twenty fiance
日が暮れてきた。
まるで僕らを追い立てるかのように、煽る風もある。
今日は、兄さんと、少し別行動。
兄さんは母と真矢さんと行動。そのままホテルへ向かう。
僕は、戸叶と共に病院へ先に行き、知十世を連れてくる。
それがあるので、スーツ姿なのだが、病院へ行く。
チトセを病衣から、ドレスへ着替えさせないといけない。途中、寄らないといけない場所もある。
普通に逢いにいくなら、真っ赤な紅い薔薇の花束を持っていきたいけど、チトセは『花より団子』だから、いいって突き返されるのが落ちだな。
「澪さん、お車の準備ができました」
戸叶は珍しく、専門店で仕立てたスーツを着ていた。
「頼むぞ」
そう言って乗り込む。
もう完全に歩けるようになったから、軽く歩ける。
病院に着くなり、やはり目立つ。やっぱり花くらい持ってきたほうがよかったかな?
ノックをして、扉を開ける。
「澪様、こんばんは」
優しく微笑むチトセをぎゅっと抱きしめたい気持ちを抑えてひざまずき、チトセの左手をとった。
「姫、お待たせ致しました。行きましょう」
そうした姿に、チトセは笑った。
まるで、懐かしいと言わんばかりに。
戸叶は車で待たせてある。
チトセは、中学の制服を着ていた。それは、最後の卒業式を思い出させた。
チトセの制服姿は、それ以来だから。
「主治医からの注意事項は受けたよね?」
「もちろん!」
はしゃいでいるような知十世。可愛い。
「可愛いなぁ」
ふわふわとした気分で笑っていると、小さな声で
「心の声が出てるよ?」
恥ずかしそうに下を向き、手を繋いだ。
「チトセ」
顔を上げる知十世に軽いキスをした。
顔がまた少し赤く染まって、この表情を見ているのが僕だけだと思うと、嬉しさからもう一度口付けをした。
可愛くて、仕方のない僕のフィアンセ。
そして、余命半年の、僕のフィアンセ。




