表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/109

~ 第二話  アガサ、頑張る! ~

しばらく、一日一話更新になると思います。申し訳ないです。


では、どうぞ!

あれから、もう三年ですか。


 お久しぶりです。オルブライト辺境伯家でお世話になっているメイド、アガサ=ゴートンです。


 二十二歳……私、行き遅れたんですかね?後輩が続々と結婚していくんです。ちなみに、以前言っていたお肉屋の宅配の人……後輩に取られてしまいました。……シュン。


 ですが! まだ、お肌もぴちぴちで水だって弾きます! おっぱいだって垂れていません! 私まだ、戦えます!


 えっ? 私のことはどうでもいい?


 ふふん。いいんですか?そんなこと言っちゃって? 今の私、結構重要なポジションにいたりするんですよ? 知りたいでしょー?


 ……すいません。聞いてください、お願いします。

 

 なんと! 私、アガサ=ゴートン! リリーお嬢様の部屋付きメイドへと昇格致しました! パンパカパーン!


 これまでリリー様の部屋付きメイドに就いていた先輩が、結婚・出産のためにお屋敷を辞されたんです。それで、キャリアが長くてリリー様も懐いている、という理由で私が後任に選ばれたのです。


 リリー様は現在八歳。その可憐さ、美しさ、可愛らしさはとどまることを知りません。天使っぷりに磨きがかかっています。将来は、天女様になられるでしょう。私、結婚なんかしなくても、幸せですっ!


「ねぇアガサ! お散歩にいきましょう? 今日は天気がいいから、きっと気持ちがいいわ!」


 もちろんですともお嬢様! 庭の花たちも、お嬢様に会いたがっていることでしょう。


 あぁ……美しい花と戯れるリリー様、絵になるわぁ。想像するだけでもよだれが……いかん、いかんですよ、私!


 ドアを開けると、暖かな陽気。庭の草木の爽やかな香りが鼻腔を優しく刺激します。そんな中を、跳ねるようにして歩くリリーお嬢様。淑女の振る舞いではありませんが、可愛いからいいじゃありませんか。


 それに、リリーお嬢様はTPOをわきまえておいでです。すでに何度か、貴族の皆さまが子供をお披露目する場にも出られておりますが、まさに、淑女の鑑のような振る舞いでした。


『ダンスは好きだけど、堅苦しいのは苦手ね』


 パーティーの後、自室に戻られたリリー様が、可愛らしく舌を出す姿……私、鼻血がでるかと思いました。


 お屋敷にいらっしゃる時くらい、天真爛漫なリリー様でいてほしい。ありのままのお姿が、一番魅力的であると、思ってしまうのです。


 ……ゲッ。


 失礼しました。少し、嫌なものが見えまして。こっち来んなよ……うわぁ、来やがったよ。


「あらリリー。こんなところで何をしているの?下賤な農民の真似事かしら?」


「お姉さま……」


 アレクシアお嬢様です。その背後では、部屋付きメイドのクラリッサさんがカラスのような鋭い目で私達を睨み付けています。


 この三年で、アレクシア様は一層性悪に、失礼、性格がお悪く……じゃなくて、近寄りがたくなってしまわれました。リリーお嬢様とは、顔を合わせる度に嫌なことをおっしゃるのです。


「相変わらず土が似合うこと。いっそ、そのまま森で暮らせばいいんじゃなくて?貴女みたいな性悪は、人間としてではなくて、芋虫として生きたほうがお似合いよ」


「……」


「虫は虫らしく生きていれば、いい人が現れるかもしれないわ。そうね……オークなんか、どうかしら?」


 こんのクソアマ! 性悪はどっちじゃこのクソボケ! オークだと!? 侮辱するのも大概にしとけよこのクソッタレ!


 ……はっ。私、今、悪魔に憑りつかれておりました。大変に失礼を。


 私が悪魔に憑りつかれている間も、リリー様は悲しそうな顔をするだけで何も言い返しません。まだ八歳の子供なのに、なんて健気なのでしょう。ここは、リリー様付きのメイドとして、私が一肌脱がなければ!


「アレクシア様。お戯れもそのくらいにしておいてください。いくらなんでも、女性に対してオークの名を出すのは感心できません」


「あらそう? この子にはちょうどいい相手だと思ったのだけど?」


「オークに襲われて、辛い思いをされた女性は多数いらっしゃいます。淑女として、そういった方の気持ちにも寄り添うべきです」


「ふん。所詮は農民とか冒険者でしょ? そんな者がどうなったところで、私には関係ないわ」


 こんのっ……どうしてここまでひん曲がったんだよ! 小さい頃は可愛げがあったんだろ!? その頃に戻ってくれよ!


 引きつる笑顔をなんとか作る私。この心の声を、そのままぶつけられればどれだけ気持ちがいいことか。しかし、身分の差というものが私を阻むのです。あぁ口惜しや。


 そうこうしているうちに、満足したのかアレクシア様はどこかに去っていってしまいました。ほっと一息をつく私。そんな私に、リリー様が声を掛けてくださいます。


「ありがとう、アガサ。私のために頑張ってくれて。だけど、無理しなくてもいいわよ?」


 なにをおっしゃいますか、お嬢様! 私、お嬢様のためならばいつでも戦う所存でごさいます。無理などしておりません!


「ふふ。アガサは面白いわね。いつもありがとう」


 その笑顔とお言葉で、私のストレスは全て、吹き飛んでしまいました。やはり、リリー様は天使なのです。


「お姉さまと……仲良くは、なれないのかしらね?」


 だからこそ、天使の顔を曇らせるアレクシア様が、私は嫌いです。なんの落ち度もないリリー様への嫌がらせの数々。私、許せません。


 ですが、それでもお嬢様は、姉上であるアレクシア様を大切に思われているのです。


「いつか……いつかきっと分かり合える日が来ます」


 だから、私は言うのです。心にもない、哀しい嘘を。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ