに?」という風に顔を上げたものの、直ぐに元の状態で寝入ってしまった。
というか、ルーラル、お前もだからな!
さて、俺達が向かっているカルミナ王国だが、アルラワ王国の北西に位置する王国であり、北は海、東にトール王国、南にロートレール共和国、西に海国という位置関係だ。
また、国土の大きさや文明的にはアルラワ王国と同じぐらいだと言えるだろう。
ただ、問題なのは、さっきも話題にあったように、ニルカルア教を国家主教としていることだ。
というのも、これまでの流れで、ニルカルアがトアラルアに相反する神である事は明白なのだ。
そんな国へ、トアラルアの使徒がノコノコ行けばどうなるだろうか。
それは火を見るよりも明らかな結末が待っているだろう。
まあ、自分達からトアラの使徒だと名乗る気も無いので、恐らく知られる事は無いと思うのだが、国民性にも問題があるという事なので、油断する訳にはいかないだろう。
「兎に角、目立つのは厳禁だからニャ」
気を引き締める為にも、全員に強く命じたのだが、結局は無駄だったと知るのに、それ程時間を要する事は無かった。
王都アルルを立って二週間、現在はカルミナ王国領に入り、一番初めの街に到着したのだが、早くも問題が勃発した。
「なにやら騒がしくないですか?」
辿り着いたばかりの街の雰囲気にルーラルが訝し気な表情で話し掛けてくる。
「なんか、師匠がいっぱい」
「とっても可愛いの」
「なんか、トラ猫が走りまわってるのです」
マルラ、ミララ、レストのトリオが街の様子を説明してくれた。
そう、街中ではトラ猫が走り回り、住民がそれを追いかけ回しているのだ。
何故かとっても嫌な予感がする......
『ルーラル、街の人に事情を聞いて貰えないか?』
『分かりました』
俺の言葉に頷いたルーラルは、そそくさと街の住民に向かって歩き出す。
だが、次の瞬間、猫を追い回していた一人の男が叫んだ。
「あそこにも居るぞ!」
すると、他の者達も一斉に視線を俺に向ける。
「トラ猫は一匹残らず駆除しろ~~~!」
その言葉で、猫を追い回していた男達が包丁や木材を振り回しながら襲い掛かって来る。
「猫はやらせん! 吹き飛べ! 爆裂!」
いつの間にか登場したガストの一撃で、小さな街に爆音が轟く事になる。
そう、舌の根も乾かぬうちにガストが遣って退けたのだった。




