~ 第十一話 嫌な知らせ ~
よろしくお願いします!
では、どうぞっ!
朝起きて、身支度を整える。
ちなみに今は、アルトの家に居候させてもらっている。両親と一緒に住んでいるアルトが「そろそろ一人暮らししないと」って言ってたのには、思わず笑ってしまった。お前はお坊ちゃまかよってな。
三週間もの間、お客様みたいに何もせずにいるのは性に合わない。だから俺は、アルトに付いて回ってオークの仕事の手伝いをさせてもらっている。
これでも結構役に立ってるんだぜ?
力仕事じゃあ全然役に立たないけれど、その分細かい作業は俺の方が断然得意だ。なんでも力技でなんとかしようとするオークの中じゃあ、俺は便利な存在だと思う。
例えばさ? 今日は採集に行くらしいんだけど、俺なら木に登ることだって出来る。だから、高いところに生っている実だって取れる。アルトに持ち上げてもらえば、木に登るのも楽だしな。
身体のデカいオークじゃ、木登りなんか絶対に無理だ。あいつら、高い所の実を、石を投げて落とそうとするんだぜ? どうか考えても実が潰れるだろうよ! まったく無茶しやがる。あの実、たぶんいい値段で売れるぜ?
他にもオークのとんでもエピソードは数えだしたらキリがない。基本、深く考えず、力技でなんとかしよという結論に至るのが早すぎる連中だからな。見ててハラハラすることが多いんだよ、マジで。
準備もだいたい出来たところで、アルトが家に戻ってきた。そういえば、今日は珍しく朝から居なかったな。朝の早い時間帯は、いつものんびりとしてるのに。
……重い雰囲気だな。なんかあったか?
――はなし、できる?
「んあっ? そりゃ、出来るだろ?」
どうしたんだ急に? 今まで散々話してきたじゃねぇか。
――しんこくな、はなしだ。
アルトのその言葉に、姿勢を正す。なんだろう? 人里に帰れない、とかか?
――あぶないから、しばらく、ちゅういしてほしい。
いや、それはいいんだけどよ? 危ないってなんだ? なんかあったのか? 場合によっちゃあ俺も力になるぜ?
問いかける俺に、アルトは答えた。
――ごぶりんが、きみをねらっている。
………
……
…
オークは、人間の女を攫って犯す。俺たちの間でそう言われることになったのには理由がある。
昔、オークに遭遇して壊滅状態になったチームがいたそうだ。生き残ったのは一人、俺と同じく斥候役だったらしい。その男は、敗色が濃厚になる前にオークから身を隠したそうだ。
仲間を見捨てたその男の前でチームは壊滅。残ったのは、ケガをして動けない男と女の冒険者が一人ずつだったらしい。
そしてオークは、もはやなんの抵抗もできない男をあっさりと殺し、女は生かしたまま連れ去ったそうだ。
明らかに、女だけを選別して連れ帰ったオーク。その目的は性的なものであると判断された。
これが、『オークは人間を攫って犯す』と言われるようになったきっかけだそうだ。そしてそれ以降も、真偽は分からないが同様のケースが数件報告されている。
だけど……俺はこの集落に連れられてから、一度もオークに犯されていない。
少し前に一度、アルトに聞いてみたことがある。オークは人間の女を犯すと聞いていたが、それはガセなのかってな。
アルトは、文面に悩みながらも、頑張って答えてくれた。
人間を犯すのは、オークではなくゴブリンらしい。ゴブリンにとって人間の女は絶好の獲物だそうだ。
そして前にも聞いた通り、オークとゴブリンと共生している。
だから、生きたまま人間の女を捕えた際には、ゴブリンに引き渡していたそうだ。それが人間に誤解されて、『オークは人間の女を犯す』という風に信じられたんじゃないかということらしい。
人間の女として言いたいことは色々あったが、それ以上に一つ、疑問があった。それは、なんで俺はゴブリンに引き渡されなかったのか、ということだ。
でも、アルトの説明を聞いてすぐに納得出来た。どうやら俺はラッキーだったらしい。
オークは最近になって人間の文字を覚えることが出来、人間と仲良くしようと思い始めたところだ
そんなタイミングで俺たちのチームと戦闘になり、そしてたまたま女が一人、生き残った。他のメンバーと違って途中で気絶しちまったからな、俺。
人間と仲良くしようというタイミングで、人間の女である俺をゴブリンに引き渡すのはいかがなものか。オーク同士で相談した結果、俺は人里へと返してもらえることになったらしい。
……もし俺が、もう少し早くオークに捕まっていたら。オークが字を覚える前に捕まっていたら。今頃ゴブリンに引き渡され、散々犯されていたはずだ。
想像するだけでゾッとする。
初日に、ゴブリンには注意するように言われていたから近付かないようにはしてたけど、それを聞いて以降はさらに注意するようになった。
オークのみんなは優しくしてくれるけど、やっぱりここは危険な森の中なんだってことを再認識させられたよ。
そして今、そのゴブリンがアルトに怒っているらしい。アルトが人間と仲良くしようと言い出した張本人だからだそうだ。
……俺の勘、当たってたな。
やっぱりアルトが、みんなの中心にいたんじゃねぇかよ。他人事みたいな言い方して、かっこつけちゃって。まぁ、それがアルトらしいんだけどな。
話を戻すぜ?
今までは、人間の女は自分達の性欲処理の道具として貰っていたのに、アルトが余計なことを言ったせいで、それが無くなってしまった。だから、ゴブリンからすればアルトが許せないらしい。
ましてや今、すぐ近くに人間の女である俺がいる。言ってみれば、目の前に餌をぶら下げられて、お預けを喰らってるようなもんだ。そのせいで、特に若い雄のゴブリンが殺気立ってしまっているらしい。
――とりあえず、ごぶりんをせっとくしてみる。
事情を説明したうえで、改めてゴブリンには気をつけるように注意してくれた後、アルトはそう言ってくれた。
正直……心配だ。
俺のせいでアルトがゴブリンに襲われでもしたら、本当に申し訳ない。ただでさえ散々迷惑を掛けてきているのに、これ以上迷惑をかけたくない。
その気持ちを伝えると、アルトは笑ってこう答えた。
――おんなのこをまもる。それがおとこのしごと。
そう答えたアルトは、本当にかっこよかった。
やっぱ……男は顔じゃねぇな。中身だよ、大事なのは。
これにて7章が終了です。
さて、次の章が拙作二度目の山場。頑張って書くぞー!
香坂蓮でしたー。




