~ 第六話 人・豚 人材交流事業 ……オークの場合、豚材じゃね?
タイトルはちょっとふざけ気味ですが、少し真面目な内容もありです。
「それでは、また会えることを楽しみにしているぞ、アルト殿」
オルブライト様が差し出した手を、優しく握ってシェイクハンド。加減が分からないので、スーパーソフトだ。万が一にも強く握り過ぎたらえらいことになる。
「アルト殿に依頼する件、決まり次第、私がお伝えに参ります」
今日も今日とて白髪ダンディーなハリソンさんが、渋めのダンディーボイスで俺に告げる。男が惚れる漢とは、きっとハリソンさんのような人のことをいうんだろう。石原さん家の軍団とかにいそうだもん、ハリソンさん。
「アルトさん、グレゴールさん。二人のこと、どうかお願いしますね」
リリーちゃんだ。
今回はいつもと比べればあまり話す時間が取れなかった。ただ、やはり今まで築いてきた関係があるからか、彼女が側にいてくれると安心するんだ。オルブライト様達と普通に話すことが出来たのも、リリーちゃんの存在が大きいと思う。
「よし。では、出発!」
オルブライト様の号令によって、隊列が動き出す。
こういう時、普通ならば貴族様は馬車に乗って移動するらしいのだが、オルブライト様は自ら馬に跨っていた。
ハリソンさん曰く、オルブライト様はやんちゃな領主らしい。狩りに乗馬といったアウトドアが趣味とのことだ。この世界におけるリア充な貴族ライフを満喫しているようだ。
ふんっ! 俺だってイケメンオークとして、リア充スローライフを送ってるもんねっ! 羨ましくなんか、ないもんねっ!
………
……
…
「さて、アルトさんよ! よろしく頼むなっ!」
ハリソンさんのダンディーボイスとは違うが、これまたモテそうな男の声が聞こえる。イメージとしては、ちょっと不良っぽいけれど、なんだか面倒見のいい兄貴分の声だ。
そのモテそうな声の主は……犬である。
まごうこと無き、白い犬なのだ。
とまぁ、もったいぶってはみたけれど、この犬人族の正体はみんな大好きジョンさんだ。ハリソンさんの相棒で、リリーちゃんの護衛さん。
ふさふさの毛を持つ白い犬。しかも声はヤンチャ系のイケメンボイス。
果たして彼が日本に行ったとき、どうなるのであろうか。なんとなく、種族の壁を簡単に飛び越えて、モテモテになりそうな気がする。なにせ日本は、白い犬がお父さんになれる国なのだから。
さて、なんでジョンさんがここに残ってるかだけど。
リリーちゃんが、「二人のことをよろしく」って言ってたろ? その二人のうちの一人がジョンさんなんだ。ちなみにもう一人はサリーちゃん
この二人が、人間とオークの人材交流事業の記念すべき第一回目に選ばれたのだ。パンパカパーン!
えっ? 話が飛び過ぎていて分からない?
実は、そんなに大した話じゃないんだよな。
これから人間とオークが仲良くしていくにあたって、お互いがお互いを知っていく必要があるって話になったんだ。
とはいえ、さすがにオークが人間の街にいきなりお邪魔するわけにはいかない。そんなことしたら間違いなく大パニックになっちまうし、そもそもオークがホームステイ出来る設計の家がない。
ってなわけで、まずはオークの集落に、人間をお迎えすることから始めていこうとなったわけ。
ただ、こちらとしてもいきなり大人数で来られるのは困る。それこそ、鎧をつけた人達が大量に来た日にゃ、衝突が起きてもおかしくない。
なので、顔見知りであるサリーちゃんともう一人。そこにジョンさんが志願したというわけだ。
なんとジョンさん、冒険者時代に学んだらしく植物に関する知識が豊富らしい。採取してきたモノを高く売るために頑張って勉強したそうだ。
そんなジョンさんなので、コショウの実をスパイスの形にするやり方も教えられるし、他に使えそうな植物がないかを探してくれるとのこと。正直めっちゃ嬉しい!
……まぁ、葛藤がなかったわけじゃないんだけどな。
冒険者だったサリーちゃんと違って、ジョンさんは騎士だ。オルブライト様に忠誠を誓っている。それはすなわち、人間の利益を最優先して動くということだ。命令があれば、彼はオークと殺し合うことも厭わないだろう。
そんな人物に、集落の居場所を教えるのだ。
ジョンさんは優秀らしいので、集落の場所はオルブライト辺境伯家に把握されると考えていい。人間にとっては森の奥地にあるため簡単に手を出せるわけではないだろうが、それでも場所を知られるというのは大きい。
この点について、グレゴールともかなり長い時間、相談をした。
嫌なことだって考えた。もし、人間が裏切ったら? 俺達オークの集落目指して一直線に攻めてくることになるだろう。
その時は、二度と攻撃しようだなんて思わないようにするために、人間の村を一つか二つ滅ぼす必要だって出てくるかもしれない。下手すりゃ全面戦争ってことも有り得る。
そんなリスクを承知の上で、それでも俺がジョンさんを受け入れようと思ったのは、やはりリリーちゃんへの信頼なんだと思う。
オルブライト様も、そして今回の当事者であるジョンさんだって信用出来そうだとは思う。でも、彼らだけだったら、集落にまで連れて帰ることはなかっただろう。
リリーちゃんなら、俺たちを裏切るようなことはさせない。なにがあっても止めてくれるはずだ。俺は、彼女を信じた。
そんな俺に対し、グレゴールが何を思ってこの人材交流を了承したのか。俺には分からない。
グレゴールにはグレゴールなりに、考えるところがあるのだろう。少なくとも、俺の意見に流されて納得するような奴では絶対にない。ただ、その真意はまだ聞けていなかったりする。
願わくば、なんのトラブルもなく交流して、オークと人間がより一層近づく材料になって欲しいもんだ。
新しく友達を作るってのは、なかなか難しいもんなんだな。
アルトとグレゴールの判断……まぁ、事後報告ですよね(´・ω・`)
人間ならば、『一度持ち帰って相談してからお返事します』が正解でしょう。場合によっては集落の未来を左右しかねない案件なのですから。
少なくとも、アルトの前世である水川君ならこんな判断はしません。そういう意味では、アルトもオークに染まっているのかもしれませんね。
今回のお話は、書きながらなんだか考えさせられることが多かった印象です。
それではまた次のお話で。香坂蓮でしたー。




