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~ 第二話  アルトの、得々ショッピング! ~

よろしくお願いします!


では、どうぞっ!

 ゴブリンが性欲を我慢してでも欲しがるもの。ダメだ……思いつかない。


 ここが日本だったらな……。いますぐ大人のお店に走って、ダッチワイフでも買いに行くところなのに。なんとかそれで性欲を発散してくださいって言えば……さすがにゴブリンに怒られるか?


 でもさ、性欲を自己発散出来るようなものがないってのも、一つの原因だと思うんだよな。ダッチワイフがあれば、過剰な部分の性欲を発散出来ると思うんだよ。


 とはいえここは森の中。俺は不器用なことで定評のあるオーク。……作れるはずもないよね、ダッチワイフ。まずシリコンが無いし。


 スキルを使って美容整形用のシリコンを……イブさんが許してくれるわけないな。


 ってか、あんなもんからダッチワイフなんか作れたら、立派なダッチワイフ職人だよ。そんな巧の技、さすがに無理だ。


「アルト……大丈夫か?」


 サリーちゃんが心配そうな顔でこちらを覗きこんでくる。


 今日は一日、おとなしく過ごしてくれたみたいだ。アルミンやナディア、その他の若いオークに頼んで見守ってもらってるとはいえ、用心するに越したことはないからな。


 うーん……サリーちゃんに聞くのもどうかと思うけど、今は少しでも知恵が欲しい。地面に書き書き……最近小枝を使って字を書くことを覚えたアルト君です。


 いやぁ、小枝って便利だね! 指で書くよりもキレイに字が書けるよ! なに? 気付くのが遅い? 自覚してるよっ!


 事情を簡単に説明して、本題に入る。しばらく悩んだあと、サリーちゃんはこんなことを言った。


「俺が使ってたナイフ……あれなら、ゴブリンも使えるんじゃね?」


 おぉっ……あったな、そういえば! サリーちゃんを捕まえた初日に没収してたから、存在を忘れてたよ。


 ってかさ、今までナイフ無しで色んな雑用やらせちゃってゴメンね? あれがあれば、もっと作業がはかどった気がプンプンするよ。


 忘れてたことを詫びつつ、俺はサリーちゃんにナイフを返す。


「……いいのか?」


――なにが?


「いや……武器を渡して」


――しんじてるよ。


「……そっか」


 まぁ、攻撃されたところで、そのナイフじゃあ致命傷にはならないってのもあるんだけどな。それこそ目とか首とかを狙われない限り。特に目はヤバいかな。


 とはいえ……信じてるってのも、本音だぜ? サリーちゃん、いい子だもん。武器を持ったからって突然襲い掛かって来るような子じゃないってのは、よく分かってる。


 ナイフを見つめ、嬉しそうな顔で笑うサリーちゃん。うん……そういう意味じゃないって分かるけど、怖いから止めたほうがいいよ、それ。


「これならゴブリンでも使えるだろうし、生活だって便利になるんじゃねぇか?」


 確かにナイフを使いこなせれば便利だな。


 ってか、今まで人間の装備品ってスルーしてきたけど、よく考えたらゴブリンなら使えるんだな。ナイフもそうだし、例えば剣とかだって使えるじゃん。


 オークと戦えば、たいていの道具は壊れちまう。だけど、なんとか使えそうな状態で残るものだってあったはずだ。


 ただサイズが合わないし、オークの場合、力が強すぎてすぐに壊しちゃうからスルーしてたんだよね。自分達が使わないからって、今までもったいないことしちまってたんだな。これは反省だ。


――このないふ……もらっていいの?


「あぁ……そいつらは投げナイフだから、安物なんだ。こいつだけは、俺が持っててもいいか?」


 確かに、サリーちゃんが持ってるナイフは、他のに比べて作りがよさそうだ。きっと大事なモノなんだろうな。もちろんオッケーに決まってる。


 サリーちゃんに了承の意を示してから、俺はゴブリンに渡す分の投げナイフを確認する。全部で六本……これだけで納得はしてもらえないだろうけど、交渉の材料にはなるはずだ。


 少し希望が見えてきた気がする。ありがとう! サリーちゃん!


「元はと言えば俺のためだろ? 気にすんな」


 ニカッと笑うサリーちゃん。イケメンと美人の比率が三対七くらいだ。男装とかしたら似合いそう。誰かっ!大階段を用意しろっ!


 よし! 明日、もっかい交渉してみよう。今日よりは話を聞いてもらえることを祈るのみだな。


………

……


 ってなわけで翌日。再び朝も早くから、ゴブリンの集落へと向かう。


 オークの身体からすればナイフのサイズが相当小さいから、無くさないように、指を切らないように注意しながら進む。……まぁ、皮膚が分厚いから、思いっきり突き刺しでもしない限り傷にはならないんだけどな。


 にしてもさ、このナイフ、鞘が無いんだよね。そんでもって、確かサリーちゃん、ジャケットの裏側にこのナイフを入れてたんだよ。


 ……怖くね!? なんかの拍子に間違って刺さったらどうすんのさ! あの子はなんて危ない事をしていたんだ! お父さん、怒っちゃうぞ!?


 なんて、いまさらなことを思ってるうちに、ゴブリンの集落にたどり着く。


 昨日同様、ゴブリンの皆さんに集まっていただき、プレゼンテーションスタート。その睨み付けるような表情を、笑顔に変えてみせるぜっ!


 本日の商品はこちら! 人間製のナイフでございますっ!


 なんとこのナイフ! 物が切れるんですっ! 


 ほらっ! こんなに太いツタだって、あっさりと切れてしまう! なんて便利なんでしょう! 他にも、木の実を取る時なんかにも使えますね!


 護身用にも使えますよ!? 狼くらいなら、このナイフ一本で見事にやっつけられるはずです。なんてったって、よく切れますから!


 えっ? お高いんでしょう?


 ご安心ください。今ならこのナイフ、六本セットで、なんと! 無料で差し上げます!


 無料ですよ!? 無料!


 さらに、アフターサービスとして、今後オークが人間の道具を手に入れた際には、優先的にゴブリン様にお譲りすることをお約束します。


 ただし一つだけ! 条件があります。


 今後、人間の女性を襲わないでください。子作りは、ゴブリン同士で行ってほしいんです。皆さまの迸るような熱い愛情は、ゴブリン同士でぶつけ合ってください!


 さぁ! 充実の、ナイフ六本セット! こんなにお得に手に入るのは、今だけですよ!? なんてったって、無料ですからね!?


 ……完璧だ。見ろっ! ゴブリン達の興味津々な顔を! どうだ! 欲しいだろう?


『ゴブゴフゴブ! ゴブゴフゴ!』 (これ知ってる! 手が切れるやつだ!)


『ゴブゴ! ゴブゴ!』 (危ないやつだ! 危ない!)


 ……え? ゴブリンの皆さん、ナイフの存在をご存知で?


 詳しく聞いてみると、どうやら今までに何人ものゴブリンが、森に落ちていたナイフを掴んでケガをしてきたらしい。人間の死体の側に、落ちていることがあるそうだ。


 ……刃の方を掴んだんだな? 刃の方がギラギラしてるから、興味を持って掴んじまったと。


 そりゃ危ないわな。下手したら、指落ちるぞ? えっ? 落とした奴が何人もいる? ……聞かなきゃよかったよ。


 そのせいもあってか、人間の使ってる道具は危ないから、下手に触らないようにしてたらしい。だから今まで、女は欲しがっても道具は欲しがらなかったんだな。


 ひとまず、ゴブリン相手にナイフの使い方講座を開講する。


 ここは刃になってるので、触ったら切れますよー。持つときは、この持ち手の所を握りましょうねー。


 ……子供が初めて包丁を握る時にする注意だと思えば、ちょっとは可愛げもあるだろ? 林間学校みたいなもんだ。


 あぁ……カレー食いてぇ。


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