seven orange
儀式が始まった。
服は重たく、責任も重い。
僕の代わりがいない。
それだけでも、十分だ。
僕の能力は、だいたいは下記のことに使われる。
・妊娠したい女性と、その旦那さん
・成功したい政治家やアイドル、俳優など
・受験生など
・一度、刑務所に入って人生を再スタートしたい人など
などなど。
これ以外でも来ている人もいるらしい。
そのあたりの管理は母がしているので、僕は関与してない。
儀式は緊急時を除き、江祇時家の儀式の間を使う。
儀式に使われる道具についても、僕には教えられてない。
それを知っているのは、母、父、兄、祖母などの親族。
真矢さんや、チトセが知らないのは、まだわからないという、危機感から
だったらしく、チトセの一件があって、それは妥当と判断された。
儀式は一回、10人ほど。4時間~6時間になる。
けして、体にまったくの害がないってわけじゃない。
体力は使うし、苦しい。
中には、僕自身が途中で倒れることもあった。
本音は、儀式はしたくない。
懐かしい記憶。
2年くらい前
儀式が終わって着替え、重い体を歩かせて、僕らの部屋のほうへ必死に歩いた。
チトセの部屋の戸を引いて、勝手に入った。
「チトセー、終わった。だから、ご褒美頂戴!」
チトセは僕を見て何やら驚いて、立ち上がった。
「澪さん、大丈夫ですか?」自覚がないのかなって、わからなかった。
「何が~?」
力が抜けたように、その場に倒れこんだ。
「あれ?力、入らない。ごめん、チトセ」
「そりゃそうだよ。顔が疲れてるって言ってるもん。いいですよ?ご褒美あげます。何がいい?」
僕を横にしてくれたチトセは、ニコニコして膝枕をしながら僕に言った。
「もう、もらっちゃってるけど、もっとくれる?」
その言葉に驚くも、
「いいよ。こんなに頑張ったなら、もう少しくらい」
なんて、はにかみながら顔を少し赤くしていった。
オレンジ色の夕陽が、二人の頬を照らして、二人で顔を真っ赤にしてた。
「じゃあさ、キスして?」
これが、僕たちの初めてのキスだった。
「私から?」
こてんって首を傾げながら、顔を赤くして。
「うん。ご褒美でしょ?」
ちょっと起き上がって、顔を近づける。
「目、閉じて?」
目を閉じた。
きっと、かわいい赤い顔してるんだろうなって思うのに、目を瞑っていないといけないことが腹立たしい。
そっと触れた唇が、すぐに離れた。
どこか、それに怒りを感じた。
だから、ほっと息を付くチトセにもう一度唇を重ねた。
「れっ、澪さん!」
何も話さなくていい。
「喋んない」
オレンジ色の光に包まれながら、唇に新しい柔らかい感覚を貪った記憶。
何度も重ねた唇は柔らかくて、疲れも吹き飛ぶようだった。
「澪、さっ」
「澪でいいよ?澪さんなんて他人みたいだしさ?僕の未来のお嫁さん★」
照れた顔がオレンジ色に染まって、ますます可愛くて、また唇を重ねた。
「チトセ~、名前呼んで!」
「れ、澪...さん」
ん?ムカッとした。
「さんはいらない」
「澪.........さん」
小さい声で、さんって言ったな?
チトセは目を開けたままだけど、自分の唇をチトセの唇に押しあてた。
チトセの口を抉じ開け、チトセの舌を絡ませると、甘く啼き始めた。
その声をもっと聴きたくて、どんどん深くなっていった。
チトセが僕の手を握った。とても強く。
唇を離し、チトセを解放した。
「澪さん!私、まだ15歳じゃないです!」
また、さん付け...
「ねぇ、もっとされたいの?」
「へぇっ?」
全く覚えがないような声をあげた。
「澪。さんって言った、でしょ?チトセ?僕を呼び捨てにできないくらい嫌い?」
すると、首をぶんぶん横に振って
「違うっ!違います」
超焦っている。か、可愛い。
「じゃあ、呼び捨てにしなさい」
「わかりました。澪さんっゞ」
また、この子はもう~!
「チトセ~?」
気づいたチトセは、ハッとして
「あぁっ。れっ、澪」
やっと言った。
なんだか満足して、チトセの頭をぽんぽんした。
オレンジ色に染まった僕らはもう一度唇をかさねた。
初キスで大変なことになっちゃってすいません。