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『平均寿命を遥かに超えて生きる者はほんの一握りの者だけだ。それら超越者を除けば彼の種族の平均寿命は100歳前後にとどまると言われている』


 ……ってことは、一部のご長寿さんが平均寿命を押し上げているってこと?

 その平均値の分母がどれくらいか分かんないけど、20歳分も底上げしてるのってフツーに考えてちょっとすごい話じゃないかな。

 長寿の人数がそれなりにいるのか、それとも一人当たりの突き抜けっぷりが半端じゃないのかどっちだろ?

 ノア君の年齢考えると、突き抜け半端じゃない説が有力な気がするけど……。


『100年余りで人生を終える者と、マスター・ノアのように長き時を生きる者との違いは何か、分かるか?』


 え?え?なに?

 そんなこといきなり聞かれても分かんない。科学とか苦手なのに困る。

 なんか、地球の人間だと確か、遺伝子のナニがソレしてデロリアンだとかそんな名前のヤツの端っこが擦り減るせいで寿命が決まってる……とか聞いた気はするんだけど……なんか、そう言う話?

 それとも、最先端医療を受けれるかどうかっていう環境とか貧富の差とかそーいうの?

 環境って言えば、日本だって過疎地の田舎だと近くに総合病院なんて無いこともあったから、宇宙規模の過疎地に住んでると簡単に病院には行けなかったりするのかな???

 あー……もしかして郷土病とか風土病とかそう言うのがある可能性もあるけど、文明が進みまくってるトコなんだからその辺はクリアされてるかもしれないし、だったら人種の違い……って、人種はノア君と同じなのに寿命が違うって言ってたから違うか。


 だったらえーと……えーと……えーと……。


「き、気合い……とかっ」


 ない頭を絞ったところで結局出てきたのは、苦し紛れのそんな回答。

 ツルンと光るジルを見上げる私と、ツルンと光って私を(恐らく)見下ろしているジルとの間に10秒間くらい沈黙が流れた。


 変な答えを返されたからって沈黙するのはやめようよジル。……んな訳あるかーってツッコミが入った方が楽なことだってあるんだよ。


 ほら、例えば学校の廊下で自分の脚に引っかかって転んだ時とかさ、よろけてバランス取ろうとして頑張った挙句、変な格好で際どいトコまでスカート捲れてベチャっと転んだのに、笑い声とか馬鹿にした揶揄いとか貰えないと、ちょっとキツイのと同じっていうかさー……。

 転んだ痛みよりも心配されたり同情される心の痛みが辛いことだってあるんだよ。

 笑ってもらえたり馬鹿にして貰えれば、プンスカ怒って立ち上がったり、テヘへと照れて頭を掻きながら立ち去れたりもするでしょ?

 近くにいた女子に大丈夫?って声かけられたり、ヨロヨロ立ち上がった時に周りにいた男子が気の毒そうに視線を逸らしたりされるのは、結構辛いよ?

 あの時さ、ギリギリでパンツは見えていなつもりだったけど、もしかしたら見えちゃってたかもしれない疑惑もあるんだよね。だからと言って見えてたかどうかをその場で私を心配してくれた優しい女の子聞くわけにもいかなかったし、目を逸らしてる男子に問いただすことも出来なくてさ……。あの微妙な空気が漂う中、ぶつけた膝の痛さに耐えながら歩き去るのがどんなに恥ずかしくて辛かったか……。

 ここでツッコミも入れず変な間を作っちゃってるようなジルに、あの時の私の気持ちなんか分かんないでしょうね。

 あの時はノア君に見られていなかったことだけが唯一の救いなんだから。


 沈黙に耐えかねて過去の想い出に思考が逸れまくった数秒間の後、ジルが言う。


『───おおよそ、間違ってはいない』


 と、そう。


「え……!?」


 え゛~~~……っ!?


「なにそれ? 愛情が足りないと淋しくて死んじゃうウサギ的に、気合いが足りないと死んじゃうってこと!?」

『待て、なんだその例えになっていない頭の悪い例えは!? だいたいペットのウサギが死ぬのは寂しいからではなく、人間と違ってさして長くない時間の断食にも耐えらない生物なのに食事を与えられず放置された結果だろうが。それに、おおよそ間違ってはいないとは言ったが、完全に合っているとは言っておらぬぞ。……まあ……愛情が足りずに死ぬこともあるのだが』


 え……っあるの!?


『彼らは地球の人類よりも精神と肉体の結びつきが密接なのだ』


 と、ジルは言った。


『老いを知らず長い時を生きる者は、飢餓にも似た強い希求を抱いている場合が多い。対象は技術や芸術、知識欲や場合によっては宗教や俗な意味でのフェティシズムであることもあるが……うむ……なんだ、あまりくどくどと複雑な説明をしたところでどうせお前は理解出来ぬだろうな……』


 ジルのナチュラルディスり発言はますます絶好調。なんかもういちいちムカつくのも疲れて来たから聞き流す方向でいいかもしれない。


『とりあえずザックリ言うならば、非常に長く生きる者達は何らかの状態や事象、物事に強いこだわりと興味を持つことが多い。……身も蓋も無い言い方をすれば、やりたい事と気になる事が多すぎて忙しく、歳を取る暇がない者達であるということだ』

「ぅわあ……すごくザックリしてるけど、歳を取る暇がないからって本当に老化しないで何百年何千年生きるのって、なんか……単純にすごいことだと思うよ……」


 確かにそれは気合いが入っているとしか言いようがないし。


『すべてとは言わんが、長く生きる者には非常に優れた芸術家や技術者、表現者、研究者や哲学者などとして著名な者が相当数ある』

「ああ……ノア君も、そういう……」

『うむ。何となくでもそれで長命の者の傾向が分かるだろう』

「そう……だね。うん」


 あれだよね、ある有名な学者さんとかは研究室に籠りっぱなしで戦争してるのに気づかなかったって有名なエピソードがあったよね。

 まあ、その"戦争"って言うのもさすがに第二次世界大戦じゃなく日露戦争だったらしいけど。

 なんかそういう感じの人ってことでしょ。


『そう言った類の者達が命を失う……病気や事故以外、寿命と言う形で命を終えるのはどんな時だとお前は思う?』

「え? いや……だから、急に質問されても困るってさっきも。……えーと、気合いが足りないでなんとなく正解って言ったよね?」


 それって気合い……気持ちの張りが無くなっちゃうってこと、かな?

 何かに打ち込んでた人がダレちゃう感じ。もういいやーってなっちゃうのは、私だったらどんな時だろう。


「……満足、しちゃった時、とか?」

『そうだな』

「あ、後、興味が失せてどうでも良くなった時も」

『うむ、それから?』

「で、これは駄目だって現実突きつけられて、絶望した時……とか、諦めた……時、も……」


 言っててなんか、今の状況が頭をよぎってゾワっと寒くなった。

 何がって……だって、私が地球で死んでから今まで800年以上の時が経ってるんだもん。


 オギャーって生まれた赤ちゃんが、歩き出して言葉覚えて学校入って卒業進学就職なんかしつつ、友達作ったり恋愛したり裏切ったり裏切られたり幸せとか人生の苦味を噛みしめたりを合間に挟みながら、その内結婚して子供生まれて育児と仕事に追われる中で親を看取ってその内自分も衰えていって……過去を振り返ったり日々を楽しんだりしながら人生終えるのに80年かかったとして、それを10セット分の時間。


 その間まさかノア君がずっと私の記憶の回復ばっかりにかかりきりになってたなんて思わないけど、私ってば治療用水槽(キュアポッド)の溶液につかり過ぎてふやけちゃって、もうこれ以上漬け置きするのは無理で、記憶戻す作業が時間切れな感じになっちゃってって……結構絶望的状況だったわけじゃない?

 なんていうか、半ば時間切れみたいな感じで私をゴールディロックス階層世界に送り出して、ジルが私のこと監視って言うか観察してたみたいだけど、やっぱり記憶は戻ってなくて。

 ……で、そうこうするうちに天空城へご招待。

 あれって、どう考えても私のことを『金色の王様』とくっつけようとしてたよね?

 ……中身はこの汁玉(ジル)だけど。


 色違いのノア君そっくりさんな金色の王様と私が幸せに暮らした記録を、ジルはノア君に見せたいと言った。

 なんかそれってさ、自分達は結ばれなかったけど娘と息子を結婚させようねって言う、ある意味王道テンプレートな設定の変形バージョンっぽくない?

 たいていの場合その設定は主人公カップル当人ではなく、ヒーローかヒロインが生まれた直後に実は決められてた婚約者として現れて、最終的に


「貴方達は自分が悲恋に悲しんだのに、私達にも同じ思いを味合わせたいのですか?」


  的な正論(?)によって覆されちゃったりするんだけどね。


 まあ、テンプレ筋書きについては今はおいといて、自分には適わなかった夢を子供に……ってのは恋愛に限らずよくある話と思う。

 スポ根物みたいに、子供とか弟子が自分には届かなかった栄冠をつかむまで命を燃やして頑張る系ならまだいいけど、なんか……これは違う気がする。

 なんかもっと……こう、まるで人生の最後に見る慰めに満ちた"夢"を用意してる……みたいな。


「ジル。……ノア君は、諦めた(・・・)の……?」


 死ぬ寸前の数日間に喋り散らかした愚にもつかない妄想(ゆめ)を世界丸々一つ分現実として作って貰っておいて、今さらノア君が私のことどう思ってたか……とか、馬鹿なことは言わない。言えるわけない。

 だからこそ、怖い。

 いくら長生きだからってさ、やっぱり800年とかってさすがに長い時間だと思うもの。


『半ば……な。彼の方は、あまりにもお前に気持ちを添わせ過ぎた』


 銀色の丸いヤツから容赦なく突きつけられた現実に、息が詰まる。

 鈴岡明花という人格はもう永遠に失われてしまったとそう思ったから、諦めの気持ちに蝕まれて常命の枠を超えてたノア君は、治療用水槽(キュアポッド)の溶液の中にいるのに細胞の修復が追いつかない。

 そう言うこと……なんだよね?


「じゃ……じゃあ、だったら早く……早く、逢わないと。ノア君に、私はちゃんと生き返ったって、大丈夫だって……そう、言わなくちゃ」


 一刻も早く、私はちゃんと記憶取り戻せたし大丈夫なんだって伝えなきゃ。そうしなきゃ、ノア君は今この瞬間も……。

 焦る私に、ジルはさらに容赦ない現実を突きつける。


『次に目覚めた時にはもういないかもしれぬのに、大丈夫だと?』

「あ……」


 そうだ……そうだよ、私。


現在(いま)はいい。お前が記憶を取り戻したと知ったならマスター・ノアも喜ばれるだろう。だが、彼の方が治療用水槽の溶液の中から解放された時、すでにお前がいなかったならどうなる? お前などと言う存在を知らず、心のままに知を学び極める事だけに喜びを感じていた頃のマスター・ノアとは、もう違ってしまったと言うのに……』


 ノア君は私に気持ちを添わせ過ぎた……っていうさっきのジルの言葉が、改めてズシンと胸に重く響いた。

 ジルの言ってるのは、ある意味人づてに伝えられた愛の告白みたいなもので、本当ならそれは嬉しいことのはずなのに、今はこれに甘い気持ちなんてミジンコほども覚えない。


 恋とか愛ってもっと幸せな感情のはずだったのに……何だろコレ?

 地球で死んじゃう前はさ、身体は確かにとにかくしんどくて、苦しくて、辛かったけど、最期の最後の瞬間まで大好きな人と一緒にいれて、私は本当に幸せだったんだよ。

 幸せな気持ちでいられたんだよ。


 なのに、ホントに何なの、コレ?

 ノア君の側からしたら、私の存在って最悪じゃない?

 真夏のドライアイス並にすぐ消えちゃう短命生物の分際で、緑色のジャケット着た大泥棒みたいに図々しくも心を盗んでくとかさ、映画とか小説なら


「切ないねー」


 とか言って身悶えして喜んじゃうけど、現実としてソレやられたらどうよ?

 しかもわざとじゃなかったけど、そんなのに目の前で自分を庇って死んじゃったりなんてされたら、美しくも切ない想い出なんかじゃなく、トラウマになるよ。完全にトラウマ。


 でもって、そんな目に遭ってなまじその後でなんとか(・・・・)出来るだけの能力とか資金力持ってたら、なんとかしようと頑張って蘇らせようとするよね。

 でも、上手く行かない。

 それが……800年間。


 ボロボロになって限界が来て諦めかけて……そんな時に私が出てって


「記憶取り戻したし、大丈夫だよー」


 って言って?

 で、次に目覚めたらもういないとか……ナニソレ、本当に最悪じゃないの。

 嫌だよ、何なのソレ?

 私はノア君を不幸にしたいわけじゃない。


「……私、は……どうすれば……」


 悲劇とか悲恋とか、そんなの嫌いなんだよ。


「私に、何が出来る……!?」


 じょろじょろと涙を流して悲劇に酔っ払ってるくらいなら、汗まみれ土まみれで這ってでも前に進むスポ根物の方がよっぽどマシでしょ?

 ……スポーツ、やってないけど。

 いや、私、冒険者だし。

 でも現世なら、筋力も持久力も心肺能力もとびきりモリモリに盛られてこの身体は創られているらしいからそれなりに……───って、そうだ!


「ジ、ジルっ。私、いまノア君と同じ人種だって言ったよね。じゃあ気合いとか根性入れれば、実は120年くらいイケちゃうんじゃないの!?」


 そのためだったら私、カバじゃないけど血の汗くらい余裕で流すし、涙だって拭かずに頑張っちゃえるよ。


『だから……それは"分からん"と言っているだろう』

「あ、なんかさっきそんなこと言ってた! なんで!?」


 細胞とか遺伝子的に同じ人種なら、あとは気合いなんじゃないの!?


『それは、お前の精神が長命種のおらぬ地球人のモノだからだ』


 と、そう言われて初めて気づく。

 ……だよ。そう言えば、私、ふつーに生きてけばフツーに老けて行って数十年もすれば人間って寿命で死ぬと思ってる……思っちゃってる。

 もちろん気合いとか根性据えて頑張るつもりではあるけど、肉体が精神に引っ張られる形での長命種にその精神性ってマズイのかも。

 だったらジルの懸念も当然だ。


「私は、どうすれば、いい……?」


 ぎゅっと両の手を握りしめ、私は銀色のツルンとした表面に空と海と草原の緑、それからやたらと白い髪に白い肌、左右違う色の目に思いつめた表情(いろ)を浮かべて唾を飲み込む小娘の姿を映したジルを睨みつけながらそう訊ねた。

 問いに返されるだろう答えは、なんとなく見当がついてる。


『お前は子供を産むが良い。種は提供する』


 案の定……って言うか、うん。

 天空城の『虚ろ(?)の魔導書』のあった部屋でもコイツ、そんなこと言ってたよね。

 わかるよ?

 私本人がいなくても、せめて忘れ形見の子供でもいればもしかして心の支えになるかもって流れ。

 わかるけどね?


「……種?」


 ホントのところ、こんな下品な話は聞きたくない。ぴっかぴかの処女(おとめ)が口に出すにははばかられる話題だと思うけど、結構大事なことだから、しかたない。

 うう……。


『もちろん、マスター・ノアと同一遺伝子の素体から採取した子種だ』


 同一遺伝子の素体って……あんた、そんな気はしてたけど、もしかして……。

 球体上のジルの表面に映った自分の顔、こめかみの辺りにビキビキと青筋が立つのが見えた。


「まさかとは思うけどそれって、第99階層の昇降機の中に転がして放置して来た───」


 アレのことなんじゃ……。


『そうだ。"金色の王様"こと、天空城の王が、それだ』

「!! ちょっ……あんたが生体人形とかそういう言い方するから、そーいうモノだと思って私、あの体に猫パンチ入れちゃったじゃないのよ!」


 ってか、つま先で突いたり、頭突き入れたり、けっこうやらかしちゃってるよ!


『あの程度、問題なかろう』


 いや、問題だから。

 と言うか、ジルってばあの身体、ぞんざいに扱ってなかった?

 鼻とか口から出て来て脱皮するたびに、床にゴンっていってたよね!?

 中身がノア君本人じゃないからいいって言えばいいんだけど、同じ遺伝子で造られてるって聞いたら気持ちの問題的に、ほら。気持ち的に!


『マスター・ノアがもう(・・)自分の身体の予備は要らぬと言うのだ。予備はもう、必要ない……と。彼の方の指示である以上、法への抵触が無い限り私はそれに従うしかない』


 苦々し気にジルが呟く。


『その上でマスター・ノアが未来にも生きる希望を……彼の方の血を引きお前が生んだ子供をと思えば、私が操るための生体人形作成許可を得て、幸いにも全面的に作成を任されていた天空城の王としてあの身体をな……』


 身体の扱いは乱暴だったけど、聞けばジルはジルの出来うる限りノア君の為を思って行動しているって分かった。

 口調はナンだけど、忠臣だよねジル。


「そっか……じゃあ、あの王様がノア君の遺伝子使った予備の身体だって、ノア君は知らないんだ……」

『それどころか、マスター・ノアは金色の王の顔かたちも知らぬはずだ。とにかく徹底的に蔵書やPC内の資料を解析してお前好みで尚且つ最高のスペックのモノを創れとだけ言われたが、さすがにお前と娶わせる可能性ある相手の姿など見たくなかったのだろう』


 もしかしてそれは、嫉妬心ってやつだろうか。

 あ……どうしよう。なんかちょっと、嬉しいかも。

 つい緩んでしまった口許を手で隠す私に、ジルが嫌そうな声を出した。


『なんだそのだらしない顔は』

「……だって、仕方ないでしょ」


 千歳越えのご長寿さんでお金持ちで宇宙レベルで超絶頭良くても、ノア君はノア君だし、なんか可愛いって思ったんだから。


『全く何故にこんな者に彼の方は……いや、身を挺してマスター・ノアを護った事は評価するし、頭の出来はアレだが死にかけていても弱音を吐かずにいた根性があるのは認めるが……』


 ああ、そっか。

 鋼材に潰されて飛び散った私の脳漿を拾い集めて運んでくれたんだし、ノア君に安全な場所を報告してたのもジルだったんだから、私が死ぬ前のことはずっと見てたんだよね。


「大好きなんだもん……」


 ノア君のこと。

 理屈もへったくれも無く、ノア君が物体xでもしおしおのお爺ちゃんでも全然かまわないくらい、なんか自分でもわけわかんないけどひたすら大好き。

 ……だから。


「根性だって据えるし、覚悟だってする」


 本当に好きな人を、一人にしないように。

 未来に孤独にさせないように、出来ることはやる。


「ジル、私、子供……つくるよ」


 もしも必要なら、ダース単位で産む。

 ノア君が淋しいとか孤独とか考えてられないくらい、賑やかにしてやる。


『そうか……』


 あからさまにホっとした雰囲気のジルに、私は一応クギをさした。

 いや、何となく必要な気がしたから。


「あ、産むなら産むのはいいけど、当然人工授精とかそーゆーのだからね……?」

『な、何故だ……!? それでは将来的に生体人形とマスター・ノアの感覚をリンクさせて、お前とのアレコレの記録を渡す事が出来ぬではないか!』


 は?


「……はぁあああぁあっ───!?」


 私とのアレコレってなんなの!?

 あんた、何考えてるの!!??

 一体なにを考えてんのよ……っ!!


 銀色い球体ボディモードのジルの動きは素早すぎて、今の私の速さでは攻撃が通らないことはわかってる。

 今は時間もあまりない事だし、もっと鍛えていつか必ずコイツに一発お見舞いしようと心の中に固く決意しながら、私はジルの導きに従ってノア君のもとへと向かったのだった。




 

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