thirty miracle
知十世の余命が短くなった。
それを病室に入る前に、聞いてしまった。
詳しいことはわからない。
でも、わかりたくないと思う自分もいる。
あと、3ヶ月もないということ。
90日、以内。
隣を歩く知十世が、足を止めた。
そして、手を繋いだ。
僕の顔を覗きこんで、もう繋いでいるのに、
「いい?」
と聞いてきた。
僕は、知十世らしい、その行動に笑った。
もちろん、答えは
「ダメなわけないじゃん、いいよ」
繋いだ手を恋人繋ぎにして、照れ笑いするチトセの手を少しぎゅっと握ってみた。
すると、その手で握り返してきた。
それから、照れ笑いをしながら、短い帰り道を帰って行った。
家に着いて、ベッドにダイブするチトセ。それにつられるように、僕もダイブ!だけど、チトセを抱きしめる。
チトセは何か、全てを知っているかのように、優しく笑った。
たくさんキスをして、おかしくなりそうなくらい、「大好き」を言った。
これでもか!ってくらい、言った。
言わなきゃ伝わらないから、全て言うんだ。後悔しないため、自分自身に言い聞かせるために。
朝が来て、また幸せな日々を送る。
広い世界で巡り逢えた偶然というキセキを感謝して。