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three ring

もし、未来が変わるならあなたは何を望みますか?

僕は、知十世ともう一度婚約すること。


病室を出た僕は、そんなことを考えながら、来た道を辿る。

この能力は一人では使えないから、狙われることは少ない。

ずっと前の時代から、この力は狙われる確率の高い能力だった。

次男、三男、四男とたくさん産んでいた時代はそのリスクが分散されていた。

でも、今は僕一人。


分家と言われるその家系にも能力は受け継がれるが、ほとんどの力は次男が持って産まれ、次男から次男へと受け継がれていく。

だから今、能力が一番強いのが、本家に産まれた僕なんだ。


本家の決まりとして、婚約を結ぶ者とは、互いに年が二桁になったら一緒に住む、というものがあって、僕は16。知十世は15。約5年の間共に暮らしてきた。

新しい婚約者は、半年前、知十世と婚約解消になった1ヶ月後に決まった。

待ってました、と言わんばかりの早さに驚くのは僕だけだった。

 その人は、楢木(ならき) 真矢(まや)。分家と分家の間に産まれた人で、最初から候補には上がっていた。

因みに、候補は70人近くいたらしく、最終段階で、4人。

知十世が選ばれた。

 どのくらいの力かはわからないが、分家は100くらいあるとか。

僕の知らない世界が多すぎる...


江祇時の屋敷についた。僕が産まれ、育ってきた家。

敷地は広く、だいたい公立の高校がグラウンド付きで4つくらい建てれるほど。

そこには、日本家屋が広く建ち、12階建てビルが一つ。そして、広い中庭。

 門をくぐり、大きな桜を見つめる。


強い風が気を揺らした。

「澪さ~ん」

誰かに呼ばれた。

それは、現婚約者の真矢(まや)さんだった。

僕より2歳年上の人。

「楢木さん。なんですか?」

冷たい男と言われるかもしれない。

でも、知十世ではない。

「澪さん!お義母さんが呼んでますよ~」

はぁ。仕方ない。

「今行きます」

小走りに広い庭を走る。

僕が住んでいるのは日本家屋の方で、庭がよく見渡せる部屋。庭から直接入れるようになっている。

でも、急ぎではないのでちゃんと玄関から入る。

応接間に入って行った。

「失礼します。母さん、なんですか?」

母は苦い顔をして

「澪、座りなさい」

こう言った。

言われるまま、真矢さんの隣に座った。

座ると、すぐにつき出される言葉。

「澪、あなたの婚約者はここにいる真矢さんです。なぜ、今も“元”婚約者の知十世さんに会っているの?」

あぁ、この話か。

「僕は、知十世を好きでいてはいけないの?母さん。」

僕は、知十世を妻にしてはいけないの?

僕が未来を決めることは、許されないの?

「澪!何を言っているの!」

「れ、い...さん?」

あぁ。面倒だ。

「僕は、チトセと笑っていたい!そう思うことも叶わないの!?」

僕は机をたたき、立ち上がっていた。

なんとなく目に力が入ってると思う。

だって、目が痛い。


知十世に逢いたい。


「澪、座りなさい。それは、まだ真矢さんをあまりよく知らないからよ。明後日、空いているでしょう。どこかへ出かけてきなさい。」

えっ?

明後日は、チトセと...

「母さん、先約があります」

「それは、知十世さんでしょう?」

わかってるなら、僕を...

もう、やめてよ...


明後日


やっぱり、行く。

「よしっ!ここから行くか」

あんまり使わないけど、縁側から。

小さな声で

「行ってきます」

って、言った。

病院まで、少し早く行こうって速足だった。


久々にノックして、

「失礼しまーす!チトセ!おはよ!」

見えたチトセは、寝ていた。

「あ、寝てるか...寝顔見てよっかな」

可愛いなぁ。

「悪趣味」

え?

「起きてる」

むくっと起き上がるチトセに抱きついた。

「澪?」

「チトセ!今日は、渡したいのがあるんだ!」

ちょっと嬉しそうに笑って、

「いたずら?」

なんて言う。知ってるよ。

少し素直じゃないのも、照れ隠しが苦手なことも。

「ねぇ、目。閉じて?」

素直に目を瞑った。

ぽっけから、小さな箱を取り出す。

「いいよ。目を開けて」

目を開けるチトセは、開けた瞬間

「澪!これっ」

目は潤んでる。


僕は、箱を開けた。

「ずっと、ここにあったもの(指輪)がなくて、寂しかったでしょ?時間かかってごめん。大好きだよ、チトセ」

その指輪は、羽がモチーフの指輪。

僕の私財は、今サラリーマン並みにある。

だから、ちょっと奮発した。


羽と羽の間に、一粒の星。

僕の輝く光。


君の瞳にも一粒の涙。

「気に入ってくれた?」

答えなんて聞かなくても、知十世の表情でわかるけど、聴きたいんだ。

「澪、ありが、とう」

泣いて喜ぶのも、可愛すぎて、僕は幸せを感じる。

「澪、大好き」

僕は、この幸せをあと何年見られるんだろう。

 あと、何ヵ月?何日?何時間?

「僕も。チトセ、だーい好き」

どんどん短くなっていくんでしょ?チトセの命は。



目映いチトセの右手の光り。

僕が愛する人。

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