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ビューティー・オーク  ~ オークになった美容外科医、世界を変える ~  作者: 香坂 蓮
漢であるということ……そこに、人とかブタとかは関係ない。
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~ 第六話  死闘! 命を懸けたプロポーズ ~

頑張れっ!アルミンっ!


では、どうぞ!

 あれから、僕は何度もナディアに想いを伝え続けた。何度も殴られたけど、きっとこれはナディアを奥さんにするための試練なんだ。それに、少しずつだけど、ナディアのパンチに愛情を感じるようになってきたんだ。


 そんなある日、集落にとって悪い知らせが入ってきたんだ。


 “赤い熊”。ほんとの名前は……思い出せない。

 

 僕も、お母さんから聞いたことがあった。

 

 普通の熊よりも大きくて、速くて、強い。一匹で、オークを何人も殺しちゃうような化け物で、放っとくと僕らを狩りに集落を襲ってくるらしい。


 知らせを受けてすぐに、赤い熊を狩りに行くメンバーが集められたんだ。

 

 僕は最初、集落を守るメンバーに入れられそうになったんだけど、無理矢理狩りのメンバーに入れてもらった。だって、狩りに行く中にナディアもいたんだ。


『ぶごふご……ぶぎゃ、ぷぶふご』 (なにがあっても……ナディアだけは守れよ)


 僕に耳打ちするアルト。分かってる。僕は弱いけど、絶対にナディアだけは守るさ。


………

……


 僕は今、ナディアの指示に従って、仲間のオークと共に円を作っている。赤い熊がどこから来ても対応出来るようにするためだ。不意を突かれれば命はない。あいつが速くて強いのは、よく分かった。


 もう三人も殺されている。


 なにより、さっき目の前で殺された、狩りのメンバーの一番後ろにいたオーク。僕よりも年下だ。自分も死ぬかもしれないんだという気持ちが急に湧き上がってきて吐きそうになる。


 みんなが武器を構えて、赤い熊の攻撃に備えている。僕は……正直、足が震えていた。出来ることならば、自分のところには来てほしくない。


 その願いが通じたのか、熊が狙いをつけたのは、他のオークだった。襲われたオークは、なんとかこん棒で牙を防いだけど、体当たりで吹き飛ばされてしまった。赤い熊が、僕達が作った輪の中心で吠える。僕達は一気に混乱してしまった。


 あっ! アルトが熊の頭をぶん殴った……嘘? 全然効いてない!?


 あ、アルトー!?


 よかった……吹っ飛ばされただけで、ケガはなさそうだ。


 アルトを頭突きで吹き飛ばした熊。その攻撃をした時に出来た隙をついて襲い掛かったのは……ナディアだ!


 僕は思わず拳を握りしめる。出来ることなら止めてほしい。ナディアがケガでもしたら……。


 だけど、ナディアは僕なんかよりもよっぽど強い。その戦いを邪魔することは出来ない。


 ナディアの身体は大きいけど、赤い熊はさらに大きい。クソっ……苦戦してる。どこかのタイミングで助太刀しないと、このままじゃやられる!


 そして、その時は突然にやってきたんだ。

 

 ナディアが熊に押し負けてバランスを崩し、熊の爪がきらめいた瞬間、僕の身体は自然に動いていた。


『ぶぎゃぁぁあぁぁ!』 (おらぁぁぁっ!)


 捨て身の体当たり。吹き飛ばすつもりで行ったのに、小柄な僕に出来たのは熊をよろめかすことだけだった。だけど、絶対に諦めない!


 赤い熊にしがみつく僕。なんとか首元を抑えこんでいるから、牙でガブリとやられることは無いけれど、さっきから肩とか背中に爪が喰い込んで、めちゃくちゃ痛い。だけど……。


『ぶご、ぶがが、ぶぎゃぶぶ!』 (ナディアのパンチに比べたら、痛くない!)


 毎日殴られてきたんだ、何度も失神してきたんだ。あれに比べれば……ただ痛いだけだ!


『ぶごぶごふが! ぶぎゃ!』 (そのまま踏ん張りな! アルミン)


 ナディアのその声が、混乱の中でも僕の耳に届く。彼女が踏ん張れと言うなら、僕はいつまででも踏ん張ってみせる。

 

 ……痛いっ! 痛い痛い!


 ナディア!? 僕ごと殴ってないよね!? すっごく痛いんだけど?


『ぶぎゃ! ぶがぶが!』 (我慢しな!アルミン!)


『ぶぶっ!』 (はいっ!)


 死んでも我慢します。だけど、死んでも結婚したいので、僕は死にませんっ!


 そして、ついに赤い熊の身体から力が抜ける。僕を引っかいていた爪が皮膚から外れ、地面へと落ちた。やった……勝った!


『ぶごぶが?』 (やったかい?)


 ナディアの声だ。その声に僕は安心して意識を失いそうになる。


『ぷぎょーっ!』 (チェストー!)


 なんだっ!? アルト?


 ってビックリしている間に、アルトが熊をぶん殴っていた。まだ……死んでなかったんだ。危なかった。最後の最後で殺されるところだった。やっぱりアルトは頼りになる。


『ぶご? ぶががっ?』 (アルミン? 大丈夫かい?)


 心配そうな顔をして近づいてくるナディア。分かってるよ、アルト。ここがかっこをつける場面だってことくらい。


『ぶごお、ぶがぶぎゃ』 (大丈夫、何の問題もない)


『ぶほ……ぶぎゃぷぎょ』 (よく……頑張ってくれたね)


 にやりと笑う僕に、ナディアが優しい声を掛けてくれる。その後ろでは、アウトが拳を握りしめて、『いけっ!いけっ!』と声を出さずに叫んでいた。


 そうか! 今こそが、まさに勝機!


『ぷぶ……ぶがぶぎゃ、ふご』 (ナディア……これからも、僕は君の助けになりたい)


『……』


『ぶぼ、ぷごふが』 (僕と、夫婦になってくれないか?)


『ぷぶ』 (はい)


 やった……勝ったっ! ついにナディアに、気持ちが伝わった!


 勝利の余韻に浸る僕を、ナディアが強く強く抱きしめる。なんて幸せな……あれ?


『ぷぎゃぁぁっぁぁぁぁ!』 (イタイ!イタイ!イタイ!イタイっ!)


 背中が燃える! 助けてっ、アルト! ちょっと! なんでそんな生暖かい目でこっち見てるのさっ!? あーっっ!


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