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18 ロバコーンの襲撃

 王都アルルへの二日目。

 何の変哲へんてつもない風景が続く。

 初めのうちは、東京では見ることの出来ない景色に感動していたが、見慣れると唯の自然なので、当然のことながら飽きてしまう。


 結局、何事も無く一日の移動を完了させて野宿の準備を進める。

 何故か猫が料理番をしつつ夕食の用意を済ませると、ホークとナイフを持ったレストとメルが待機していた。


 お前等、ちょっとくらい手伝えよな!


 ひたすら食べる係の二人に心中で悪態を吐きながら、最後の味見をして完了。

 ルーラル、マルラ、エルカが出来上がった料理をそそくさとテーブルに並べると、動物的な二人が、あっという間にハムスター顔に変わる。


 言っておくが、君たちに頬袋ほおぶくろは無いからね。ゆっくり食べても同じだよ。

 いや、星獣たるメルティにはあるかも知れないが......


 全員が食事を終えると、入浴タイムとなる。

 本来なら、綺麗になってから食事をする方が好みなのだが、料理で汚れたり、汗を掻いたりするから、仕方なく寝る前に入る事にしている。


 いや、それは人間だった時の話であって、現在の俺としては風呂になんて入りたくない......


 食後は料理をしないレストとミララに後片付けを頼み、チラチラと俺の様子を伺うマルラをスルーしてのんびりと横になる。


 何の変哲もない一日だ。でも、最高に幸せだ。

 トアラからの願い事さえなければ、ずっとこうして居たい程だ。


 そんな感じで入浴から逃れるべく誤魔化してみたのだが、世の中はそんなに甘くなかったようだ。

 最終的にはミララとマルラに捕まり、嫌々ながら入浴タイムに突入した。

 まあ、お湯に浸かるのは嫌だけど、パイパイは好きなので多少は我慢するしかあるまい。


 う~む。小さくなったとはいえ、マルラのパイパイもなかなか

 おお! やっぱりミララのオッパイは、凄い破壊力だ。

 ぬお~! ルーラルのオッパイ......凄すぎる......


 みんなのオッパイを眺めたり、肉球でプニプニして楽しんだりしているのだが、これはあれだな。

 女児のエルカは置いておいて、レストがハムスター級なら、マルラが猫級であり、ミララが犬級、ルーラルはライオン級かな。

 でも、どれも形といい、張りといい、最高に感じる。

 だから、マルラも気にしなくていいのに......


 なんて考えていると、それを察したのか当の本人から声が発せられた。


「師匠、僕の一人称と胸は、何時になったら治るんですか」


 うはっ、マルラに関しては大した影響じゃないから、すっかり念頭に無かった。

 拙い、バレたら溺死の刑に遭ってしまう。


「俺の能力が上がったら、もう一度解呪してみるニャ」


「いつ上がるんですか?」


「み、みてい......い、いや、もうちょっとしたら上がるニャ」


 視線をマルラの二つの胸に遣りながらそう答えたのだが、小さくなったと言っても、レストより大きいんだから問題ないじゃないかと考える。

 しかし、彼女の比較対象は、レストでは無くミララのようだった。

 その証拠に、彼女の視線がミララのたわわな胸に向かう。


 うぐっ! マルラが勝手に嫉妬して、俺を湯船に沈めやがった......


 すると、それを見逃さなかったミララといつものケンカが始まる。


「マルラ、いい加減にするの」


 ミララが怒りの形相で俺を奪い取ると、マルラに非難の言葉を飛ばす。しかし、マルラも負けてはいない。

 すぐさま俺を奪い返すと、負け犬の遠吠えで応戦する。

 まあ、既に負けてるけどニャ。


「ちょっと胸が大きいからって、師匠を虜に出来ると思わないでね」


 というか、お前は俺を何だと思ってるんだ?

 胸の大きさで女の良し悪しを決めたりしないぞ?

 そう言う意味では、抑々が君等の行為は減点対象だけどな。


 すると、賢者エルカが二人の少女に割って入る。


「二人とも、毎日毎日ケンカして......多分、猫ちゃん呆れてるよ? 嫌われても知らないからね」


 その言葉で、二人はずぶ濡れ泡だらけの猫に視線を向ける。

 呆れて物が言えない......いや、口内が泡だらけで物が言えない俺は、一声鳴く事でエルカの意見に同意する。


「ゴニャ~! ゴフッ、ゴフッ」


 唯でさえ濡れるのが嫌いなのに、毎日これだと完全な風呂嫌いになりそうだ。

 ああ、今のは例えだよ。今でも完全な風呂嫌いだからニャ。

 てか、これってオッパイを肉球でもてあそんだ罰なのだろうか......



 悪夢のような入浴が終わり、今夜も夜空を眺めながらマットの上で休息を取る。


 一人の時間がこんなに素晴らしいと思ったのは、これが初めてかもしれない。

 それもこれも、この気持ちのよい気候のお蔭だな......いや、現在の状況が異常なだけかもしれない......


 気候といえば今更だが、どうやらこの星は地軸が傾いていないようで、季節の変化が殆どないのだ。

 だから、一年を通して、こんな心地良い環境で過ごせる訳だ。


 それはそうと、ここ最近の状況で感じたのだが、どうも野生の勘が退化しているような気がする。だから、今夜からは『誰でも検知器』を設置しない事にした。


 これで野生の鋭敏な感知能力を取り戻せると良いのだけど......


 すると、そんな俺の思いを聞き届けたかのように、早速とばかりに招かざる客が訪れた。

 しかし、今夜は昨夜と違って二匹に増えていた。

 そんな二頭のロバコーンは、俺の前で脚をバタつかせながら止まると、相も変わらず偉そうにいななく。


『今日こそは、ルーラルを連れて帰るからな!』


『こいつが、例の猫か!』


 俺は四足で立つと、自慢の長くしなやかな尻尾を左右に振り、無礼なユニコーン達の言葉を受け流しつつ、耳をやや後ろ気味に寝かせた。

 俺の知識にあるように、どうやら、ユニコーンとは傲慢ごうまんな生き物のようだ。

 昨夜のことを全くかえりみていない。いや、抑々反省なんてしないのだろう。


「昨夜も言ったが、無礼者は帰って顔を洗って出直すニャ。いや、出直さなくてもいいニャ。二度と来るニャ」


 俺の言葉に怒りの声が轟く。


『お主の言う通り、礼儀を知らん猫のようだな』


『うむ。血祭に値する。楽器の皮にしてくれようぞ』


 まさかこの世界に三味線があるとは思えないが...... それ以前に礼儀知らずはお前等だっつ~の!


おのが顧みてものを言えニャ」


 突撃してくる二匹のユニコーンをののしりつつ、猫パンチと猫キックを叩き込み、はるか彼方に吹き飛ばす。


「二度と来るニャ!」


 最後に捨て台詞で締め括ったところで、テントからルーラルが顔を出す。


「何故か聞き覚えのあるような声がしたのですが」


 そんな彼女に気のせいだと答えると、俺はマットの上で丸くなるのだった。







 王都アルルへ向かう旅路の三日目。

 その夜も昨晩と同じようにユニコーンが現れた。

 どうやら、二匹では太刀打ちできないと判断したのか、今夜は四匹のユニコーンが訪れたかと思うと、好き放題に罵声を轟かす。


『今日こそ、貴様を始末してやる』


『この猫がそうなのか?』


『猫如きが、犬の餌にしてくれる』


『お主達、こんな猫に負けたのか?』


 どうやら、本来の目的を忘れているようだ。

 気が付けば、ルーラルを奪取する目的が、いつしか俺を倒すこと変わっている。

 という訳で、彼等の口からはルーラルの『ル』の字も出てこなかった。


 というか、言葉を話す時点で、普通の猫じゃない事くらい解れよ。

 ユニコーンとは能無しか? いや、これはまさにロバコーンと呼ぶべきだな。


「ロバが何頭集まっても、烏合うごうの衆だニャ。さっさと消えるニャ」


 俺の啖呵たんかを聞かされたユニコーン達は、更にいきり立つ。


『なんと無礼な!』


『踏み潰してくれようぞ』


『噂通りの無法者だな』


『所詮は猫、軽く片付けてくれる』


 それぞれが俺に罵声を浴びせながら襲い掛かって来る。


 一頭目のユニコーンに猫キック、その反動を利用して二匹目に脳天踵落のうてんかかとおとしを、更に蹴りを浴びせた反動で身体を反転させて三匹目に猫パンチを繰り出し、四匹目は鼻先に爪を立てた挙句、猫キックで吹き飛ばす。


 そんな流れで、難なく四匹のユニコーンを掛け離れた草むらへと叩き飛ばす。


「口程にもないニャ。今度来たら尻の穴にニンジンを突っ込むニャ」


 捨て台詞を吐いた処で、テントからマルラが顔を出して声を掛けてくる。


「師匠、騒がしくないですか?」


「気のせいニャ」


 こうして三日目の夜を何事も無かったかのように終えた。



 ところが、四日目の夜。

 ユニコーンは八頭になっていた。

 どうやら、ユニコーンは二倍で増えていくルールでもあるらしい。

 今更、駄馬共の罵声を聞くのも鬱陶うっとうしいので、能書きをほざく前に叩き丁重にお帰り頂いた。

 当然、無傷で帰ったロバコーンなどいない。



 五日目の夜には十六頭が現れ、それを追い払うと、六日目の夜には三十二頭のユニコーンが現れた。

 ここまでくると、流石にルーラルも気付いたようだ。


「主様、これは如何いう事でしょうか?」


 表情をやや硬くしたルーラルから詰問されてしまった。


「ああ、余りにも無礼なんで、丁重にお帰り頂いてたら、日に日に増えたニャ」


 特に嘘を吐く必要も無いので正直に答えると、ルーラルは溜息を吐きながら追加の質問をしてくる。


「あの~、何故、多くの者が負傷しているのでしょうか?」


 ルーラルの言葉で周囲を見回すと、確かに半数のユニコーンが傷だらけで、今にも倒れそうな状態だった。

 恐らく、昨夜訪れたユニコーン達の傷が癒えていない所為だろう。


「どうも、ユニコーンとは血気盛んなようだニャ。誰一頭として大人しく帰らないんだ。というか、必ず襲って来るんだニャ」


「それで返り討ちにしたと?」


「ニャ~~!」


 最後は一鳴きで誤魔化したが、ルーラルは頭を横に振りながら、大きく溜息を吐いた。

 すると、怪我をしている集団の中から、一頭のユニコーンが現れる。

 その様相はと言うと、生きているのが不思議なくらいの状態だ。


『ルーラル、聞いてくれ。この猫が「お黙りなさい!」』


 そのユニコーンの台詞をルーラルは最後まで言わせない。


「あなた達が傲慢であることは知っています。恐らく、主様に不敬な態度を取った上に、襲い掛かったのでしょう」


 彼女はあたかも見ていたような口っぷりでユニコーン達をたしなめる。

 更に、それは俺にも飛び火する。


「確かにユニコーンが傲慢なのは理解してますが、これはいささか遣り過ぎではないですか?」


「うっ、すまんニャ~。悪気はなかったんだが、余りにもムカついてニャ。マルラ、治癒をしてやってくれないかニャ」


 ルーラルの諫言かんげんに耳を伏せて謝罪し、尻尾を仕舞い込みながら、マルラに治癒を掛けるようにお願いをする。


 しかしながら、ユニコーンは人間風情に治癒されるなんて許せなかったのだろう。彼方此方あちこちから罵声が飛んでくる。


『治癒など要らぬわ。その猫を始末してくれる』


『もう如何でも良いのだ。その猫さえ八つ裂きに出来れば満足だ』


『人間など汚らわしい。近寄るでない』


『その人間達も纏めて蹴り殺してくれるわ』


 その言葉で、少女達は戦闘態勢を取るが、ルーラルが押し止める。


「あなた達は愚かです。ユニコーンが優れているという考えは傲慢です。この者達と戦えば、あなた達は塵も残さずにこの世から消え去るでしょう。そうなった時に後悔しても遅いのですよ? 更に言うならば、主様は使徒様ですよ。本気で戦っていたら、あなた達など既にこの世のものではないのですよ」


 ルーラルの怒りの声を前にしてユニコーン達は後退るが、彼女は更に追い打ちを掛ける。


「もし、それでも戦うと言うなら、私が相手をしましょう」


 そう口にした瞬間、ルーラルがユニコーンの姿へと戻る。


 しかし、その美しくも力強い姿は、如何見ても目の前に並ぶ駄馬たちとは違うと断言できる。

 これまで夜の訪問だった所為で、その違いを詳しく比較する事が出来なかったが、ルーラルの身体は他のユニコーンに比べて、一・五倍のサイズであり、筋肉の付き方も全く違った。

 敢えて表現するなら、ロバとサラブレッドぐらいの差がある。


『おお~』


『なんと美しい』


『次代の女王に相応しい』


『これが、あのルーラルなのか?』


『いつの間に、こんなにも成長したのだ』


『わ、わた、私の嫁になってくれ!』


 ロバ達が口々にルーラルのその美しい姿を褒め称える。


 まあ、最後の愚かな台詞はスルーする事にして......

 それにしても、ゲンキンな奴等だな。てか、日本で言うなればミーハーという奴か。

 あと、次代の女王ってなんだ?


 女王というキーワードを疑問に思っていると、ルーラルがうるさいロバ達を一喝する。


『愚か者! 少し見栄えが良くなるとこれですか。出直してきなさい』


 あまり人の事は言えないが、出直されても困るんだよな~。お願いだから、二度と来るなと言ってやってくれ。


 ルーラルの罵声が響き渡ると、先程のユニコーン、恐らく一番初めに来た奴が声を上げた。


『ルーラル、私と一緒に帰ろう。母上も待ってるぞ』


 すると、ルーラルが荒い息を吐き出しながら即座に返答する。


『兄上、私は帰りません。私はこの方に一生仕えると決めたのです』


 どうやら、やつはルーラルの兄だったようだな。

 ん~、ちょっと遣り過ぎたかな......


 そんな兄も含め、全てのユニコーンがルーラルの言葉に驚愕しているようだ。

 でも、どうやら、これでどうにか収まりが付きそうだ......と、思ったのは間違いだった......みたいね。


 何故ならば、ロバ達は、よだれを撒き散らして騒ぎ始めたからだ。


『そんな猫のイチモツよりも、私の方がデカいぞ!』


『帰らぬなら、奪うまでだ!』


『ひひ~~ん! やっちゃうか! やっちゃうよね!』


『もう~堪らんわ~~!』


 ユニコーンって、実を言うと馬よりたちが悪そうだ。

 しゃ~ない。ルーラル一人に相手をさせる訳にも行かない。特に、俺のイチモツを否定した奴は我が手で殴り飛ばすニャ!


「戦闘態勢だニャ! ここなら被害も気にしなくて済むから、好き放題にやっちまうニャ」


「あんな下種な馬はお仕置きなのです」


 俺の声に、杖を突き出したレストが意気込みを見せている。


「女をはずかしめる事しか考えてないユニコーンなんてロバ以下です」


 マルラ、このゴミ達をロバ扱いしたのは褒めてやるぞ。


「たかがユニコーン風情が、星獣であるうち(・・)と遣るつもりなん? 一万年早いんよ」


 星獣の割には気の抜けた啖呵であおるメルティ。


「魔銃、撃っていいよね?」


 普段は乱闘に参加しない賢者エルカが不安そうに尋ねてくる。


「殲滅あるのみなの」


 既に全身甲冑となったミララが、くぐもった声でメイスを振り回している。


『みなさん、済みません。私の所為で......』


 ユニコーンの姿なので表情を読むことは出来ないが、とても申し訳なさそうにルーラルが謝罪の言葉を述べてきた。


『ただ、出来るだけ殺さないようにニャ』


 そんなルーラルを見遣り、俺は念話で全員に手加減をする事を伝えるのだった。







 虫さえも静まる深夜に、馬の悲鳴が轟く。

 実のところ、馬ではないのだが、その鳴き声は馬と同じに聞こえるのだ。


 他のユニコーンよりも一・五倍のサイズであるルーラルが前蹴りを叩き込むと、欲情したオスが吹き飛ぶ。


 情け容赦ない前蹴りを放ったルーラルに向かって、後ろから襲って来た敵をマルラが回り込んでレイピアで突き刺す。


 そこで動作の止まったマルラに襲い掛かろうとした別の敵が、ミララのメイスで吹き飛ばされる。メイスで殴られた敵が涎を撒き散らしてのたうち回るが、ミララはそんな光景を眺める事無く、次の敵に殴り掛かるべく振り返る。


 しかしながら、もはや立っている敵の姿は皆無だった。そして、その光景が戦闘終了だと俺達に告げてくる。


「どうやら、終わったようだニャ」


 全員が荒い呼吸を整えながら、俺の下へと集まって来る。


「流石にユニコーンだけあってタフなのです」


 レストが戦闘における感想を述べてくるが、まだまだ余裕のありそうな表情だ。


「というか、全員がおっ立てているのが......」


「ちょん切るの」


 何故か猛烈に発情していたユニコーンについての感想を述べたマルラに、ミララが究極の結論を叩きつけた。

 ただ、ミララの台詞には、男として少し背筋が寒くなるのを否めない。


「お恥ずかしい限りです。お見苦しい物をお見せして大変申し訳ありません」


 ユニコーン状態から人間体へと変身したルーラルが、とても恥ずかしそうに謝罪の言葉を口にするが、エルカがニコニコしながらフォローする。


「別にルーラル姉が悪い訳じゃないよ。あれはルーラル姉と全く関係ない動物だからね」


 全くその通りだ。やはり賢者はいう事が違う。


「まあ、ユニコーンのオスは最低だからねぇ」


 最終的に星獣のメルがオチを付けたのだが、荒れ果てた草原に転がるオス達の向こうから、更に別のユニコーンの集団が現れた。


「また集まって来たよ?」


 その光景を見たレストが思わず声に出すと、メルが危険なセリフを気軽に口にする。


「やっちゃう?」


 彼女は既に戦う気のようだ。


「いや、一応は話をしてみるニャ。けものじゃないんだからニャ」


 あれ? 俺って、獣? そうか、獣なんだよね......


 一応、みんなを静止してみたのだが、集まって来たユニコーン達は何を考えているのか、転がるオスに蹴りを入れ始める。


 おいおい、仲間じゃないのか? まるで死者に鞭を討つような雰囲気じゃね?


 そんな疑問を持ったのだが、ルーラルがその説明をしてくれた。


「どうやら、この愚か者達の嫁達が来たようですね」


 そんな説明に、なるほどと納得していると、一頭のユニコーンが俺達に近付いて来た。


『ルーラル、ごめんね。このバカ共が迷惑を掛けたみたいで』


 どうも、この綺麗な毛並みのユニコーンは、ルーラルの知り合いらしい。


『いえ、大丈夫です。というか、少し遣り過ぎたかもしれません。こちらこそ、ごめんなさい。義姉さん』


 ああ、あの馬鹿兄貴の嫁なのか。


『いいのよ。少しは良い薬になったでしょ。帰ったらお母様にしっかりとお灸を据えて貰うんだから。ああ、他の者達もね。これからはしっかり見張って、二度とこんな事を起させないようにするわ。それはそうと、お母様も心配してたわよ』


『はい。有難う御座います。私は元気で幸せにやってると、母にはそう伝えておいて下さい』


 二人の会話が進む後ろでは、オス達が蹴飛ばされながら帰路に就いたようだ。


「みんな帰り始めたし、俺達も休むとするかニャ」


 俺は締め括りの言葉を投掛けたのだが、少女達の表情からして、どうやらこのままでは終わらないようだ。


「戦闘で汚れたんだから、風呂に入らないと」


「うん。入浴なの」


「いや、俺は殆ど戦ってないしニャ~~~~~~~~~~~」


 結局、やっとのことでロバコーンを撃退したと思ったら、強引なマルラとミララに捕まり、再び風呂に漬け込まれる事となるのだった。

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