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38 逃走の終わり


 目の前には無能な輩が並んでいる。

 申し訳なさそうにしている女騎士キャサリン。

 必死に祈りを捧げているアイリーン。

 我関せずといった風なカルラ。

 最後に、ゴミのような勇者アルヴィンだ。

 何でまたこんなゴミの様な男が勇者として召喚されたのか、今でも不思議でならない。

 恐らく、元の世界では唯の痴漢でしかないでしょう。


「使徒様、申し訳ありません」


 キャサリンが硬い口調で謝罪してくるけど、この女も思ったより使えなわ。

 私は膝の上に乗る真っ黒な獣を撫でながらそう思う。

 真っ黒な獣、メルティは私の撫でる手で気持ち良さそうにしている。

 この子は本当に可愛いのよね。


 ああ、私が私というと、誰か解らないでしょうね。

 私はエルカレア。一人称で『うち』を使っていたのは、飽く迄も偽装のためなの。


「使徒様、今後は如何しましょうか」


「如何しましょうかって、あなた、頭は確か? 追うに決まってるじゃない。あの娘を逃がす訳にはいかないのよ」


 この使えない女騎士は、どこまでイケてないのかしら。

 必要だから誘拐させようとしたのに、それに逃げられて、如何しましょうじゃないわよ。

 こんな事をしていたら、私がニルカルア様から叱られるのに、本当に最悪だわ。


かしこまりました。直ぐに追手を差し向けます」


「何を言ってるの? あなた達も行くのよ! 連れ戻しにね」


 はぁ~、もうこの女と話すのも嫌気が差してきたわ。

 もう、この女の事は如何でもいいわ。それよりも猫が居たって言ってたのよね。


「その猫、間違いなくサバトラ柄なの?」


「はい。それは間違いありません。ですが、変身などはしてませんでした」


 キャサリンの言葉が確かなら、猫ちゃんじゃないという事かな。

 そうね。もし、猫ちゃんならこの者達が無事にここに居る訳も無いか。

 だって、それが本当にあの猫ちゃんなら、この者達はとっくの昔に他界してるわよね。

 それに、猫ちゃんがここに居ること自体、在り得ない訳だし。

 猫ちゃん達はアルルのダンジョンで鍛錬していると聞いているわ。


「それで、ビアンカの処分ですけど」


 私が考え事をしていると、アイリーンがおずおずと尋ねてきた。


「ああ、あの薄着の女ね。殺しなさい。内情を知られているでしょ?」


 ビアンカが誰だったか一瞬思い出せなくて、思わず首を傾げてしまったわ。


「彼女には詳しい事を全く話していないので、情報が洩れる事は無いと思いますが」


 また、このキャサリンだわ。使徒の私が命じているのだか、黙って言う事を聞けばいいのに。


「私の言う事が聞けないのなら、あなたから消えて貰おうかな」


 その台詞を聞いたメルティが、私の膝の上で身体を起して小さな唸り声を上げる。

 それにんだキャサリンが、即座にその場で畏まる。


「し、失礼しました。た、たい、大変申し訳ありません」


「お、お許しくださいませ。使徒様、どうかお慈悲を」


 オマケにアイリーンがキャサリンをかばい始めたわ。


「もういいわ。さっさと行きなさい」


「「「「はい!」」」」


 この愚鈍ぐどんで使えない者達は私の言葉を聞くと、まるで逃げるような速さで部屋から出て行く。


 面倒な奴等が居なくなると、膝の上に乗せているメルティが私に甘えてくる。

 あは、可愛い子......私の本当の仲間はあなただけよ。

 同じ使徒であるこの子だけが私の仲間であり、大切な家族なのよ。


 さて、それはそうと、今後の方針を如何するかよね。

 私の正体をバラしちゃったし、猫ちゃん達の動向が探れないのよね。

 やっぱり失敗だったかな。こんな使えない奴等なんて見殺しにすれば良かったかも。

 今更言っても始まらないか......


 それにしても、猫ちゃんの力は強過ぎるわ。

 あの時は、あんな捨て台詞を吐いたけど、私とメルでは敵わないかもしれない。

 一体どうやってあんな力を手に入れたのかな。

 いえ、それ以前に、どうやってトアラルアと接触したのかな。

 彼女はニルカルア様が異空間に封印している筈なのだけど。

 この任務を任された時、本当に信じられなかったわ。

 オマケに猫だし......更に、本人は気付いてないけど、かなり間抜けだし。

 まあいいわ。私達は決着の時まで己を鍛える事にしよう。


「じゃ、メル、鍛錬にいくよ」


『え~~~。お腹空いた~~~』


 メルの空腹が演技じゃなくて素だって知ったら、猫ちゃん達はどう思うだろうか。

 そんな事を考えながら、猫ちゃん対策のために鍛錬へと向かうのだった。







 相変わらず、あの使徒と話すのは緊張する。

 パッと見は唯の子供なのだが、その瞳の冷たさは背筋の凍るものがある。


 それにしても、やっと本国まで帰って来たかと思ったら、伯爵令嬢誘拐の任務に駆り出されて、挙句はその任務に失敗して出掛ける羽目になるとは、本当についてない。

 それもこれも、全てビアンカの所為だ。


「キャサリン、それで如何するんだ?」


 ああ、頭痛の種がまた喋り始めた。

 この最低な勇者は、飯を食う。女を食う。夜になると寝る。女を連れ込んで寝る。

 そんな事ばかりしている奴だ。

 この最低な男に喰われた侍女が一体何人になるやら......今ではその数も不明だ。


「おい、キャサリン!」


「ああ、直ぐに出発します。準備して下さい」


「出発って何処にだよ」


「勿論、ロートレール共和国方面に向けてです」


「なんでロートレール方面なんだよ」


 一々煩(いちいちうるさ)い男だな~~。

 それくらい聞かなくても分かるだろうに。


「密偵部からそういう連絡が入ってますから」


「ふ~~~ん。それよりも、今夜はどうよ」


 どうよって、私と寝るつもり?

 一万年早いわ。このゴミは早く死ねばいいのに。


「お断りします」


「ちっ、堅てえ女だ」


 私が堅いんじゃなくて、お前が下種なだけだ。

 一応、勇者となっているだけあって、表立って罵倒できないのが悔しい。

 心中でこの腐った男をののしっていると、今度はアイリーンが尋ねてくる。


「あの~、今から追って間に合うのですか?」


 そうなのよね。

 だから、使徒と話す前に戦馬を用意していたのよ。

 どうせ、こうなると思ってたから......


「大丈夫よ。戦馬を用意しているから、一日くらいの差なら直ぐに追いつくわ」


 私がそう答えると、彼女は安心したように胸を撫で下ろしたけど、下種の視線はその胸から離れていない。

 その事に舌打ちしたい気分になったけど、直ぐにカルラが話し掛けてきた。


「あの猫、始末していい?」


「ええ、構わないわ」


「だったら、あのサバトラ柄の皮を引んいて丸裸にしてやるわ」


 あれ以来、完全に病んだカルラが魔道義手である右手を見ながら、怪しい笑顔を浮かべている。


 このメンバを見ていたら、少しだけビアンカの気持ちが分かった気がした。

 私も早く他の任に就きたくなってきた。

 でも、今更、抜けさせてくれるとも思えないし......

 もう私の人生は最悪だわ。末期状態なのね......


 己の人生に嘆いていると、一人の兵士が遣ってきた。

 どうやら、馬車の準備が整ったようだ。


「じゃ、直ぐに準備をして集まって下さい」


 それぞれが気の無い返事をしながら去って行くのを見ながら、このやり場のない怒りを何処にぶつけるかを思案するのだった。







 長閑のどかな景色の中に長く伸びる道。

 あまり整備が成されているとは言えない道だが、土が固まることで馬車を進ませるに困らない程度の道となっている。

 ただ、その悪路による震動は人間にとって苦痛なものであり、猫にとっては不快なものだった。


「あの~、お尻が痛いです」


 一番初めに苦言を述べたのは、一番お尻の大きいミトだった。

 そんなに肉があるのに、どうして痛くなるのか疑問だが、本人がそう言うなら痛いのだろう。

 ああ、勘違いして貰っては困るが、決してミトが太っていると言っている訳では無い。

 唯単に、お尻が大きいだけだ。こういうのを安産型と言うのだろうか。

 未だにどんな形が安産型なのか知らない俺からすると、ただただ大きいとしか言えない。


「もう少しで休憩になりますよ」


 ミトを宥めるように、年下である筈のクラリスが優しく告げる。

 その言葉に、ミトがしみじみと己の意見を述べてくる。


「馬車の遠乗りって、こんなに辛いものなのですね」


「ん~、ちゃんとした乗用馬車ならこんな事はないわよ。これは貨車だからお尻が痛くなるのだと思うわ」


「ああ、そうでした。屋敷の馬車はもっと乗り心地が良いですものね」


 クラリスの説明に、ミトは納得の表情となったが、馬車が振動を拾った所為で、直ぐに泣きそうな顔へと変貌へんぼうする。


 そんな観察をしている俺はというと、クラリスに抱かれたまま大人しくしている。

 先に言わせて貰うが、決して俺が望んでいる訳では無い。

 いつもいつも女の子に抱かれてウハウハしている訳では無いのだ。

 本心を言うと、彼女から抜け出してビキニ女から話を聞き出したいのだ。


「こら、タイガ、また逃げようとして」


「ニャ~~~」


「鳴いて誤魔化さないの」


 うぐぐぐ、この娘は片時も俺を放そうとしない。

 う~~~ん、前にもこんな事があった様な気がする......

 まあいいや、今はそれ処じゃないのだから。


「それにしても喋る猫とか、物語の使徒みたいですよね」


 またその話か......もう何回聞いただろうか。

 俺が喋る度にその話が......ん? それって何時のことだっけ? 三日前にクラリスにはそう言われたけど、今回で二回目だよな? 何故か何度も聞いたような気がする。


 という訳で、こんな感じで逃走を続けているのだが、今日はまだ三日目だ。

 何処まで逃げれば良いのかは不明だし、色々と考えさせられる処だが、まずは安全な所まで逃げないとな。


「休憩にするぞ」


 馬車が止まり、ビキニ女から声が掛かる。

 すると、待ってましたとばかりに、ミトが馬車から飛び降りるが、地面で尻餅を突いて悲鳴を上げている。


「ミト......もういい歳なんだから、もう少しお淑やかにしないと結婚できないわよ」


「お、お嬢様、それは言わない約束です」


 とても残念なミトに対して、クラリスが悲しい表情で無情の宣告をすると、ミトは泣きそうな顔で抗議の声をあげている。

 丁度、そんな遣り取りをしている処で、クラリスの俺を抱く力がゆるんだ。


「あっ、タイガ!逃げちゃダメ」


「ニャ~~」


 馬車の荷台に四足で立つと、思いっきり伸びをして猫背の矯正きょうせいを行う。

 そのさまを口を尖らせて睨み付けてくるクラリスだが、ミトが直ぐに近付いて来て、彼女を馬車から下しながら助言してくれる。


「あれだけ抱き締めてたら猫ちゃんも苦痛ですよ」


 やるじゃないか! ミト! 褒めて遣わすぞ!


「だって~~! タイガったら放って置くと全く寄り付かないもの」


 ぬぐぐぐ、そんな事は無いよ。決してお腹や脇をコチョコチョされるのが嫌な訳ではないんだよ。いやいや、それよりも遣る事があるんだ。

 俺は寂しそうなクラリスを横目に、すぐさまビキニ女の下へと移動する。


 しかし、ビキニ女の姿が見当たらない。

 不思議に思い、匂いを辿って探してみたのだが......


「こら、猫! のぞくな!」


 彼女は用を足している最中だった。


 ん~~~~、大変申し訳ない。てか、前にもこんな事があった様な感じがするのは、気の所為なのだろうか。


「猫! お前は悪趣味だな。女の用足しを覗くなんて」


「ち、ち、違うニャ。姿が見えなかったから探していただけニャ」


「ちっ、何処まで見た?」


「な、な、何にも見てないニャ」


 実はバッチリと見てしまったのだが、そんな事は口が裂けても言えない。

 ビキニ女は顔をやや紅潮させながらも話を続けてきた。


「まあいい、それよりも本当にオレの事を覚えて無いのか?」


 その言葉に黙って首肯するが、彼女はその姿を見て黙考を始める。

 しかし、俺にも聞きたい事が沢山あるのだ。


「なんであの国を裏切ったニャ」


 黙考もっこうする彼女に対して、やや唐突に問い掛けた。


「ああ、オレは元々流れの傭兵だしな。あの国に嫌気が差したから逃げ出したんだ。恐らく、普通には辞めさせてくれないだろうからな」


「俺にはその逃亡とクラリスを助ける事の関連性が解らないニャ」


 答えてくる彼女に向けて、更に問いを重ねると、彼女はニヤリと笑いながら告げた。


「そんなのは簡単だ。猫、お前の手を借りたかったからだ。少女の方はオマケ......同情心からかな」


 俺の手を借りたいと言うのは昨日も聞いたが、猫の手も借りたいという意味ではないんだよな?

 俺に一体何が出来るっていうんだ?

 まあいい、それは置いておくとして、これからの事だな。


「今は何処に向かってるニャ」


「ロートレール共和国だ。あそこも大国だからな。逃げ込んでしまえば、後は何とかなるだろう」


 確かに彼女の言う通りかもしれない。

 クラリスに教えて貰った情報だと、この国は大陸の南西にあり、半分は海に囲まれている。

 東には同盟国のゴルド商工連合があり、北東には不毛の地、北にはロートレール共和国、北西にはテルラン王国がある。

 何処かへ逃げるなら、間違いなくロートレール共和国となるだろう。

 だが、それは敵も直ぐに理解する事だ。

 こんなボロ馬車だと、直ぐに追手が追い付いてくるだろう。


「あ、あ、ん~、何て呼べばいいニャ」


「ああ、オレか? ビアンカだ」


 そう言えば名前を聞いてなかったと思って慌てて尋ねたのだが、俺も名前を教えて無かった事に気付く。


「俺は......タイガだ」


「本当にタイガなのか?」


 何故かオレの名前を聞いて不思議そうにするビアンカ。

 まあ、それはいい。それよりも先を急ぐ必要がある。


「悪いけど、休んでる暇はないニャ。直ぐに敵が追って来るニャ」


 焦る俺を余所に、ビアンカは腕を組んだまま己のあごに手をやり、再びニヤリと笑った。


「それは分かってるんだ。だからお前が必要なんだよ。エロ猫」


 エロ猫......もしかして俺のことか!? まさか、見てしまったからか? 不本意だ~~~~~!


「うにゃーーーーーーーーーーーーーーー!」


 絶望に駆られた俺が悲痛な叫びを上げている処に、後ろから違う馬車が近付いてきた。

 近付いてきたと言っても一本道だし、俺達に要がある訳では無いだろう。

 見た目も唯の商人風の馬車だし、あまり気にする事は無いだろうと思ったのだが、俺の鼻が異変を嗅ぎ付けた。


「血の臭いだニャ」


 俺の警戒を不審に感じたのか、いぶかしくしていたビアンカも直ぐにその臭いに気付いて声を発した。


「敵が来たぞ」


 その声が戦闘開始の合図だったかのように、通り過ぎようとした馬車から数人の男が武器を片手に襲い掛かってくる。


 すぐさま一人目の男をジャンピング猫パンチで吹き飛ばし、その反動で二人目の頭を蹴り上げて地に降りる。


「タイガ......強過ぎるわ」


「あの~、本当に猫なんですよね?」


 その様子を見ていたクラリスとミトが唖然あぜんとした表情で感想を述べるが、俺してはそれ何処では無い。

 即座に三人目の足に猫キックを入れ、足が折れて体勢を崩した相手の顔に、非情の猫パンチを喰らわす。

 直ぐに周囲を確認すると、ビアンカが三人の男と斬り合っていた。

 どうやら、相手も手練れのようだ。

 即座に地を蹴って、ビアンカの後ろから斬り掛かろうとしていた男の顔面を猫パンチで陥没させると、次の男に飛び掛かる。


「な、なんだ、なんだよ! この猫! 悪魔の使いか! ぎゃふ」


 失礼な奴だ! これでも喰らえ!


 その男は俺の攻撃力を見て、恐怖の声を震えながら口にしたが、次の瞬間には猫パンチでぶっ飛んで行った。

 その攻撃で戦闘終了かと思った矢先に悲鳴が上がる。


「きゃーーーーーーーーー!」


 視線をやると、ミトが血を流して倒れており、その直ぐ横に立つ黒装束の男達がクラリスの腕を掴んでいた。


「ちっ、しくじったニャ」


「あいつ等は密偵部隊だ」


 俺が発した痛恨つうこんの台詞に、ビアンカが敵の正体を知らせてくる。

 それを聞いて即座に行動に移るが、ここでいましめの声が上がる。


「動くな。動くとこの者の命は無いぞ」


 何処からともなく現れた女騎士はがそう言うが否や、血を流して倒れるミトに剣を向けた。

 もしかして、馬車に隠れていて、時間を置いて出てきたのか?


「くっ、キャサリン!」


 どうやら、その女騎士はビアンカの知っている者らしい。

 驚くビアンカに目を奪られた時、背後からの殺気で本能的に飛び退った。


「ちっ、感のいい猫だよ! まあいい。直ぐにその忌々しいトラ柄の皮を引んいてやる」


 その声の主は、俺の居た地面に短剣を突き刺した状態で、憎しみと笑みを同時に表したような表情を浮かべながら毒を吐いた。


 ヤバイな。こいつら、かなりの手練れだ。


 心中で、現状のピンチをどうやって切り抜けるかと考えていると、行き成り想定外の出来事が発生する。


「ガゥオーーーーーーーー! ギャフ!」


 草むらから真っ白な毛で身を包んだ獣が飛び出し、キャサリンが剣を持っている右腕を食い千切ったのだ。


「ぐあ~~~~~!」


「キャサリン!」


 腕を食い千切られてうめくキャサリンに、修道服を着ていた女がすぐさま治癒の魔法を掛ける。


「な、なに、使徒様なの?」


 俺に毒を吐いた少女が、その白い獣を見て意味の解らない事を口走る。そして、その隙を逃すほど俺は甘くない。


 即座にその少女へ向けて猫パンチを繰り出す。しかし、彼女は直ぐに気付いたのか、物凄い速度でそれを避けてキャサリンの下へと向かう。


「しょうがねえ、今日はここまでだな。残念だよビアンカ。次は殺して遣る。散々犯したあとにな。あははははは」


 クラリスの屋敷で俺がぶっ飛ばした男がそう言うと、毒の少女がクラリスをつかまえ、修道女がキャサリンを抱いた処で、黒い玉を地面に投げつけた。


「くそっ、転移するつもりだ」


 その行動を見たビアンカが叫ぶが、時既に遅しとはこの事なのだろう。

 倒れている敵を残して、奴等は跡形も無く消えて行くのだった。


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