~ 第八話 エピローグ ~
これにて一章が終了です。
あれから幾日もの日々が過ぎました。
私の日常は、大きく変わったようでいて、実はあまり変わっていません。
あのオークさんに会って、綺麗な顔にしてもらった日。森から無事に帰ってきた私を、お父さんもお母さんも泣きながら抱きしめてくれました。私だと分かってくれるまでに時間がかかったことは悲しいですし、お尻のほくろのことはまだ許せませんが、それはそれ、です。
それどころか、村中の人が『無事でよかった』と声をかけてくれました。みんな、村から急に姿を消して、一晩経っても戻らなかった私を心配してくれていたそうです。何人かの男の人は、危険を承知で森の中にまで探しに行ってくれていました。本当に、申し訳ないです。
あと、婚約していた男の子とその家族は、泣きながら謝ってくれました。酷いことを言ってすまなかった、と。私がいなくなったと聞いて、自分達の口論を私が聞いてしまったことに気付いたそうです。彼らは、私の家族にも謝ってくれていました。
私は、忘れてしまっていたのです。自分が大好きだった、この村の人達の優しさを。この村が好きだった、一番の理由を。本当に、ダメな娘です。
顔が綺麗になっても、村の人の私に対する接し方は変わりません。少しだけ、村の男の子の私を見る目が変わった気もしますが、それはご愛敬です。
女の子からは、『美人になって羨ましい』なんて言われますが、今まで通りの友達付き合いを続けてもらっています。
顔じゃなかったんです。
ブスだろうとなんだろうと、メアリーという一人の人間を村の人達は大切に思ってくれていたんです。ブスだったころの私は、そんなことすら見えていなかったんです。
そういえば、あのオークさんはどうしているでしょうか?
村の人達には、あったことをそのまま話しましたが、誰も信じてはくれませんでした。『オークは酷い化け物だ』とみんなが怖い顔をして言うんです。
結局、村の人達は、私が“森の賢者様”に顔を綺麗にしてもらったと思っています。
それはそれで、間違っていないと思います。私の顔を治してくれたオークさんは、間違いなく賢者様ですから。
賢者様が元の人間の姿に戻れた時、もう一度お礼を言えることを願っています。オークのままの姿だと、感謝の気持ちがちゃんと伝わっているかが不安なんです。あの人は、私の命の恩人です。その気持ちを、ちゃんと伝えたいです。
ブスだった頃は絶対に見たくなかった、鏡に映る自分。今、映っているのはまるで別人のようです。
オークさんが見せてくれた、あの薄い不思議な板に映っていた美人さんにそっくりな顔。だけど、よく見ると至る所に、メアリー=クルーエルがいます。この顔は、間違いなく私の顔です。
自分の顔を愛せるということは、幸せなことです。それはきっと、自分を愛することに繋がるから。ブスな自分を愛することが出来なかった、弱くて情けない私に、神様がくれたプレゼント。これからは、ちゃんと自分を愛してあげたいと思います。
鏡をしまい、私は家の外へと飛び出します。
キラキラと朝日が照らす、新しい一日。今日も頑張って生きていきたいと思います。
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