プロローグ
ゆれに揺れた大地が割れて、崩れてた。
昼間の時間なのに空が夜みたいに暗いのは、世界中あちこちで噴火した火山の噴煙が空を覆っているせいなのか、それとも国同士で撃ち合った大陸間弾道弾の核弾頭がさく裂し、キノコ雲が成層圏まで吹き上がった影響なのか。
度重なる自然災害を引き金にして起きた戦火は、やまぬ自然の驚異ともろともに、人や動物のみならず『地球』と言う惑星自体の命を終わりへと導いて行った。
空に分厚く巻き上がる粉塵の向こう側。星の群れが長く尾を引く終末世界で
「明花、僕と一緒に行こう……最後まで」
"彼"がそう言ってくれたから、私は頷いて幼馴染が差し出した手を取った。
ずっとずっと小さな頃から大好きだった彼が行こうと言うなら……こんな終わる世界でそう言ってくれるのなら、そこが地獄でも天国でも宇宙でもどんな場所へだって最後の時まで一緒に行こうと私は思った。
黒い髪、真っ黒な瞳、キレイな顔。
いつも馬鹿でくだらない私のお喋りを、嫌な顔一つしないで聞いてくれたこの幼馴染のことが本当にどうしようもなく好きだったから、世界が終わるその瞬間まで少しでも長く一緒に生きていたかったけど……。
「───ノア君、あぶない……っ」
少しでも安全な場所を探して逃げて逃げて……逃げた街のはずれで、歪んだ鉄塔から滑り落ちて来る鋼材を目にした瞬間、私は持てる力の全てを振り絞り、彼の身体を押しやっていた。
もっとずっと一緒にいたかったけど、私に突き飛ばされ驚いた表情で後へよろめくように倒れ込む彼が怪我などしませんように……。
───それが、私の最期の瞬間の記憶。