~ 第八話 姿形は変われども……豚同士の熱い絆 ~
反省は続く……ただ、書いててすっごく楽しい(笑)
では、どうぞっ!
久しぶりだなっ! Tクリニックよっ! そして……イブさん!
『お久しぶりです。マスター』
なんとなく分かった。
目の前に、真剣に助けを求める人がいて、その人を俺が助けることが出来て、しかも俺が助けたいと思った時、スキルとやらは発動するらしい。……正解だろ? イブさんや?
『私には分かりません。スキルはマスターに依存します』
くっ……相変わらずの鉄仮面だぜ。
まぁいい。今はアルミンだ。
……あれ? オペ台……でかくなっていない?
『患者に合わせてオペ室は変化します。ゆえに今回の場合、オペ台も当然大きくなります』
なんて……便利なんだ。
ってことはあれか? 俺が一番懸念していた問題もクリア出来そうか?
「イブさんや?……麻酔は、オークにも効くのかな?」
『問題ありません。人間と同様の効果が期待されます。他の薬剤などについても同様です』
よかったよ! 最悪、麻酔無しの包茎手術っていう、究極にち○こが「ヒュン」ってすることをしなきゃいけないかと思ってたんだ。
……えっ? 無茶だって?
大丈夫だろ? 『どうしても剥きたい』って言ってたし。きっとナディアのパンチに比べりゃマシだ。
なんて言ってるうちに、アルミンが目を覚ます。メアリーちゃんの時と一緒で、ここがどこか分からず困惑しているようだ。さて……一つ目の関門、だな。
「よう、アルミン! お目覚めはどうだ?」
『ぶぎゃ!? ブゴプギャ!?』 (人間!? ここはどこだ!?)
立ち上がり、攻撃体勢に入るアルミン。
穏やかじゃないなぁ……ってか、やっぱ人間から見るとデカイな! オーク!やばい……漏らしそう。
『緊急事態につき制圧します。患者様、失礼します』
親友にビビりまくる俺を尻目に、イブさんが動く……強っ!?
目に見えない速さのパンチが何発か腹に突き刺さり、気付けばアルミンはオペ台の上で拘束されていた。……なんで壊れないんだよ、そのオペ台。
『ぶぎゃっ! ぷぎゃ! ブギャァ!』 (離せっ! やめろ! くそぉ!)
なんとかして拘束を外そうとするアルミン。しかし、イブさんが涼しい顔のまま押さえつけている。
「アルミン落ち着け!俺だ、アルトだ」
一瞬静かになり、こちらを見たアルミン。三秒間、停止。そして再起動。
『うがぁっ! ぶぎゃ、ぶぎょぶご!』 (ふざけんなっ! お前、人間じゃないかっ!)
「話せば長くなるから話さないけど、とにかく俺はアルトなんだ。この姿じゃないと、お前のち○こ……じゃなくてペニスの皮を剥いてやれないんだよ!」
その言葉に、今度こそアルミンの動きが止まる。
人間の身体に戻って、一層オークの表情が分かりにくくなったけど、たぶんこれは驚いている顔だ。
『ぶごご……ぶがぶきゅう?』 (ペニス……アルトなのか?)
お前が俺を判別する基準、そこかよっ!?
他にもあるだろうよ!? 声とか、イケメンな立ち居振る舞いとかさ! そもそも人間と普通に喋れてる時点でおかしいことに気づけよ!
『ぶごぶ……。ぷが、ぶぎゃぶごぶ!?』 (ほんとだ……。なんで人間と喋れるんだ!?)
アルミン……お前ってほんと、バ……素直だよな。まぁいい。それは置いておこう。
「いいかアルミン。よく聞け。ここは、俺が超能力……えっと、なんだか分からないけど、とにかくすんげぇ力で作った場所だ。それで、ここだと、お前のペニスの皮を剥いてやることが出来る……分かるか?」
『ぶ、ぶきゅう、ぶがぶぎゃぶご!?』 (アルト、こんなことも出来たんだ!?)
「そうだ。それでだな……えっと、そうだ!皮を剥くためには、人間の方がやりやすいんだ。だから今、俺は人間の姿になっている」
『……』
かなり苦しいか。だけど、ここは押し切るしかない。
「とにかく、俺はお前を助けてやりたい。ナディアのために、お前が一皮剥けたいと言うなら、それを叶えてやりたい。俺に、任せてくれないか?」
黙り込み、俺の目を見つめるアルミン。ここは、目を反らしちゃいけない。
アルミンよ、お前なら分かってくれるはずだ。俺が本当にアルトで、お前を心から助けたいと思っていることを。なぜならば……お前は一番最初に俺の友達になってくれた、親友だからな!
『ぶぎょ。……ぶがぶご、ぶきゅう』 (分かったよ。……よろしく頼む、アルト)
……マジかよ? 普通は信じねぇぞ? 何がお前を信じさせたんだよ。
『ぶぎょぶが、ぷぎゅぶぎゃぶご。ふがぶご』 (姿が変わってても、その目はアルトの目だ。僕には分かる)
参った。まだオペも始まってねぇのに、もう汗が出ちまったよ。イブさんや、なんか拭くものをください。
『どうぞ、マスター。涙を拭いてください』
無慈悲! 俺のかっこつけた時間、返して!?
※
その後、アルミンにはしっかりとオペの説明をした。
アルミンのような真性包茎の場合、大きく分けて取れる方法は二つ。すなわち、仮性包茎の状態にまで回復してやるか、一気にズル剥けにするか、だ。
ここで、ドクター・アルトのワンポイントレッスンだ。
そもそも、仮性包茎ってのは病気じゃないんだ。皮が少し余っている、というただの身体の特徴に過ぎない。だから、常に清潔を心掛けさえすれば、性病になる可能性も抑えられるし、手術をする必要もない。これは人間もオークも一緒だ。
一方で、真性包茎は少しやっかいだ。
真性の場合、清潔を保つのが難しい。なんたって、剥けないんだから。また皮と棒が癒着してた日にゃ、とんでもないレベルで雑菌が溜まる。この場合、手術でなんとかしてやらないと、性病になるリスクが非常に高まってしまう。
ご理解いただけたかな? 『真性包茎を仮性包茎にする』という、一見、損した気分になるような手術が存在する理由を。
ちなみに、真性からいきなりズル剥けにした場合、リスクとして挙げられるのは身体への負担だ。それは手術時にかかる負担だけではない。
手術後、急に亀頭が露出するのですごく痛いのだ。パンツを履くことすら苦労することになる。まぁ、オークは常にノーパンなんだけどな。
さて、細かく説明したうえで、アルミンが選択したのはズル剥けだった。
『ぶがぷぶ、ぶごぶが、ぶぎゃ』 (ナディアに恥じない、大人の男になりたい)
いい心意気だぜアルミン。『ズル剥け=大人』ってわけじゃないけど、その心意気に乾杯だ。後は俺に任せておけ。
………
……
…
「なぁ、イブさん?」
全身麻酔が導入され、アルミンが深い眠りについた後、俺は静かにイブさんに問う。
「メアリーちゃんの時、言ってたよな? オペが失敗すれば、顔が崩壊するって?」
『はい』
「仮に俺がこのオペを失敗した場合、アルミンはどうなる?」
真剣な声。イブさんは一度目を瞑り、その答えを告げる。
『ち○こが腐り落ちます』
アルミンのち○この前に、俺が崩れ落ちた。いや、アルミンのち○こは腐り落ちる予定ではないんだけども。
「イブさん!? 女の子が“ち○こ”なんて言葉使っちゃダメでしょ!?」
『私の性能はマスターに依存します。マスターが日頃、男性の生殖器を“ち○こ”と呼ぶ以上、私も……』
「ようし分かった! お兄さんとの約束だ!これからは、男性の生殖器の事は“ペニス”と呼ぶ、約束だ!」
だからなぜ、このタイミングでドヤ顔なんだよ、イブさん。くそ……敗北感。
「さて……冗談はこのくらいにしましょうかね」
失敗していい手術なんて、この世に存在しない。
それでも、この手術だけは絶対に失敗出来ない。
もうすぐ結婚して、幸せな未来が待っているアルミン。こいつから、未来の家族を奪うような真似は出来ない。なんてったって、姿が変わった俺を信じてくれた親友だ。あと……ナディアが怖い。
『はい。とっととち○こを治しましょう』
にっこりと笑うイブさん。……絶対ワザとだよね?