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幼馴染には隠し通す!  作者: ひーさん
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一気に完結まで書き上げてからの投稿になります。

完結までノンストップで毎日投稿です。

拙作ですがどうぞ読んでやって下さい。

今日は二話投稿で、次は0:00辺りを予定しております。



「なんで教えてくれないの?」


「それは・・・」


「ほら、今日もだ。なんの用事もないでしょう?守が何か隠してるのは分かってるの」


「・・・ああ。でも・・・教えられない。」


「もう私これ以上は無理。ねえ最後にもう一回聞く。何でなのか、教えて?」


「っ・・・。教え・・られない。ごめん。・・・ごめん」


「そう・・・。残念だわ・・・。私がどれだけ不安か分かってくれないんだね。信じているのももうしんどい。守が何か辛い思いをしているのは分かっても教えてくれなきゃわかんないよ」


「ごめん・・・」


「・・・そう。もういい。別れましょう。っ・・さようなら」


そう言った彼女、千智(ちさと)の顔は今にも泣き出しそうで、おれの胸はきつく、きつく、締め付けられた。


「あっ・・・。でもっ。・・・いや、さようなら・・」


そう言ったおれのの顔も同じようなものだったと思う。

俺の自宅の玄関のドアが閉まる直前、千智の頬に伝った水滴が夕焼け色に光った。

ドアが閉まったあと、俺は呟いた。


「教えられないよ・・・。だって俺はーー」



●●●●●



俺、(まもる)は小さい頃から両親に言われ続けたことがあった。


「夜に出ていい日は月に一日だけ。でもその日は私達が集まらなくてはならない日。だから周りの人たちには、夜は用事がある。と言って断りなさい。いい?絶対に外に出ちゃダメだからね」


素直な幼年期だった俺は素直に受け入れ、外に出ることなく、中学生にまでなった。

しかし、ある事件をきっかけに、外に出てはいけない理由と、自分が何者なのか知ることとなった。




その日、夜になり、いつもなら両親が帰ってくる時間になっても両親は帰ってこなかった。

俺は心配になりながらも、両親が帰ってくるまで待つことにした。


だが、時計の針の太い針が2のところを切っても帰ってくることはなかった。

こんな事は生まれて初めてだった。

月一の日以外に両親がこの時間に帰ってこなかったのは初めてのことだった。

いつもならどれだけ遅くても午後8時までには帰ってきていた。


俺はさすがに焦ってきて大丈夫だろうかと心配になった。

しかし、絶対のルールである夜に出てはいけない。

探しに行くのなら、そのルールを破ってしまう。

そこでふと、ある言葉がよぎった。


『守って名前、いいね!大切な人を守れる人になって欲しくてつけてくれたんだと思うな。へへ、私も守ってね』


それは、幼い頃の記憶、千智の言葉。

大切な人を守れるひとになる。

それは、何かあったのだろうかと心配していながらも、ルールを守らなくては、と、うじうじ悩んでいる俺の迷いを、さっぱり吹き飛ばした。


俺は、家から飛び出した。

先ずは、何か知っている事はないか、月一の集会のメンバーである嶋田さんの家に訪ねてみることにしようと、肌寒いかと思い、黒のフード付きのぶかぶかパーカーをかぶって駆け出した。


「何だこれ・・・すごいよ・・・!力が溢れてくる!」


俺はいつもとは桁違いに軽くなった体に驚きながらも、いまはそんな事より両親が心配だ。

なぜ軽くなったのか、自分の変化に気づくこともなく、暗闇の中を疾走する。


「嶋田さん!俺の両親を知りませんか?」


嶋田さんの家に着いた俺は開口一番、即本題を切り出した。

嶋田さんは驚いた様子だったが、一瞬眉を顰め、真剣な表情で口を開く。


「お父さん達は帰ってないのかい?」


「そうなんです!帰ってこないんです。なにか知りませんか?」


「そんな・・・。守君には言うなと言われていたのだがこの際そうも言ってられない。話そう」


嶋田さんからの話はこんな内容だった。

両親は、森のエキスパートらしい。

その為、森で行方知れずとなった、月一集会のリーダーである江川さんの捜索に向かったのだという。

早朝から出立していたため、帰ってきていないとおかしいと。

そして、リーダーが行方知らずになる程の事が森で起きているのだということ。

森で何が起こっているのか、もしかしたら、君の両親が危ないかもしれないと。


俺はすぐに決断した。

何やら、夜の方が視界が鮮明である気がする。

これなら大丈夫だと、嶋田さんに、俺は行く。

そう伝えて森へと向かう。


「本当に行くのか」


「当たり前じゃあないですか、家族も守れなくて何が守ですか」


「そうか。じゃあ行ってきなさい。今日は満月だ。危なくなったら走りなさい。どんな奴でもお前の脚には追いつけんさ。わかったね?」


神妙な様子で真剣に語りかけられた。

俺は素直に忠告を受け入れ、頭をさげるとすぐさま走り出した。

本当に妙だ。

いつもの数倍の速さで走れる。


「・・・・!!」


何と、自分の手を見ると、剛毛を優に超える獣の毛、そして鋭い爪。ゆるい格好で来たから気づかなかったが、体格も数周り大きく、獣のごとく体格だった。

森の途中で見た俺の姿は言うなれば二足歩行の狼だった。


一瞬思考停止したが、なぜか、驚きはしたが、嫌悪感は全くなく、これが自分であることが実感できた。

なぜ、夜に出てきてはダメなのか、その意味がわかった。

小さな頃によく読んでもらった絵本の内容を思い出しながら自分の正体に思い至る。

俺は人狼なのだ。恐らく、両親も人狼で、月一集会は人狼達の集まりだったのだ。

新月ならば、月の光を浴びて狼になる心配がないからだ。


ここで、この力なら両親を守れると一瞬考えたが、その思考はすぐに取り払われた。

この力を持ってして、両親が太刀打ちできない相手。

その存在に立ち向かえるのか。

もう一度思考を振り払う。

すぐさま両親を探して駆け出した。

俺がこんなことでどうする!


森を掻き分け、両親と思われる二人組の足跡をたどっていった。

すると、両親と思しき人狼と、月一集会のリーダーと思しき一際大きな体躯の人狼が一頭の巨獣と交戦しているのが目に入った。

母さんは手傷を負い、リーダーと、父さんも、疲弊しきっているようだ。

相手の巨獣は樋熊だ。

普通の狼では戦闘にすらならない程の巨大な体格。

こんな相手では3人がかりとはいえ勝つことは容易くないであろう。

俺はすぐさま駆けて近づく。


「父さん!」


「・・!!守!!何でここに来た!」


「心配だったからに決まってるじゃないか!」


「ふざけるな!何てことだ。おまえには人として生きさせてやろうと思っていたのに」


父さんは苦虫でもかんだような顔でそうこぼした。


「父さん!お絵は後悔なんてしないよ!ここで父さん達を失うなんてありえない!絶対に助ける!助けられなくて何が守だ!」


「そうか・・だが!このままでは家族全員全滅だ!お前は母さんを頼む!」


「いやだ!それじゃ父さんが!俺もそいつを倒す!」


「ダメだ!大丈夫だ。父さんは負けたりしねえ。守。お前には大切なやつを守る見本ってもんを見せてやる」走れ!守!母さんを連れてとにかく走るんだ!」


「ぐっ!でも!・・・わかった!母さんは絶対守ってみせる!だから、絶対そいつ倒して帰ってきて!」


「おう!絶対たおしてやる。行くぜ!リーダー!母さんを連れて走れ!守!」


そう言ってリーダーと、父さんは樋熊に向かっていった。

その勇敢な背中は、今まで見てきた中で一番かっこよかった。

俺もいつか、父さんのようになりたい。そう思って、母さんを担ぎ、自宅へと全速力でかけた。

それが、父さんと交わした最後の会話だった。


自宅に着いた時急いで母さんをベットに横たわらせた。

その時、母さんのお腹が裂けていることに気づいた。

母さんは呻きながらこちらを見る。


「守。よく聞きなさい。かあ、さん、は。もうダメ。自分の身体は自分が良くわかってる」


「母さんっ!何をっ!そんなこと言わないでよ!」


だがどんどん血色に染まっていくベッドのシーツがそれを如実に真実だと伝えているかのようだった。


「あのね、人狼は人間とでも子供を産めるの。でもね、生まれてくる子供は狼の特徴を受け継ぐ事は殆どないの。でもね、ちゃんと理解してくれる人を選びなさい。だけど、もし、世に人狼の存在が広まってしまったら、人狼全員が危険に侵されると思うこと。もしその人が、言いふらしそうなら・・・わかるわね?」


おれは肯首した。

俺がこれから困らないように色々教えてくれる。

それは恐らく父さんが助からないと、母さんは確信でもあるのかと勘ぐってしまう。


「此処からは、守の母さんとしての言葉。母さんはね、守と同じように、樋熊に両親を襲われて、その時に自分が人狼であることに気づいた。その時助けてくれたのが父さん。私を守ってくれたの。でね、守もそんな人を見つけてほしい。幸せになってね守」


胸の奥から込み上げてくる。

どんどん涙が溢れてきて、止まらない。

何で、何でそんなことを言うの?

死んじゃダメ、死んじゃダメ。


「があざんっ・・・!居なぐならないで!俺、があざんが居ないと幸せじゃないよ!」


そんな俺を見て、母さんは微笑んだ。

その笑顔は慈しみに溢れていて、後悔なんてないとでも言いたげだった。


「守。大好きだったよ。母さんこんなに愛されて、幸せだったよ。ね、だから守。悲しまないで?笑顔で居てね?」


母さんは瞳を閉じ、一休みするのであるかに思えた。

しかし、数秒後、急に、ふっと生気が抜けた。

本当の意味で、全身が脱力する。


「母さんっ!!」


俺は、一縷の望みに賭け、名前を呼び掛ける。

然し、その声は届く事はない。

母さんは、たった今、亡くなったのである。


「そんなあっ。母さんっ!母さんーーー!」


俺は中学生であるにも関わらず、慟哭の声を上げて泣き続けた。

俺は、朝まで泣き続けた。

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