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eight rabbit

儀式が終わった。

あぁ、疲れた。

仕方ないか。部屋に、行こう。

自分の部屋じゃなくて、手前にあるチトセの部屋に入った。

「チトセ〜、疲れ...」

そうだ。居ないんだった。何してんだろ。

さっきからずっと考えてるからかな。

「澪さん。お疲れ様です」

これは、チトセじゃない。

「はい。寝ます」

顔を見たくない。

僕は、知十世と居たい。

「あっ...はい」

消えるような声が薄くなっていく。

僕は戸を閉めて、隣の僕の部屋へ入った。

疲れて、もう布団を敷く気力がなかった。

「チトセ...」

知十世の声が聴きたい。この腕に抱いて、知十世の匂いを胸いっぱいに抱きしめたい。


もう一度、僕の腕のなかで、すやすや眠るチトセの寝顔を見て、心行くまで抱きしめたい。

その可愛い寝顔にたくさんキスしたい。


気づけば僕は眠っていた。起きると、オレンジ色の光が僕を照らした。


隣にいない彼女が欲しくてたまらない。

もう半年になるのに、その想いは変わらない。

逢いたくて逢いたくて、仕方無い。


そう思うと、無性にふわふわしたものを抱きしめたくなる。

その為に、僕たちが初めて逢った時に知十世がくれたウサギのぬいぐるみを抱きしめる。

普段はクローゼットに隠しているけれど、こういうときだけは、どうしても必要になる。


あぁ。チトセを抱きしめたいよ。


「澪、入るぞ」

兄、史乃(しの)の声。

「どうぞ。ってもう入ってるし」

言う前に入ってる...

「お帰りなさい。また、外国行くの?」

「いや、澪が結婚するまで監視役を任された。だから、コッチにいる」

監視役?

「てか、澪。お前って、少女趣味なのか?」

「は?」

兄は、俺の手元にあるウサギのぬいぐるみを指さす。

「あ!あっ、これは、その、あの。違う。これは、その」

笑い始める兄。

「澪、今の婚約者。泣かせてるらしいな」

その話になるよね。

「そうなのか」

その言葉に、

「は!?気づいてねぇの?」

こくりと頷く。

「澪、あんないい人なかなかいないぞ?真矢さん...って言っても澪は知十世さん一筋か」

「うん。僕には、チトセしかいない。他の人は、好きになれない」

そうか、とどこか寂しそうな顔。

「兄さん、真矢さんのことが好きなの?」

びくって跳ねて、目を逸らしながらうなづいた。

「いいんじゃない?兄さんが愛してあげなよ。どうせ、愛されたいだけだろうし」

眉間にしわを寄せて

「ん?どうゆう意味なんだ?」

「あぁ。キスされた」

「そうか。キスね。...はっ!?きす!?」

兄は、その辺の経験が極端に少ない。

というのも、ずっと江祇時の為ににと育ってきたから。

跡取りにはなれないとわかっていて、兄は尽くしてきた。

「そう。キス」

「え?どうゆうこと?」

きっと、頭のなかパニック状態だろうな。

「されたの。僕が。...真矢さんが澪に、キスした。僕は、キスされた」

「理解した。それで、なんで?」

以外にもこの辺の飲み込みは早いのが、兄のすごいトコ。

尊敬するぐらい。動じても、すぐなじむ。

「知らない。僕は勝手にキスされただけだし」

ふーんと言いながらも、傷つけちゃったかな?

「どうするの?兄さん」

「あぁ。もう行く。話をしてみるよ、真矢さんと」

そう言って、一方的に入って、出ていった。


僕は、ウサギのぬいぐるみを抱きしめた。


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