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ビューティー・オーク  ~ オークになった美容外科医、世界を変える ~  作者: 香坂 蓮
ちょっ! マジ、自分違うんっすよ! 不審者じゃないッス! ……誘拐犯っ!? 違いますからっ!
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~ 第五話  メアリー=クルーエル、二度目の受難 ~

お久しぶりの登場です。


では、どうぞっ!

 メアリー=クルーエル、ただいま絶賛困っていますっ!


 目の前には、明らかに身分の高そうな騎士様が二人。どうすればいいんでしょうかっ! ……誰か助けてくださいっ。



 皆さん、お久しぶりです。メアリー=クルーエルです。覚えてくれていますか?


 森で大賢者様に出会い、ブスだった顔をキレイにしてもらってからもうすぐ五年になります。私ももう、二十歳になりました。ふふっ、大人の女ですね。


 あれから、私の生活は変わっていません。家でお母さんの手伝いをして、村全体の仕事も手伝う。変わらない毎日の幸せを噛みしめながら過ごしています。


 結婚はまだしていません。


 なんでしょう。ブスだった頃はあれほど焦っていたのに、あれほど不安だったのに。今は不思議と気にならないんです。


 キレイにしてもらったこの顔だけじゃなく、私自身を愛してくれる人と結婚しようと思うのは、きっと贅沢なことなんでしょうね。ですが、それこそが幸せなんだと思います。そこだけは妥協しないでおこうと思います。


 あと変わったことと言えば……そうですね。時々ですが、街から私を訪ねてくる人がいます。


 森に入ったブスな娘が、大賢者様に出会って顔を美しくしてもらう。物語として面白いんでしょうね。街で詩や劇を作っているという人が、話を聞きにくるんです。


 みんな、私の不思議な経験を聞いては面白そうな顔をしてくれます。ですが誰も、大賢者様がオークの姿をしていたことは信じてくれないのです。それだけが唯一悲しいです。


 そんな穏やかな私の日常。それがある日、一気にひっくり返ったのです。


………

……


「失礼っ! メアリー=クルーエル殿はいらっしゃるか?」


 男の人のよく通る大きな声が村中に響きました。しかもその声が、私を呼んでいます。


 畑仕事をしていた私は、思わずお母さんの側で小さくなってしまいました。


「これは騎士様っ……いかがされましたでしょうか?」


 村の中でも頼りになる、隠居したおじさまが応対に当たります。


「この村に、メアリー=クルーエルという名の女性がいると聞いたのだが、いかがか?」


「その娘でしたら、あそこにおります」


 おじさま!? そんなあっさりと私を売るんですか!? そこは隠すとか庇うとか、あるんじゃないんですか!?


 なんてことを心の中で叫んでいるうちに、騎士様方がこちらに向かって歩いてきます。どうしましょう……私、何かしでかしてしまったのでしょうか。


「失礼! メアリー=クルーエル殿であられるか?」


「は……はい。メアリーであります」


 震える声でなんとか答えます。


 たまに妄想で、白馬に跨った騎士様と逃避行をする、なんてことを考えていましたが、とんでもないことです。


 鎧を着た騎士様……とても怖いです。こんな方との逃避行なんて、それはもう誘拐以外の何物でもないと思います。あと、馬が茶色いです。


「辺境伯様よりお手紙を預かっている。人払いを願いたい」


 どうしましょう! 緊張のあまり、騎士様が何を言っているのかが分かりません。人払い……なんですか、それ?


「かしこまりました。粗末な所で申し訳ありませんが、私どもの家へとご案内いたします」


 お母さんっ! なんて堂々としているのっ! 私、お母さんを尊敬し直したよっ! すごいよっ!


「それはありがたい。是非お願いする」


 騎士様の言葉に、家の方へと一歩踏み出すお母さん。……あっ、腰が抜けた! お母さんっ!大丈夫!? 脚ガクガクじゃない!


「メアリー殿、そしてご母堂。何も心配することはありませぬ。ただ少し、話を聞かせていただきたいだけなのです」


 なんだか少し優しい言葉遣いになった騎士様。出来れば最初から、優しく声をかけて欲しかったです。


 とりあえず、何かの罪で捕まるというわけではなさそうで、ホッとしました。……いや、心当たりはないですからねっ!? 本当ですよっ!?



「まずはメアリー殿にお聞きしたいことがある」


 あの後、さすにクルーエル家では騎士様を迎えるのに粗末すぎるということで、村長の家にお邪魔することになりました。


 村長……安全そうだって確かめてから、こちらに来ましたよね? 私、忘れませんからね?


「は、はい。なんでしょうか!」


 背筋を伸ばし、大きな声で答える私。


 隣では、お母さんが同じ格好で座っています。ちなみに、さっき狩りから帰ってきたばかりのお父さんは、私達二人よりもさらに緊張しているみたいです。震えてるのが床を通して伝わってくるのです。


「メアリー殿、貴女が森で大賢者に出会い、その顔を美しくしてもらったという噂話を聞いた。これは真であるか?」


 口調が、騎士様モードに戻っているのがいけないと思うんです。その口調は、緊張を呼ぶんです。思ってるだけで、絶対口には出しませんけれども!


 余計なことを考えていてはいけません。騎士様の質問に集中しないと!


「はい。間違いないです」


 私の答えを聞いた騎士様は、お父さんの方を向きました。あっ、お父さん、さらに固まっちゃった。


「クルーエル殿。間違いはないか?」


「は、はいっ! その……メアリーが美しくなったのは、事実であります!」


 お父さん、頑張って! 大黒柱でしょっ!?


「ふむ、分かった。メアリー殿。……辺境伯様よりお手紙を預かっている。この場で読んでいただきたい」


 辺境伯様……この村を支配する領主様のはずです。あまりに雲の上の存在過ぎて、現実味がありませんが。しがない村人である私からすれば、領主様も王様も一緒です。


 騎士様から、お手紙を頂戴しました。


 紙が……高そうです。見たことのない、それでいてすごく威圧感のあるハンコが押されています。


 私は、絶対に破らないように全力で注意しながら、その手紙を開くのでした。


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